糸魚川石物語120 蛇紋岩物語 | 糸魚川ジオパークのおじさんのブログ

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日本で最初に世界ジオパークに認定された糸魚川ジオパークの魅力や出来事などを紹介します。

 糸魚川の古い地層の仲間には蛇紋岩地帯が沢山みられます。 地質図では蛇紋岩地帯は紫色の部分になっています。随分ありますよね。

 蛇紋岩って何だろう? 蛇の皮のような紋をしている石ってことですが。蛇の皮ってなんだか気持ちが悪い・・・ ですが、蛇の皮を持つと幸福なんだそうです。蛇の皮の財布やベルトなどがありますね。



 じゃ、蛇紋岩だったらどうでしょうか。蛇紋岩の功罪を考えてみましょう。


 先ずは蛇紋岩はの成因は? 地球の地下深くマントルの岩石を形成しているのが橄欖岩(かんらんがん)と言う超塩基性の岩石、普通は地下深くにあるので地上には存在しないはずだが、地殻変動などで地上にも出てきています。北海道のアポイジオパークでは橄欖岩がうりものです。



 海洋プレート沈み込み地帯では地下深くでプレートが持ってきた水分と反応して橄欖岩が蛇紋岩に変化します。蛇紋岩は変成岩の仲間になっています。

 この蛇紋岩は比重が軽いので浮きあがろうとしますがこれも地殻変動に便乗して地上に現れるのだそうです。


地下から地上へ宅配便、これも大変な時間がかかっているのです。少なくとも億年単位のことでしょう。


 ここで注目したいのが蛇紋岩がヒスイの運搬屋だったんです。ヒスイも蛇紋岩が出来るような地下深くで形成されました。ヒスイの出来方についてはまだ謎の部分が多くあります。不思議なことに、ヒスイは蛇紋岩地帯で見つかります。だけど、蛇紋岩地帯だからといって必ずヒスイが見つかるとは言えないのです。
 フォッサマグナミュージアムの展示品 ヒスイが蛇紋岩に取り込まれている証拠です。



 糸魚川の海岸ではいろいろな模様の蛇紋岩がみつかります。この地方の蛇紋岩は磁石がつくんですよ。小さな磁石が最近売られています。画鋲代わりのネオジウム磁石です。それが蛇紋岩かどうか判定するのに役立ちます。



 蛇紋岩が出来る時に磁鉄鉱ができることが原因のようです。磁石が付く岩石はほかにもあって、安山岩や玄武岩でも鉄分が多いと磁石がつきます。


 蛇紋岩も外見が綺麗なのはパワーストンなどの仲間になっています。

 縄文時代の石器時代ではヒスイは勾玉や大珠に加工され呪術や装飾品に使用されていましたが、蛇紋岩は石斧などの生活道具に使用されていて、糸魚川の蛇紋岩製品は当時のブラント品であったようです。

   長者ヶ原考古館に展示されている縄文時代の石斧


 但馬地方の蛇紋岩地帯では、土壌に蛇紋岩が適量に混じり、米作では「蛇紋岩こしひかり」と言うブランド米が販売されているようです。



 蛇紋岩にはマグネシウム分が多く含まれていてミネラル養分になっているのです。糸魚川でも蛇紋岩の採掘をしていた時代がありました。昭和の中頃に信越化学が平岩で採掘し溶成燐肥を製造していたことがあります。


 今度は、蛇紋岩の悪い例ですが、マグネシウム分が多く、多くの植物の水分吸収を妨げると言う性質があります。土壌学の専門家は通常は蛇紋岩地帯といえば何やら首をかしげる所なんです。蛇紋岩地帯の南側斜面では法面保護の吹きつけ緑化が難しいとさえ言われています。


 もう一つの悪い例では地すべりを起こしやすいことです。糸魚川地方でも蛇紋岩地すべりとして有名なのが小滝駅近くに「青ぬけ」と言う地すべり地帯があります。ほかにも蛇紋岩地すべりは多くみられます。



 人間は、自然との共生で生活しています。まさに蛇紋岩というジオの一つをとっても様々な面で関係があることがお判りでしょう。ジオを学びそして楽しむ所がジオパークなんです。