ブログネタ:初恋の人のこと、思い出すことある? 参加中
どうやら初恋は、永遠だったらしい。
「闇を生きる男」
Rundskop
ベルギー発のオスカー外国語映画賞候補作品。ちなみにこの年賞に輝いたのは「別離」。高レベルの争いだったね。
タイトルの意味は「牛の頭」。英題はそのままの翻訳って事ね。Bullheadには頑固者って意味もあるらしいが。
邦題もね、実は悪くないと思う。タイトルの指す「闇」が、外の世界だけでなく内なる世界の「闇」をも表していると
気付くと、更になかなか味のある邦題かも、と思えてくる。
犯罪ものでかなりヘビーなのに、切なくて心がパンパンになる作品。オスカー個人的にはこっちを推したかった。
切ないけど、センチメンタルに転ぶ訳でもなく、かといってドライになり過ぎる訳でもなく、その辺の塩梅が巧い。
時々挿入されるちょっとしたユニークさ(車の修理工の二人の場面とかね)もいい味を醸し出してると思う。
まずは男性にお薦めしたい。が、見る場合は絶対気合い入れて見て下さい。多分、男性なら悲鳴を上げるであろう
そんな場面が途中に挿入されるから。女の私が見たって「ありゃあ拷問だよな」と思う訳だから、男性は尚更だろう。
あの子あそこで気失ってるけど、そら気も失うよなという感じ。
親同士の黒い仕事に端を発した悲劇によって、少年達の友情がみしみしと壊れて行くのを見るのは本当に辛い。
が、ディエドリックの台詞にもあるように、ジャッキーの親父がディの親父にしたことはある意味当然っちゃ当然なのだ。
とはいえ、ディエドリックもその事で深い傷を負い、結果父親まで亡くす事になる。自業自得だと解ってはいても、
そこは彼だって、少年だった訳だから、痛手にならない事は決してなかったろう。
ただジャッキーが負わなければならなかった心と体の傷はそらもう半端ないのであり、あそこから立ち直れったって
人間そんなに強くはいられないだろうなあと、その後の彼の行動がムチャクチャだとしても、そこは同情する。
勿論、どんだけ疵が深かろうと、自分が恋した女性とクラブで踊ったからって理由だけであんなことしていい筈もなく、
だからこそ彼は最後に落とし前をつけさせられる事になる。悲劇にも、その初恋の女性の手によって。
ジャッキーに一生の傷を負わせたあの男の末期が凄いと思った。物凄い説得力がある。
そうだよなあ、あんな若い頃からあんだけ執着するってのはぶっちゃけ普通じゃないもんなあ。ああなって当然だろう。
そして、事件の真相を知るただ一人の人物、ディエドリックの愛の対象が男性に向けられているというのも、
何だかこの辺の出来事が影を落とした事が原因じゃないのか、なんて考えたりも出来るのだけど。
俺には守るものがないというジャッキーの台詞が胸を打つ。守るものがない、のであり、持てないと言わないのが更に。
あれだけマッチョな身体を保とうとするのは、自らの防衛本能でもあるだろうし、守るものがないからこその
一種矛盾した、悲しい行動でもあろう。それを感じたからこそ、ディエドリックは彼を抱きしめる。
それはディエドリックの悲しい性(さが)でもあり、多分それは幼い頃からの変わらぬ友情でもある筈だ。
最初人物が多過ぎて、画面も暗いし解りにくいのだけど、段々とバラバラなピースが繋がって行く様は天晴。お見事。
見応えもあるし、唸らせられるし、映画好きにはお薦め。ただし痛いのが嫌いな人はご注意をw
愛している、とかいうのは、
一生縁のない言葉。
俺にも、お前にも。
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