011214 DVD: jude | **コティの在庫部屋**

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この人は多分、何でも大きい方が好きなんじゃないかな。




「日蔭のふたり」

Jude


前から見ようと思ってた、イギリスが誇る文豪トマス・ハーディ原作のこちら。

とはいってもハーディは好みじゃないw 学生の頃これより有名な「テス」を読んだけど、

どうにもこうにも賛同できないというか、いや、面白くない事はなかったのだけど、

じゃあ再読するかって言われると、いいえもう結構です、みたいなねw まあそんな感じで。

(ポランスキー監督の撮った「テス」は昔ビデオには録画したけどどっかいっちゃったw)

だからこちらを映像で見るのにも時間がかかったと。


ハーディよりサッカレーとかのが好きでね。だからVanity Fairが原作の「悪女」の方が好き。

確かに映画的には悪趣味だけどw、その悪趣味感も含めてサッカレーのどぎつい世界かなと。

ちなみに主演はリース・ウィザースプーンで、共演にジョナサン・リース・マイヤーズがいるよ。

個人的にはガブリエル・バーンおじさまが共演してるって方がツボなんだけどw


ハーディっつうのは、文学史の教科書を紐解けば、徹底したリアリズムって言われる訳よ。

当時のビクトリア朝の表面だけはおすまし野郎を気取った連中は度肝を抜かすであろう様な、

結婚してない人同士の恋愛&子供作っちゃいました的なスキャンダラスな話もばんばん書く。

だから本来なら面白くあっていい話だと思うんだけど、これが私にイマイチ面白くないのは、

とにかく暗いのよ。救いようのない程に。気が滅入る程に。

話が進めば進む程、どんどんドツボに嵌って最後が一番暗いというね(苦笑。

だから、常識にとらわれない二人を書いても、その二人を待ち受けるのは過酷な運命しかない。

そういう意味で言えば、新しいようで新しくはないよね。


多分その辺を(なんて言ったらおこがましさ120%だろうけど)、モームも感じてたのかなあ。

昨日の記事のモームの小説「お菓子とビール」で、主人公が子供の頃から交流したとされる

晩年になって大作家になったのは、年を取ったからにほかならないとバッサリ切られる作家、

そのモデルが実はハーディだとされているらしい。

うーん、確かにモームの味わいとハーディの味わいは180度違う。違い過ぎる。

後の時代の人の方が有利だという事は多分に承知はしているけど、でもモームのが好きだ。


前置きが長くなりましたが、映画の話をするとね、うん、まあ、上に書いた通りでねwww

つまり、救いようがなくて暗いという。

原作のタイトルの翻訳は「日蔭者ジュード」というのが一般的なんだけど、この主人公の男が

日蔭者、つまり表舞台に出られないままに人生を終える(多分。映画ではそこまで語られない)

