買えなかったスーツ
バイイングの仕事をしていると、自分がすごく気に入ってオーダーするものが毎シーズンあります。
そういったものは、入荷したら必ず買おうと決めてオーダーするのですが、絶対に買おうと決めていても、
それがお客様の予約で一杯になったり、忙しくてなかなか店舗に行けないうちに完売になったり、
実際入荷して試着してみるとサイズが合わなかったりと、様々な理由で買えないことが多々あります。
今シーズンも、展示会でオーダーした時に絶対に買おうと決めていたのに、買えなかったものがあります。
その買えなかったものがこれです。
LARDINI のコットンスーツです。
このコットンスーツ、画像を見ると分かるのですが、生地の裏が赤くなっています。
ベージュとレッドの先染めの生地で、このような生地をイタリアではソラーロ、イギリスではサンクロス
と言います。
上の画像の生地は、英国の生地メーカーが作る、リアルなソラーロの生地です。
ベージュのベースに赤い糸が表面に出てきて、かなり玉虫のような光沢のある生地です。
元々ソラーロは、亜熱帯地方の強い日差しを遮るために開発された生地です。
生地の表面に光沢をもたせることによって日光を反射させるのと、生地の色褪せを防止する機能を持った
生地だったのですが、現代では綾織のソラーロの生地よりもっと涼しく快適な生地はたくさんあるので、
今リアルなソラーロを亜熱帯地方で着たら、耐えられない暑さだと思います(笑)。
近年はイタリア製で薄く軽く、夏でも快適に着られるソラーロの生地が多く見られるようになり、
更に季節に関係なく、コットンなど様々な素材にのせたソラーロも見られるようになりました。
このソラーロ、イタリアでは以前からクラシックの定番的な生地で、特にサルトで仕立てるような人たちにとって
は、非常に好まれる生地であることから、以前はかなりソラーロの生地のスーツを着た人をPITTI UOMOでも見
かけました。
6月のPITTI UOMOでは、久しぶりにソラーロのスーツやジャケットを着た人たちが多く見られ、
ほとんどのサプライヤーが、様々なソラーロのスーツやジャケットを提案していました。
私が撮ってきた画像があるのでお見せします。
ご覧のとおり、ソラーロのスーツ、ジャケットを着た人やディスプレイが非常に多く見られました。
来年の春夏はベージュがトレンドカラーということもあり、ベージュのコットンスーツも非常に多く見られました。
そのベージュのバリエーションとしてソラーロが最注目されているという背景はあると思いますが、
私にとっては、長い間見慣れたソラーロも、これだけ広く既製服で提案されたことは今まで無かったので、
久しぶりに新鮮に感じ、自分もソラーロのスーツを着たい気分になりました。
そんなこともあり、このスーツを買う気満々で BEAMS F に行き、試着したところ、色も今シーズンの
トレンドの少し濃いめのベージュで、玉虫の色はあまり目立たず、生地もしっかりしているので、
コットンでも型崩れはしなさそう、ジャケットのフィッティングは何着か持っているラルディーニと変わらないので、
後はパンツだけ、パンツもいつも問題ないので丈を合わせるために試着したところ・・・
なんとヒップがきつく、それでも1㎝程度出せば全く問題ないのですが、このスーツが製品洗いなので、
ヒップを出すとステッチの跡が残りそうなので、パンツを脱いでステッチを見たところ…
やはりステッチの跡が残りそうでダメでした。
それでも諦めがつかず、製品洗いなので誤差があるだろうと、同じものを他店から取り寄せてみたのですが、
試着してもやはり同じサイジング、こういうときに限って誤差も無く正確に上がっているものです。
タイドアップ、ノータイの両方で、このスーツのコーディネートを決め、買う気満々でクレジットカードを持って
店舗に行ったのに、残念ながら買うことはできませんでしたが、来年の春夏は他のブランドでもソラーロの
スーツを展開しているので、今回は諦めることにしました。
このラルディーニのコットンソラーロのスーツは、今シーズンの私のお勧めのスーツです。
ビジネススーツではないですが、タイドアップでも着られ、ノータイでカジュアルに着ることもでき、
ジャケットとして着ることもできます。
私は買うことはできませんでしたが、もしこのスーツにご興味がありましたら、
是非店舗でご覧になって、ご試着してみてください。
100 Secrets Of MACKINTOSH というサイトで、私がマッキントッシュの魅力についてコメントした
動画がアップされました。
ご興味がありましたらご覧ください。 http://www.mackintosh-uk.com/news/