先日、極度の脱水症による『hypovolemic shock』で救急搬送された方がいました。



ダイエットで2週間以上ほとんど飲まず食わずの生活で、BUNが200mg/dl 近くまで上昇しておりました。



日本語で『脱水症』にあたる言葉として英語ではdehydration』、『volume depletion』、hypovolemiaというように区別されています。



本日はこの違いをお話してみようと思います。


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hypovolemia』は細胞外液量が減少し、その結果として組織に低循環を来している状態をいいます。水と塩分(Na)の喪失(volume depletionともいう。嘔吐、下痢、利尿薬など)でもなるし、水のみの喪失(これが後述する『dehydration』で経口摂取不良や著しい発汗など)でもなります。


水のみの喪失かNaも含んでいるかというようなことはあまり問題ではないと思います。程度の問題として主に水がmainであれば『dehydration』であり、これは高張性脱水に相当します。水もNaも失われて、それが細胞外液の浸透圧と等しい場合がvolume depletion等張性脱水に相当します。


hypovolemiaは『volume depletion』でも『dehydration』でも結果的に細胞外液量が減少したものを言います。


水分の喪失(dehydration)は細胞外液からだけでなく体内に占めるの水分すべてから喪失されます(これは細胞外液を失うvolume depletionとの違いです)。体内すべての水分の内、細胞外液が占める割合はわずか1/3です。また体内総水分量の約1/12が循環血液量ですから、この症例のようにdehydrationからhypovolemic shockをきたしている場合は極度の脱水状態といえます。細胞内も細胞外の水分もまさに『からから』状態なのです。


dehydrationの患者さんは水分がmainに喪失されるため高Na血症をきたし高張性脱水となります。一方で低張性脱水というのもあります。これは水が失われる以上に塩分が失われる場合です。このタイプの脱水は少ないのです。原因として脱水症に対して電解質の補給が適切でなかった場合に起こる医原性水分のみ摂取した場合などです。


次に下図をみてください。



救急医の挑戦 in 宮崎


図は高張性脱水の場合です。(わかりやすいように純粋水欠乏型を示しています)


細胞外液の水分喪失が起こると細胞外液の浸透圧が高くなる。これにより、細胞内液の水分は浸透圧の高い細胞外液の方に流れていく。つまり細胞内の水分が減少します。


高張性脱水では細胞内の水分が減少しているため、水分が細胞内に移行するように5%ブドウ糖液などの低張電解質液を補液します。



救急医の挑戦 in 宮崎


一方で上図は低張性脱水の場合です(わかりやすいように純粋食塩欠乏型を示しています)


細胞外液のNaが消失すると、浸透圧が低下する。これにより細胞外液の水分は浸透圧の高い細胞内の方へ流れていく。つまり細胞内に水が溢れます。


純粋食塩欠乏型(低張性脱水)では細胞外の水分が減少しているため乳酸リンゲル液などを補液します。


等張性脱水もありますが、これは説明しなくてもわかりますね。


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飲まず食わずのダイエットで急激に体重が減少しても、それは体の水分が減少しただけです。脂肪の量はほとんど変わってないはずです。食生活を見直し、定期的な運動など『ライフスタイル』を見直すことが一番大事であると個人的には思っております。



脱水症の別の記事です。

http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11281235631.html



本日は以上です。