「バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト」
Bad Lieutenant
ニコラス刑事版にオリジナルがあるのは知ってたんだけど、主演がハーヴェイだと知ったのは遅かった。
更に監督があの、アベル・フェラーラだと知ったのはもっと遅かった。くそう、私とした事が何たる不覚!
アベル・フェラーラと言えば誰が何と言おうと「フューネラル」ですよあなた。
修行時代のデルトロがまだ20代だった頃に主人公の敵のマフィアの親分役を演じていたあの映画ですよ。
ちなみにこの映画の主人公はあの、ワタクシのアメリカの父ことクリストファー・ウォーケンおとうさんですよ。
で。
すげえ映画だった。
すげえすげえ。いっやあ、久々に衝撃。これが凄くなくて何が凄いんだってくらいすげえ。堪んないよ。
リカレント・ムービーにはこういう作品があるから侮れない。
今年見た旧作ベスト10には絶対入ると思う。これは凄かったホント。
どこかの解説に「レザボア・ドッグズ程ではないにせよ」とあったけど、うん、まさにそんな感じ。
あれ程じゃないけど、あれに左程劣る事のない映画。
これに対してこういうのはどうかと思うけど、私、この映画大好きだ!アベル・フェラーラ万歳!w
どうしてそんなに悲しみを湛えてるんだろう、という事がこちらにも伝わってくるこのワル刑事。
勿論やってる事は完璧ワルですから表面的には解らないのだけど、
彼のあの行動ってのは彼の優しさからくる悲しみなんだよね。
で、その優しさというのは実は弱さの裏返しな訳よ。
この辺のからくりはまあ、一般的な男の人っていう括りにいる生き物見てると大体解るよねw
でもその弱さを決して認めようとしないもんだから、悲しみが消えないんだよね。
だけどそれを自分でしっかりと見つめて、認めて、受け止められた時、多分人って何か悟るんだろうね。
そしてやり切れない程の優しさが溢れて来ると。だからまた悲しくなるんだと。
ってそれじゃ同じじゃんよヽ(;´Д`)ノ だけどそんな気がする。だから彼はバスターミナルで泣くんだ。
ニコラス刑事さんの現代版と何が一番違うかって言ったら、質感だろうな。
ニックの方はトコトン乾いてる。あの、クスリが効いてる事の表れとも取れる爬虫類の画像も乾いてたよね。
だけどハーヴェイのは画面からして湿ってる。そして後半特にハーヴェイがよく泣く。
それに対し、ニック刑事は最後、水族館に座り込んで、乾いた笑い声を微かに漏らすんだよね。
この主人公2人の最後が全然違うってのがまたいい。それぞれの味であり、それぞれのストーリーである。
だから両作を見る人は、違う物語だと思って比較した方が楽しいと思う。
でも両作に通じて言えるのは、どちらも音楽がいいって事。痺れるねえ。
彼は許して欲しかったっんじゃなく、認めて欲しかったのではないか。
自分が弱いと、言って欲しかったのだ、きっと。
大いなる父に。