いやまだごく一部な感じはするんですけど、ようやく慣れてきたというか、書き方を思い出してきたというか。
以前の私よく週一のテンポで書けてたな……。
どうやってたの過去の私。
※以下本誌ネタばれですのでご注意願います。
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・事態は動く…!!
地球編になってから、彼らの戦いはずっと三つ巴であったことを失念していたことに気付かされるなど。
人間と、人間と、テラフォーマーと。
けれど人間同士の戦いを、人間同士が戦っていることを知っているのはごく一部。
そしてテラフォーマーという種にすれば、そんな同族同士の争いなど何の関係も無いのだ。
奴らはただ自分たちの利の為に動く。
人間たちがどんな感情を持って対峙していようとも、どれほどの過去を抱いていようとも、どれほどの未来を信じていようとも、何の関係もない。
・奥の手、打つッ──!!!
M.O.H兵器はマルコスが例の島(今考えてもなかなかにデリケートな話題というか際どい設定で攻めてたのではと思う)で見せたもの(#20、#21辺り)と同様の技術を用いたものだろう。
実際のナレーションの通り、本来はドイツで開発されたことになっているけれどこの辺りは「テラフォーマーズ外伝 RAIN HARD」を読むのが一番わかりやすいのではないかと。
簡単な説明というならばハンニバルがモノローグにて14文字で説明してくれているし。
元々M.O手術を受けた体である=M.O臓器という他の遺伝子を受け入れた身体であるということが前提としてあり、更にはアメリカがより汎用性の高い兵器としての改良を行ったからこそマルコスは特に大きなデメリットも無く使用できているのだろうが、ジェットの場合はそういう正規のルートを経ているとは思えない。
今蓄積されているダメージまで考えると、いやなフラグだけが積み重なっていくというか……。
・ギャラクシアン・ナーガ
名前の「ギャラクシアン(Galaxian)」は銀河を意味する「galaxy」からきてるとは思うけれど、ギャラクシアンという言葉そのものはどうも造語っぽいなと。
調べるとナムコのシューティングゲームで、「銀河系の住人である人類(つまりはプレイヤー」を意味した言葉らしい。
それに蛇であるナーガがついている。
なんとなくだけど、ジェットがこの名前を付けたわけではなさそうだなという気持ちはある。
こういう壮大な名前を自ら付けるようなタイプには個人的には思えないというか、他人が付けた名前を受け入れる事はするけれど、ジェット自身はこういうネーミングセンスではないというか。
じゃあ誰が付けたんだということになるけれど、まさか七星……?(風評被害です)
・盲目の戦士
一応対テラフォーマー用の武器ではあるというか、『衝撃波制御増幅式半自動加速装置』という名称なので武器ともまた少し違う気がする。
彼の特性であるテッポウエビの能力として使われるキャビテーションという衝撃波に対して、制御という文言は増幅にかかっていると判断すべきかなと。
制御は制限ではなく、「増幅の範囲を制御する」ためのシステムであり、更には本来の衝撃波以上の出力を加速によって生み出すような仕組みになっているのかなと。
火星編でも彼が使用していたのはソナーだったし、本人に実力があるのに、というか実力があるからこそサポート的な専用武器を選んでいるのか。
ただ専用武器の説明と、彼自身は衝撃波を武器として使っており、それを増幅させるものでありながら移動と防御に回しているというその使い方を見ている限りは後者だろう。
人間がダメージを受けるというのは何らかの形で衝撃を受けているという(だいぶ大雑把な括りで)事を考えると、衝撃を相殺することが出来るというのは確かに防御に向いている。
そして守ることを機械に任せた上で、彼自身は本来の特性を活かすために視力に頼ることなく、手にした武器も恐らくは囮として使い、代わりに全神経を研ぎ澄ませただ自分の手が敵に触れることだけを、触れるその瞬間に行きつくためだけに動く。
触れさえすれば、送り込めるのだから。
