母の姉T江ちゃんの葬儀が、2週間くらい前にあった。
去年の春先に入院。6月頃余命3ヶ月と宣告され、息子さんがT江ちゃんのきょうだいに連絡。
「お見舞いに来てほしい」と頼んできた。
その後も、容体が悪くなるたびに連絡してきて、お見舞いに来てほしいと頼まれ、母やおじちゃん、おばちゃんたちが出掛けていった。
息子さんから連絡があるまで入院していたことも知らなかったのは、T江ちゃんはこの数年きょうだいの嫌われ者で、もうみんな付き合いたくない、と思っていたからだ。
以前から、T江ちゃんは気の強いところがあったり、人の話を聞かないところがあったが、この数年はそれが一層強まり、まったくもって人の話を聞かなくなった。
聞いていないということは、自分でしゃべりっぱなし。
きょうだいが集まって、誰かの法事だ葬式だ、あるいは誰かのお見舞いだ、といったシーンでもしゃべりっぱなし。
その内容が、金なら一杯ある、というのと義理の息子(その連絡をしてきた息子というのは義理の息子になる)をほめる話だけ。
義理の息子は村の顔役らしく、あちこち出掛けるのだが、その時お土産を買ってきてもらったとか、あるいは優しいとか、ま、とにかく自慢の内容はたいしたことがないのだが、この話とお金がいっぱいある話しかしない。
そのお金のいっぱいある話だが、洋服はいつも同じだし、旅行にもどこにも出かけないT江ちゃん。
T江ちゃん名義の資産は、亡くなったご主人が後妻に来たT江ちゃんが苦労しないようにとかなり残してくれたようなのだが、いかんせん、全部義理の息子が管理。
T江ちゃんが何か買いたいと思っても、息子に出してきてもらわないといけない。
といっても、言えば息子はすぐお金を出してくれるそうなので、T江ちゃんが何か買いたいともどこかに行きたいとも思わないだけなのかもしれない。
ともかく、誰も聞いていなくてもただひたすらに、「金なら腐るほどある」とか言い続けるT江ちゃんにきょうだいはげんなり。
きょうだいの集まりに、もう誰もT江ちゃんを呼ばなくなっていたのだ。
私は、T江ちゃんはそういう方向にボケてしまったのだ、と思うのだけれど、ま、きょうだいにしたら嫌んなるよね。
金なら腐るほどあるというのに、どこにも出かけず、きたきり雀で、本当にT江ちゃんはつまんない人生だ、というのがきょうだいのT江ちゃんについてのコメント。
そのT江ちゃんの葬式で、最後の焼き場での出棺のとき、T江ちゃんにすがって孫たちがおいおい泣いていたそうだ。
高校生や中学生らしい。
T江ちゃんの義理の息子の子供と、義理の娘の子供たち。
そのなきすがる様子を見て、うちの母も涙が出てきたそうだ。
「私たちはT江ちゃんのことをつまらない人生だと言っていたけれど、孫があんなに泣いてすがるのを見て、本当に孫に好かれていたんだなって思ったよ。T江ちゃんはT江ちゃんで、幸せな人生だったのかもしれないね。」
葬儀から帰ってきた母は言った。
はたから見てつまらない人生、あるいは幸せない人生が、本当はどうなのかなんて、誰にもわからない。
T江ちゃんのご冥福を祈ります。合掌。
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