裾の処理
最近パンツの丈を直す際の裾の仕上げについて質問が多くなっています。
ステッチを入れたタタキ上げなのか、ダブルなのか、シングルなのかという質問。
私個人の見解としては、そのパンツがどのようなタイプのパンツか、どういうスタイルで穿くかによって決めることなので、絶対にこうでなくてはならないと決めつけることはないと思うのですが、目安になるポイントがいくつかあります。
今回はそのポイントについてコメントしたいと思います。
下の画像は全て今シーズンBEAMSで展開しているパンツです。
上がポケットのディティール、下が裾の仕様です。
この画像を見て気付くことはありませんか?
上の画像のパンツはポケットの仕様がワークパンツやミリタリーパンツのようなカジュアルな仕様になっています。
そして、裾の仕様が全てタタキ上げになっています。
これは、たまたまそのような仕様になっているのではなく、
”このパンツはカジュアルなパンツなので、タタキ上げで仕上げた方がいいです”
という、作り手側(メーカー側)のメッセージだと言えます。
ポケットのディティールがカジュアルなディティールでなくても、下の画像のようなウオッシュや加工が強くかかっているようなパンツは明らかにカジュアルなパンツと言えます。
このように、作り手がカジュアルなパンツとして企画しているモノは、絶対にダブルで穿きたいということでなければタタキ上げで仕上げた方が良いでしょう。
実際私もそのようにすることが多いです。
一方、ウールのパンツのようなドレス的なディティールになっているパンツは裾の処理が違います。
ご覧のように、裾の処理はほつれないように処理しているだけです。
専門用語では ”フラシもしくはアンフィニッシュ” という仕様になっています。
このような仕様はウールのドレスパンツと同じ仕様なので、ダブルで仕上げるのに向いていると言えます。
ただし、どうしてもカジュアルに穿きたいと言うのであれば、コットンパンツなのでタタキ上げでも問題ないと思います。
また、このようなパンツの場合は製品染めであってもキレイに染めてあり、きちっとプレスが入っているケースがほとんどなので、そう言った意味でもダブルに仕上げる方が向いているパンツと言えます。
次に、これも質問に多いタタキ上げやダブルにする場合の幅ですが、ロールアップして穿く場合はファイブポケットのような1㎝の幅にするとロールアップがしやすくなります。
ロールアップしない場合は、2.5cm程度の幅でステッチを入れるといいでしょう。
ダブルの場合現在は4㎝~5㎝がポピュラーです。
最近イタリア人などは5㎝と太めの幅で仕上げる人も多いですが、ダブルの幅に関しては身長と股下の長さに関連していると言えます。
例えば、身長があって股下も長い人は4.5㎝~5㎝。
身長がなく股下も長くない人は4㎝~4.5cm。
因みに、私は身長もなく脚も短いので後者になると言うことですね・・・(苦笑)
そして、普通のシングル仕上げに関しては、カジュアルなパンツには無いと言っても良いでしょう。
ダブルで上げるようなドレスタイプのパンツに関しては、最近現地でもほどんど見かけないのと、サプライヤーの提案も全くないので、それ自体のイメージがわかないというのが正直な印象です。(ヨーロッパの街中ではご老人が穿いているのは見かけますが・・・)
私自身もフォーマルの場合しかシングルにすることはありません。
なんとなくイメージを掴んでいただけましたでしょうか。
要は、タタキで上げるパンツはカジュアルなディティール、加工、仕上げのパンツ。
逆に、ダブルの仕上げが合うパンツは、ドレスパンツのようなディティールで、加工も仕上げもキレイなパンツと言うのが目安となるポイントだと言うことです。
もちろん、これは洋服の教科書に載っているような、絶対にこうしなければならないというルールではなく、私自身が欧米の人たちの今のスタイルやサプライヤーの提案などを見てきて、実際に肌で感じた事をベースにした見解です。
それも時代によって変化して行くものなので、近い将来また新たな流れが出てくるかもしれません。
長文になりましたが、皆さんがパンツを購入する際の参考になれば幸いです。
ですが・・・
本来はショップスタッフがきちっと皆さんの疑問にお答えしなければならないこと。
早速店舗担当責任者にイエローカード出します。
私、実は結構うるさいです。(笑)