身体の中を揺らす波を。
・支えるもの
このシーンの瞬間に思わず天を仰ぎましたね……。
3本の蛇で良かったんだと。
その形は彼の人生を変えた人に通ずるものがあるのだと。
その技は彼の魂を変えた人に通ずるものがあるのだと。
劉さんの心臓は小吉の中で動いているが、魂は誰よりもジェットの中で未だ動いているのだろう。
動いて、彼の中に何かを送り込んでいる。
いつか滾らせることが必要になるその瞬間の為に、火を絶やさぬ為の何かを送り込んでいる。
ジェット自身は中国の出身ではないけれど、劉さんが抱いていた想いを誰よりも色濃く受け継いだのかもしれないと思うと。
もちろん他の班員たちもその想いに共感したからこそ国を、世界を裏切るという決意をしたことは間違いないし、地球での立場上安易に動けていないだけで同じだけのものを持っていることは間違いないとは思う。
ただ、託されたものを最初に見せたのがジェットだったというだけで。
・報酬
火星から帰還して、本来であればそれなりの報酬も得ていたはずだろうけれど、国と世界を裏切ったという事実は彼を平穏な生活に落ち着くことを許してはくれなかった。
気になるのが一応報酬は出たのか、それとも裏切ったという時点でそれも反故にされているのかということ。
そもそも報酬の出どころはU-NASAなのか、それぞれの国なのか。
U-NASAだったら彼らの裏切り行為を盾に、報酬を払わないという選択をしてもおかしくはない。
逆に国だった場合は中国側から支払われるのか、国籍のあるタイから支払われるのか。
とはいえジェットの場合正式な国籍の届けがあったのかも定かではないし(それでも火星へ行く際に与えられただろうとは思うが)、ましてや中国という他国に所属した状態での裏切り行為となれば国としては面倒を見る気は無さそうな。
それでも誰かが上手い事手を回して、それなりの報酬は得ていると信じたいのだけれど。
・指名
一所に留まり続けることをせず、最低限の荷物だけを持ち、偽名を使い逃げ続ける中で、かつての仲間が自分の名前を呼ぶということはどれだけのものをもたらしたのだろう。
過去を知っていてなお、過去を知っているからこそ友達として接してくれることはどれだけの安堵をもたらしたのだろう。
きっと彼は自分の名前に対して、最初は愛着を持っていたわけではなかった。
名前というよりは他者との区別を付けるための記号にすぎず、ただ逃げるのが早いという事象を含んでいるだけの単語。
けれど番号でもなく、命がけの任務から帰還した後には呼ばれることなく、上書きするかのように己で違う記号を、単語を使い続けている中で、「ジェット」という言葉は「彼の名前」になってったのではないだろうか。
まるで燈の様に。
125話で燈とジェットが対峙した時に「ジェットが自分の名前に対してどうか、ということについては明記されているようなことはないが、もしかしたら燈とは全く対照的に他人との区別化を容易にする記号という程度の認識かもしれない、そういう意味でも、燈という主人公へのアンチテーゼ的なポジションに化ける可能性がある」と書いていたけれど、結局のところ経緯は違っているけれど燈と同じところに行きついている気がしてならない。
アンチテーゼとして描かれていた彼が、結局のところ記号に過ぎなかった名前に意味を見出し、それを自己の支えとするようになる。
だからこそ燈の味方というポジションとして帰ってきたのかもしれない。
その円環はキャラクターの物語としてあまりにも完璧すぎる。
・友達
当たり前のように友達という言葉を伝えてくることに対して、ジェットがどれほどの心を動かされたのかをきっとバーキさんは知らないし理解も出来ないかもしれない。
それぐらいバーキさんは当たり前のようにジェットのことを友達として見ていて、けれどジェットは自分が彼と知り合った経緯も、共にいた経緯も含めてそれは友達などという甘やかな言葉を当てはめるものではないだろうと思っていたのではないか。
だからこそ軽妙ともいえるやり取りの合間に友達という言葉を否定せず、ましてや肯定ですらなく、それが事実なのだという口調で言われてしまっては。
