靴の芯材 | ”Bench work study" Hand sewn welted製法の靴作り教室

靴の芯材

  ご自分の靴を触って頂くとわかりますが、つま先部分と踵の周りは堅くなっていると思います。これはアッパーの表革と裏革のライニングの間に『芯』が入っていて、靴を立体に形成し、形崩れを防ぎ、足にフィットしやすくする役割を果たしています。

 この『芯材』達も沢山の種類があるのですが、多分売られている靴の9割以上は堅く厚めの紙で出来た物が使用されております。

 私のところでは『革』を使用していて、革を使う場合、自分で型を取り、革を切り、スカイビングしなくてはならないので、結構大仕事。生徒さんはこの芯作りで、靴作りの第一の難関にぶつかることになります。

 慣れるとなんてことはないのですが、私は芯作りにかける時間は20分くらいかな?これはひたすら、『シャープなナイフ』でナイフの角度を一定に保つことができれば、難関は突破できますが、最初は大変ですよね。

 革を使用する利点は丈夫であることです。が、他にも凄い理由があります。

 ビスポークの靴の場合、お客様との付き合いはかなり長くなります。20年、30年のお付き合いになることも多く、その間にお客様の足も人によっては多様に変化します。体重が8キロ変わると靴のサイズも変わると言われております。

 8キロぐらいならあまり問題はないのですが、これが人によっては20キロだの30キロだの変化する場合もあり、その都度靴を調整するのですが、太ってしまった場合は、大きく付けたした木型を水と革の柔軟剤を混ぜて靴全体に付けた後、木型を靴の中に入れて靴を伸ばします。この時、靴の素材が全部革だと、中身が壊れることなく靴を伸ばせます。また痩せてしまった場合は、木型を削って小さくし、靴をお湯に付けた後、靴に木型を入れて、ライトを当てながら温度をキープしつつ、ゆっくりゆっくり乾燥させると、革を傷めることなく靴は縮みます。これも、革以外の素材が入っている場合は、こんなことすると壊れますが、全部革で作った場合は可能が技術です。細かい調整が必要なので生徒のみなさん、やりたい人はやり方を聞きに来てくださいね。勝手にやると革破けたりしますので、注意!


 さて、芯の種類ですが、靴の先(つま先)部分の中に入れるのがTOE PUFF(先芯)で、かかと周りに入れるのがSTIFFNER(月型)、そしてその二つを繋ぐように入れるサイドライニングの3種が入ります。


 
 サイドライニングは親指と小指のあたりの強化の為であるのに加え、TOE PUFF とSTIFFNERを入れたことによる、革の厚みの段差を取り除く役目にもなっています。靴が曲がる部分でもありますので、アッパーやライニングと同じ素材の革を使用します。所謂、アッパーに使うにはトラが多いとか、傷があるとか、伸びやすい等のアッパーには使用できない革を使うことが多いいですが、これもお客様の足の具合によって、足の形によって変えて使います。

 右足と左足の横幅の差が激しい方の靴には、足幅の狭い方には厚めの革を入れ、幅の広い方には薄い革を入れて調整し、左右の大きさを揃えるのに役にたちます。

 人は歩行の際に親指と小指の周りを折りながら歩きます。その際、必然的に靴は折れ曲がります。その折れ目はしわが入ります。長年しわが入り続けると革が割れてきたり、革に穴があいたりします。特にライニング革には穴が空き易いですが、このサイドライニングが補強となって靴の耐久性をアップさせています。

 芯材は見えない部分だけれど、靴を履きやすくするため、長持ちするため、美しくするためにとっても大切です。見えない物こそ、とっても大事で、かけがえのないもので、人にとって必要な物。。。って仏教語る感じになりますが、『芯』がしっかりしているのがね、靴も人も大切ですよね。