前回お話させて頂いた『気管支喘息』の患者さんは順調に改善してきています。


吸入ステロイドの普及で全国的に喘息死の患者さんは劇的に減少しましたが、しかしながら年間約2000人の方々が今なお喘息でお亡くなりになられています。

 

宮崎県も宮崎医大や県内の呼吸器専門の先生を中心に『喘息フォーラム』を結成しガイドラインに準じた治療の普及、啓蒙活動などされているようですが、47都道府県中、ワースト3位が定位置になっているようです。


ところで、『one airway, one disease』という言葉を聞いたことがありますか?


http://chestjournal.chestpubs.org/content/111/2_Supplement/11S.full.pdf 


鼻(上気道)も気管(下気道)もひと続きの気道(one airway)であるので、鼻アレルギー(鼻炎)も気管のアレルギー(喘息)もひとつの疾患(one disease)として捉えようというものです。


喘息のある患者さんがアレルギー性鼻炎を合併している割合は約60-80%と言われています。また約20-40%のアレルギー性鼻炎の患者さんが喘息をもっているとのdataもありました。鼻炎の悪化が喘息を誘発することも知られており、そういう中で鼻炎の治療をしていくと喘息も改善することが証明されてきたのです。



そもそも、『気管支喘息』に明確な診断基準はありませんよね。目安として


発作性の呼吸困難(喘鳴、咳)の反復


可逆性の気流制限:自然にあるいは治療により寛解する(PEFの日内変動20%以上、β2刺激薬の吸入により1秒量が12%以上改善かつ絶対量で200ml以上増加)


気道過敏性の亢進(アセチルコリン、ヒスタミン、メサコリンに対する気道収縮反応の亢進)


上記3つが挙げられます。


慢性炎症による気道過敏性の亢進が根本にありますので、『ステロイド治療』が中心となりますが、鼻炎の治療をすることも慢性の気道過敏性の亢進を治療することにつながります


他に胃食道逆流症(GERD)や喫煙も増悪因子となります。喫煙が気道過敏性を亢進させるのは理解できますね。では胃食道逆流症はどうしてでしょうか?



胃食道逆流症があると迷走神経反射が起こり、気管支の収縮が起こって喘息が生じるのです。喘息患者の4人に1人は胃食道逆流症がありますが、そのうち4人に1人は全く胃食道逆流症の典型的な症状はなかったそうです。じゃあ、症状がない喘息患者にPPIを投与したらどうだって思うと思いますが、PPI投与を支持する明確なエビデンスは現在のところありません。


http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0806290 


本日はここまで。