嬉しさを隠すというよりも嬉しさの表現がわからないような、そんな口調になってしまったのではないかとつい妄想してしまう。
・逃亡生活
家に物がない、無さ過ぎることについてはもちろん逃亡中の身であるという前提は当然あるけれど、もし状況が違ったとしても彼はそんなに物を置くタイプではない気がする。
彼の願いは火星から帰還して、金を手に入れて静かに暮らすことだったから。
誰からも奪わずに生きていきたいと願っていた事を思えば、きっと必要以外のものを置くことを是としないのではないか。
あまりに殺風景なこの家を寂しいと思うよりは、これは彼が望んだ姿に近いものなのかもしれない。
・使命
バーキさんはジェットが断ることはないと思っていただろう。
『すまない』という言葉は望んだ形とは違うけれども彼が送っていた静かな生活を奪ってしまうということに対してであり、逆に言うならばジェットは自分の頼みを断ることはしないだろうと信じていたともいえる。
そしてジェットはおそらく『ジェット』というその名を呼ばれた時から、頼みを聞くつもりだったのだろう。
もしかしたら自分を見つけたのがバーキさんだった時点で、その使命を悟っていたのかもしれない。
・紅ちゃん
どさくさに紛れて何を言っているんだ。
いや本当どさくさに紛れて何の爆弾を落としているんだ。
10年ぐらい前に誰も殺さずに済むよう、モンゴルの広大な大地に紅ちゃんを連れて帰るバーキさんの可能性を考えていた私としてはまさかの10年後にこんな公式からの爆弾が落ちてくるとは思ってもいませんでしたよ……?
・終わったら
止めてくださいフラグなんですがそれは。
仕事と言っている以上、バーキさんはあくまでも会社として依頼をしたのだろうし、ジェットも仕事として受けている。
ということにしている。
その前提が無ければ会う資格が無いと思っているのか、その口実が無ければ会えないと思っているのか。
確かにジェットと燈が火星でどういう立場でお互いが対峙していたのかということを考えれば、ただ仕事の前に顔合わせをしましょうというテンションで顔合わせをするような事はおかしな話だ。
だからこそ口実が欲しい。
仕事でやったことだ、友達に頼まれたんだ、そしてお前の役に立ったぞという前置きを経てから語りたい。
逆に言えば『役に立てなかった』時は会わないというより会えないという立場でもあるわけで。
過去回想からの任務が終わったらの台詞で着実にフラグを重ねていくのはやめて欲しい。
・良いヤツ
どこまで事情を知っているのかはわからないけれど、この状況だけでジェットが良いヤツなのだということを彼女は理解できる。
あくまでも彼女の感性の中で、という前置きがあるとはいえ、世界の裏切りへ加担した相手に対して同情などではなくその行動を見て『良いヤツ』と言い切れるサムライソードは強いな……。
・迷い
ハンニバルが自身の行動に対して、その未来に対して迷いが生じたのは初めてなのではないだろうか。
いつだって強すぎる自己肯定と共に生きて来ただろう彼が、この状況から逃れたとてどうすることが正解なのかわからない。
撤退をするにしても洋上の船からどう逃げるつもりなのか。
そしてどこに逃げるのが正解なのか。
逃げて、どうするのか。
再戦を挑むのか、好奇心が満たされたからそれでよしとするのか。
そもそも逃げることはできるのか。
彼が過去に奪い取った尊厳を取り返しに来た存在と、彼の尊厳を奪いに来た種に挟まれたこの状況で、どこに行けばそれは撤退となるのか。
・尊厳を奪うもの
#44でロシアが使っていた、<祈る者>の脳をスキャンしその情報を得るための機械。
か、もしくは23巻の折り返しにある『脳見るくん』。
本当このネーミングセンスはどうなんだ誰が付けたんだ。
七星か?(度重なる風評被害)
というか脳見るくんはあくまでも視界をトレースするものだと思われるので、ハンニバルの視界だけを得たところでテラフォーマーたちが欲するもの(それが何なのか明確にはわからないけれど)に繋がるのかというんとそれも一概には言えないだろう。