というと何やら悲劇的に聞こえるかも知れないけど、確かに本人にとっては悲劇なのだが、

傍から見る分には完全に自己責任だろ、と突っ込みたくなってしまう話。

ここからいつになくネタばれてんこ盛りで行きますのでご了承下さいまし。


貧しい家に生まれるも、幼い頃出会った教師から、「学をつければ世に出られる」と言われ、

僕も大学に行くんだ!と志高く持ち、仕事の傍ら本を貪り読む青年に育ったジュードの前に

近所の、トサツを生業とする家の年頃の娘アラベラが現れる。

んで、ころっと誘惑されるんだなこれが。


まあねー、無理もないかなーとは思うの。年頃の男子が据え膳食わぬは何とかみたいだし。

でもここで、自分の希望とか志とかをまるっと忘れて彼女の胸に吸い寄せられる様は、

多分男性諸兄の中には「あいたたたたた」と痛い思いをされる方も多い筈w

この辺り見てるとつくづく、ハーディの小説ってのは男性向けになってるなーと思う次第。


映画ではかなーりリアルに表現されてた二人が初めて交わる場面。何がリアルかって、

場所よ場所。アラベラがそのでかい胸をジュードに見せつけるのは、彼女の家の豚小屋

この辺がねー、多分徹底したリアリズムって言われる所以かなーと。


さて、ころっと誘惑されたジュードはころっと結婚してしまう。が、上手く行く訳がない。

ここでジュードの育ての親代わりである叔母の一言が効く。

「あんたの親も憎しみ合って別れた。フォリー家の人間は、結婚には向いてないんだよ。」

ほほう、と思ったね。この時代の話にしては新しい台詞じゃないだろうか。

うーん、やぱし文豪と言われるからには理由があるね。ハーディを再認識した瞬間だった。


正式に離婚せぬままアラベラと別れたジュードは、昔教師に言われたように大学都市へ移る。

そこで職人として働きながら、大学入学を目指すぞ!と思ったのも束の間、ここで出会った

美人で聡明な従妹のスーにジュードは一目惚れ

この辺から「この男、ダメかも知んない」的な雰囲気がどんどん漂い出すw

ちなみにジュードの職人仲間の中にジェームズ・ネズビットがいる。名バイプレイヤーだね。


このスーを演じているのが、ケイト・ウィンスレットなのだが、初めて思った。この人実に巧い。

いや、初めてってのは失礼だけど、でも、ホントに唸る程巧いの。スーをよく捉えてる。


スーって女の子は、演じ方によってはこれ以上嫌な女もいまい、というようにも見える筈だ。

特にジュードとの関係を思うと、結局従兄という事でスーは彼を都合よく使っている部分もあり、

表面的にはちょっとジュードが可哀想に見えなくもないのだが、ケイトのスーはそう思わせない。

それはケイトが頭のいい、進んだ女性を演じるのが巧い、という事も勿論一因ではあるが、

一重にジュードに魅力が薄いから、である。

田舎から出て来た純朴な青年だからというんではない。だって彼は一度結婚までしてんだし。

そうではなくて、人間が、ミョーに薄っぺらい感じを受けるのだ。


なもんで、ものの見事にスーに玉砕したジュードは、その後再会したアラベラと簡単に寝ちゃうw

しかもそれは、スーの結婚式の直後である。

気持ちは解る。スーの相手は幼い頃教わった例の教師であり、彼に引きあわせたのも自分だ。

何やってんだ俺、とか思ったらそら、誰か抱きたくもなるわな。でも結局スーを忘れられずに、

彼女のいるところへ引っ越しまでする(!)のだけど再度アウト。

その間大学からも入学を断られ(この辺りは時代もあると思うが実に厳しい)八方塞がり。

と思えたが今度はスーの結婚生活が巧く行かず、これまた正式に離婚せぬまま夫の元を去る。

んで、ジュードとの生活が始まるんだな。


最初スーは、パーフェクトな関係を築きたいとか何とか言って、ジュードに身体を許さない。

これは気持ち解る。だってこないだまで一応夫のある身だったし、そんなすぐにはねえ。

大体スーはジュードが、ってよりジュードがスーを好きで仕方がなくてここまで来たんだし。

(とはいえそんなジュードを承服したって事はある意味スーもジュードを利用してる訳だから、

この辺は偉そうなことは言えないんじゃないのかなあとは感じたが)

しかしここまで書いて来て解るように、ジュードっつー男は、

下半身で考える男な訳である。

だから勿論身体を許さぬスーにジュードは不満だらけである。


その頃突然アラベラがジュードを訪ねてくる。それも夜中。で、話があるから宿屋に来いという。

のこのこ行こうとするジュードを、スーの本能が呼び止める。そして来ていた寝巻をサクッと脱ぎ、

でかい胸を露わにしながら「これでも行くの?」と迫る。

その時のジュードの寝巻を脱ぐ早さと言ったら。

流石、下半身で考える男は違う。


その晩はスーの作戦勝ちで、、ジュードは翌朝、アラベラからの手紙を受け取る。

アラベラの要件は、実は出来てた自分達の子供を引き取ってくれないかというものだった。

会ってみると確かに、顔はジュードに似ている。これは実の子だろう。名はジューイ。

ジューイを引き取った後数年の間に子供が更に2人出来、ジュードととスーは仕事に励むが、

正式な夫婦ではないという事で何処からもいい顔をされない。そんな時代だ。


ある日アラベラと再会した二人はビックリ。アラベラの2番目の夫が死んで遺産がガッポリ

めっちゃ裕福になっててまさかの下剋上。息子を引き取ろうとも言わずに去っていく。

アラベラという女がどんだけ酷い女かが解るエピソードだ。


もう一度夢を、学問を、と描き続けていたジュードが一念発起して再度一家で大学都市へ。

そこでも、昔の職人仲間以外はいい顔などしない。疲れ果て、神経がすり減った二人。

しかし、傷付いていたのは夫婦だけではなかった。

この後に起こる怒涛の悲劇は言葉に出来ない。


これがきっかけでスーは心を閉ざし、ジュードの元を去る。スーを諦めきれないジュード。

で、映画は終わると。ね、凄い話でしょ?

ここまで書いて思った。見て貰わないといけない映画だなと。どんだけ暗くてもw


あれは本当に愛だったのか

気の向くままに生きた

私にはもう解らない


*****


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