HRCTを読む時には解剖が頭に入っていないといけませんね。解剖が分かると病気が見えてきます。
まずは『2次小葉』について簡単に説明したいと思います。
図をみながら読んでみてください
2次小葉(図の黄色で囲まれたスペース)とは肺の構造と機能についての基本的な単位を表しています。最小の構成単位でもあり、大きさは約1-2cmであり、HRCTでも認識できる大きさであるため、読影する際に重要になります。2次小葉は5-15の細葉からなり、細葉にはガス交換で重要な肺胞を含んでいます。
気道は10-20分岐を繰り返して終末細気管支に至りますが、この終末細気管支を中心として小葉間隔壁によって囲まれたspaceが2次小葉です。終末細気管支に平行して肺動脈(図の青色)が走行しています。終末細気管支は細葉を伴う呼吸細気管支に分岐します。
肺静脈やリンパ管は小葉間隔壁に沿って走行します(図の赤色)
・・ここまでついてきていますか?
また、次の図をみながら読み進めてください
『小葉中心』とは2次小葉の中心部をいいます(図の青い○)。ですから『小葉中心性病変』とはこの部分のことを指しますが、解剖で理解できるように経気道病変となります。(過敏性肺臓炎、気管支炎(肺炎)、結核、抗酸菌など)
『Perilymphatic area』とは解剖で理解できるように小葉間隔壁の部分を指します(図の黄色)。この部分の病変にはサルコイドーシス、癌性リンパ管症、肺水腫などがあります。
ここで少し実際の画像をみてみましょう。
これはいわゆる『小葉中心性陰影』です。経気道感染のパターンですね。
鑑別疾患は、ウイルスなどの呼吸細気管支炎、異型肺炎、TB、非定型抗酸菌症といった感染性のものから、DPB、過敏性肺臓炎、ABPA(浸潤影が多い)、じん肺症などの非感染性のものまであります。
次の画像にいきます。
小葉間隔壁が肥厚していますね。癌性リンパ管の症例です。
次に結核で有名な『tree-in-bud』とよばれる木の芽様の所見についてお話しますね。
終末細気管支の拡張と内部が膿や粘液で閉塞してこんな風になりますが、結核に特異的な訳ではありません。
上図は粟粒結核のCTです。一緒に覚えておいてください。
さて、今度は『High attenuation pattern』としてのGGO(Ground-glass-opacity):スリガラス状陰影とConsolidation:浸潤影についてお話していきます。
両者ともCT値が上昇しますが、GGOはスリガラス状で『かすみがかって』います。一方、consolidationは血管影も分からなくなるほどに『べたっ』とした陰影になります。
CT値が上がるのは肺胞の空気が膿や水分、細胞、線維化に置き換わってしまうためなんですね。
GGOでは間質に病変があり、肺胞内は含気があるのを示しています。
この感覚は鑑別を考える際に大事なポイントです。
鑑別疾患は大事です。表をご覧ください。
Acuteであれば下記のようなものを鑑別に考えます。
感染症:ウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、真菌(PCP、アスペルギルス、クリプトコッカス)、抗酸菌
特発性:急性好酸球性肺炎
肺水腫、肺胞出血、ARDS
Chronicであれば下記のようなものを鑑別に考えます
アレルギー:過敏性肺臓炎http://www.jrs.or.jp/home/modules/citizen/index.php?content_id=16
特発性:慢性好酸球性肺炎、特発性間質性肺炎(BOOP/COP,IPF,NSIP)
膠原病:膠原病関連の特発性間質性肺炎
サルコイドーシス
じん肺
薬剤:薬剤性肺炎
腫瘍:癌性リンパ管症
さらに上肺野優位であれば気管支炎やPCPを下肺野優位であればIPF,NSIPなどと考えます。
上の画像は『肺水腫』の症例です。こんな風にGGOになることもあります。胸部レントゲン写真を撮影していないと『Pitfall』に落ちてしまうかもしれません。
そして『consolidation』についてですが、肺胞性陰性となります。
consolidationだからといってbacterial pneumoniaに限る訳ではありません。肺胞が膿、水分、血液、線維化によって満たされればconsolidationを呈することを覚えておいてください。
好酸球性肺炎やBOOP,COP,IPF,NSIP、肺水腫、肺胞出血はGGOでもconsolidationでもありえます。AIPやサルコイドーシス肺胞蛋白症なんてのもあります。
同様にAcuteなのかChronicなのかと分けて考えていくことも大事ですね。
画像はCOPの例です。こんな風に『consolidation』でも細菌性とは限りません。
UIPやNSIPは末梢、肺底部優位に網状影やスリガラス陰影を呈しましたが、COPは斑状影や浸潤影を呈します。
私も先日経験しました。
最後に広がりかたの違いによる分類で『肺胞性肺炎』と『気管支肺炎』についてお話します。
『肺胞性肺炎』は肺胞領域の浸出液がKohn孔などの側副換気路を介して隣接する肺胞領域に連続して進展する肺炎で非区域性の広がりを呈します。
急速に拡大するため広範な陰影を呈することが多く一葉全体に及べば大葉性肺炎と呼ばれます。
一方、『気管支肺炎』は気管支炎や細気管支炎から連続して肺胞領域へと拡大する肺炎で、1つの区域内に小病変が多発します。
胸部単純X線写真では境界不明瞭な結節の集簇や斑状の浸潤影としてとらえられ、拡大すれば区域性の浸潤影を呈します。
CTでは浸潤影とともに境界不明瞭な小葉中心性陰影の集簇が認められ関与する気管支壁や気管支肺動脈束の肥厚を伴っていることが多いです。
『間質影』というくくりの中には『Ground -glass-opacity:GGO(スリガラス影)』、『Reticular pattern(網状影)』、『Nodular/Granular pattern(粒状影/結節影)』などを含んでいます。
中でもこうした粒状影や結節影の集簇をみた時には経気道散布性で区域性の広がりを示していれば感染による(呼吸細)気管支炎や結核、非定型抗酸菌症、過敏性肺臓炎(小葉中心性多い)などを、区域性でなく、ランダム/びまん性であれば粟粒結核やじん肺(石綿では両側中下肺野中心に粒状網状影、サルコイドーシス(リンパ管に沿って)、DPBなどを考慮します。
このように『広がりかた』もCT読影の際に着目すべき重要な点なのです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20237904
本日は以上です。
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『模試にでて解答できました』なんてうれしいメッセージも頂きました。
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