そして実際にロシアから奪取しただろうこと、奪取できたであろうことを考えるとハンニバルの脳をスキャンするつもりなのだろう。
かつて<祈る者>がされたのと同じように。
その尊厳を無視して、中味を除き、暴いてやるつもりなのだろう。
まるで報いじゃないか。
かつてハンニバルが他人の尊厳を無視してきたそのツケを、テラフォーマーが取り立てようとしているかのようだ。
・処遇
ここでサムライソード達が、人間側がハンニバルを倒したのならば、彼の持つニュートン一族としての才能や知識、特性をテラフォーマー側に奪われることはないだろう。
けれどそれは彼女たちが人間を殺すというのと同義でもあるわけで。
個人的な理想としてはハンニバルの戦闘能力を奪ったうえで捕獲し、人間側の捕虜とする辺りに落ち着くのが一番なのではと思うけれど、大人しく捕虜に甘んじてるタイプとは思えないし手元に置いておくには危険すぎるしと懸念しか出てこない……。
あらゆる意味で扱いの難しい男だなハンニバル……。
・『私の名』を
ジェットがその名前を呼ばれた時の描写を経た上で、このサムライソードの名前に対する台詞。
彼女もまたサムライソードという名ではなく、かつて姉に呼ばれていた名前を求めている。
もちろんその名前には感傷や懐かしさ、そして何よりも思い出が含まれているからこそ大切なものであり、けれどハンニバルにその名を呼ばせるのは「サムライソード」ではない自分の存在を知らしめる為。
かつてお前が奪い、踏みにじった尊厳は誰のものなのか、単なる記号ではなく名を持った1人の人間の名を思い出せという意志。
名を奪うということがどれほどのことかを思い知らせるための、憤怒の刃と共に放たれる言葉。
・名前という物語の芯
ジェットの時は彼のキャラクターとしての立ち位置の変化が完璧な円環だなと思っていたけれど、さらにそこから名に対する意味を問うサムライソードの台詞を最後に持ってくることで、一本の芯が綺麗に通っている回だなと。
感想を書きながらサムライソードの台詞に辿り着いた瞬間、彼らが抱く名前というものへの解釈と誇り、そして次回への引きがあまりにも見事というか。
好きな回と言われればまあ大体テラフォは好きな回ではあるけれど、この#65に関しては物語の技巧というか作り方、見せ方が屈指の回なのではと思っている。
特に火星での燈とジェットの対称的な立ち位置から、経緯は違えど同じような心境に落ち着くキャラクターの移り変わりがあまりにも好みで。
そしてジェットの心境を見た上で、やはり名前というものに対して別の形で執着……というとあまり言葉のイメージが良くないけれど、大切に思っているからこその怒りをあらわにするサムライソードへの繋ぎ方とかもう完璧じゃないですか。
彼女のその想いが望んだ形で安易に叶うとは思わないけれど(なにせテラフォなので)、どういう形であれ失われた尊厳を取り戻せたら、そして彼女の名前が正しい意味を取り戻せたらと願わずにはいられない。
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いや本当、あくまでも私の解釈ですがこの#65については構成が完璧だなって!!
ええ何度だって言いますとも。
こういうのがあるからテラフォがさらに好きになるというか好きが加速するというか。
ジェットの解像度が上がるのはすごく嬉しいけれど、それと同時にあらゆるフラグを網羅してる気がしてその辺り不安がぬぐえないのも確かですが。
あとバーキさんの紅ちゃん呼びに10年越しにして初めての公式供給!ってなりましたけどそれとは別に10年という月日に震えています10年……?
子供が生まれて小学校中学年とかになる年月ですが……?
実はこの回の感想を書くときに#20の自分のブログを読み返していて、本誌で海老塚病院が海老原病院になっていた記載があったので、これ単行本で修正されるのかなって心配していたのを読んで確認したら修正されていました良かった。
というか単行本読んだ時にそんなミスがあったこと忘れてましたよ。
5年の歳月って恐ろしいとか思っていたのにそれどころではない。
でもまだジェフはJ2のままですねやめろ。