Salesforce.com、Googleとの提携の前にZohoの獲得に失敗
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0804/18/news008.html


Zohoのエバンジェリストであるラジュ・ベゲスナ氏は、物別れに終わったSalesforce.comとの交渉のいきさつを説明するとともに、Salesforce.comの企業方針についても語った。
[Clint Boulton,eWEEK]2008年04月18日 08時00分 更新


 ベゲスナ氏によると、Salesforce.comはマーケティングにお金を掛け過ぎており、研究開発に十分な投資をしていないという。

 Salesforce.comとGoogleとの強固な連携は、アプリケーション市場でMicrosoftとの対抗を目指した両社の戦略を支えるものとなりそうだ。

 しかしこの提携は、Salesforce.comが2年前にZohoを買収していたら、あり得なかったかもしれない。Zohoのエバンジェリストであるラジュ・ベゲスナ氏は4月14日、eWEEKとの電話インタビューでそう語った。この取材は、Zohoの親会社であるAdventNetのスリダー・ベンブーCEOの、物議を醸したブログ記事が報じられたのを受けて行われたもの。

 「2007年の段階でもSalesforce.comとZohoは提携交渉を進めており、全面的な合併の話も出ていた」とベゲスナ氏はeWEEKの取材で語った。

 ベゲスナ氏によると、SaaS(Software as a Service)ビジネスアプリケーション分野のリーダーであるSalesforce.comは、Zohoの買収を検討していたという。Google AppsおよびMicrosoftのOfficeスイートに対抗するZohoのコラボレーションソフトウェアスイートを手に入れるためである。

 この交渉は、Salesforce.comが自社の正式なアプリケーションプラットフォームとしてGoogleの採用を決めたことで立ち消えになったようだ

Zohoに求婚
 Salesforce.comではこの報道に対するコメントを避けているが、ベゲスナ氏によれば、Salesforce.comとZohoは2006年に、提携や買収に関する話し合いを始めたようだ。

 しかし、ZohoはSalesforce.comのコスト構造に対する懸念から、当面は提携だけにとどめることを提案したという。推定によると、Salesforce.comは研究開発投資の8倍の資金をマーケティングに注ぎ込んでいる。

 「結婚する前に、まずデートをしようと思ったのだ」とベゲスナ氏は振り返る。「最初はAppExchangeパートナーとして試してみて、それでうまくいけば、次の段階に進めばいいと考えた」


 Zohoは、自社の「Zoho CRM」製品の運用・販売を開始する前の1999年の時点ではSalesforce.comの顧客の1社であり、2007年にはSalesforce.comのAppExchangeとの連携作業を進めた。


 しかしSalesforce.comは、Zoho CRMのサービスが立ち上がる数日前に提携を打ち切り、Zoho CRMがAppExchangeと連携することはできないとZohoに伝えた。Zoho CRMと競合する製品を持っているからというのが理由だ。

 「Salesforce.comとZohoの交渉は2007年に再開し、買収の可能性についても話し合われた」とベゲスナ氏は話す。買収金額の話には至らず、交渉は物別れに終わったという。

 ベゲスナ氏によると、4月14日のGoogleとSalesforce.comの提携発表よりもずっと前の段階で合併の可能性は消えていたという。ベンブー氏がブログに書いているように、両社の社風は合わないと同氏は指摘する。


研究開発よりもマーケティングを優先
 「企業が多数の販売スタッフを雇うのは良いことではない。安価なソフトウェアを提供できなくなるからだ」とベゲスナ氏は語る。しかしZohoが非公開会社のままでいることを望んでいることも、両社の考えが一致しない部分であることを同氏は認めている。

 ベゲスナ氏によると、Zohoは多くの企業と同様、「決してあきらめない」という方針で事業を運営しているが、Salesforce.comが近い将来、Zohoに再びアプローチしてくる可能性は低いという。


 同氏はまた、Salesforce.comとGoogleの協業の可能性についても疑問を抱いている。Salesforce.comはエンタープライズ市場にフォーカスしているのに対して、Googleは誰とでも手を組む用意があるからだという。この見方に賛同するアナリストもいる。


 IDCのアナリスト、レイチェル・ハップ氏によると、Salesforce.comは大口顧客も抱えており、大企業が要求するSLA(Service Level Agreement)に対応する必要があるが、Googleは低価格もしくは無償のサービスを求める企業をターゲットにしているという。

 「この違いは両社の関係に緊張をもたらす可能性がある。時間とともに両社の違いがさらに拡大するだろう」とハップ氏は4月14日、eWEEKの取材で語った。「短期的には、Salesforceにとっては宣伝効果になり、製品の幅も広がるだろう。一方、GoogleはApps製品のマーケティングチャネルを新たに獲得することになる」

 Gartnerのアナリスト、トム・オースティン氏が4月14日、eWEEKに語ったところによると、Salesforce.comとGoogleの提携はクラウドコンピューティングをめぐる話題喚起を狙ったものであり、Salesforce.comは長期的なメリットに期待しているという。

 「具体的にどんなメリットがあるのか、はっきりしないが」と同氏は付け加える。