先月『虫垂炎』のお話をしましたね。http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11018496159.html


昨日も研修医の先生と『虫垂炎』と診断した方がいましたので、前回の内容に少し補足ができればと思います。


まず、下図をみてください。



救急医の挑戦 in 宮崎

虫垂』は上図のように盲腸に起源し、回盲弁の約3㎝下に存在します。


平均の大きさはおよそ8-10㎝と言われていますが、中には25cmくらいまで大きい人の報告もあります。


『虫垂』の位置により、非典型的な症状を呈することが診断を難しくさせる要因のひとつとなっています。


下図をご覧ください。



救急医の挑戦 in 宮崎

図のように虫垂は様々な位置に移動します。


盲腸後:64%

骨盤内:32%

盲腸下:2%

回腸前:1%

回腸後:0.4%


虫垂の基部はMcBurney's pointに位置していますが、『虫垂炎』による痛みは、このMcburney's pointを中心に時計回りに広がることがあるのです。


まるで『車輪のスポーク』のようにです。



救急医の挑戦 in 宮崎

とても長く腫大した虫垂炎では左下腹部痛を訴えることもあります。(内臓逆位もありますが)


もちろんとても稀ではありますが、このような状況になりうるということを理解しておくことが大事です。


盲腸後の虫垂炎では右上腹部は勿論、約11%では後腹膜まで広がり、右側腹部痛を訴えることがあります。


移動盲腸』で正中付近に位置しているものまであります。


・・・こうなるとなんでもありですね。ですから腹痛の患者さんをみたら例え『右下腹部痛』でなくとも鑑別疾患に『虫垂炎』を入れることを忘れないでください。


もちろん、痛みの部位だけでなく、historyや身体所見、検査所見など参考して総合的に判断することが大切です。



救急医の挑戦 in 宮崎

(クリックすると大きな画像になります)


historyでは①痛みの移動(心窩部や臍周囲から右下腹部へ) ②右下腹部痛の存在 ③嘔吐の前に痛みがあることが有用と言われています。


痛みの発生に関しては前回と同様の記述ですが、


虫垂炎の痛みは虫垂開口部(appendiceal orifice)が炎症や異物で閉塞すると管腔内圧が上昇し、窩部の鈍痛という形で関連痛が発生する。さらに腸管粘膜(虫垂内膜)に炎症が起こると、右下腹部の鈍痛という形で内臓痛が発生する。さらに進行すると炎症が管腔の内側から外側、すなわち臓側腹膜に波及する。腸管の動きなどで臓側腹膜が壁側腹膜と接触し、炎症が壁側腹膜に波及すると右下腹部の鋭い痛みとして体性痛が発生します。


本日は以上です。