DVD, 2006: the merchant of venice | **コティの在庫部屋**

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「ヴェニスの商人」

The Merchant of Venice

イギリス古典が好きだの何だのほざいてはいるが
実はこれを読んだ事がない。有名なのに。
読まないで映画に臨むのはどうかと思いつつ、映画先行(苦笑)。
4月アタマに出ていたのにどこに行っても品切れで、
Amazonでさえ待たされた。ビックリ、誰が買ってるのよ(爆)。

名優の共演による「ヴェニスの商人」は、時代考証も舞台も
1500年代、当時のままを再現しようとする。
だからこれを理解するには、冒頭に語られる時代背景を
しっかり頭に入れる必要がある。
宗教間の争い、ユダヤに対する迫害、金貸しの実態。

当時ユダヤ人たちはその宗教ゆえに激しく迫害され、
土地を所有する事を許されていなかった。
だから彼等は生き延びるために、キリスト教徒に金を貸し、
その利息を取るしかなかった。だが聖書においては、
金貸し営むなかれ。とある。よってますますユダヤ人達は
キリスト教徒に迫害される運命にあった。

ユダヤ人金貸し、シャイロック。
この悪役は必ず名優がやると決まっている。
今回のシャイロックは、アル・パチーノ。
その重厚さ。圧巻である。
怒り、悲しみ、絶望、諦念を、わざと刻まれた皺以上に
深く深く表現している。
悪役が悪役だけに留まらないのがシェイクスピア劇の特徴。
シャイロックを見て、一体誰が彼を責められるだろうか。
たとえ借金のカタにと「心臓付近の肉1ポンド」を
自分をこの上なく侮辱したキリスト教徒に執拗に求めても。

どんなに苦しくても、どんなに理不尽な目にあっても、
人は人を殺めてはならぬ、とシェイクスピアは言う。

シャイロックに追い詰められるヴェニスの商人・アントーニオに
ジェレミー・アイアンズ。
はっきり言ってパチーノの迫力勝ち(笑)。
また、アントーニオが友情以上の情を寄せる若い男、
無一文の貴族バッサーニオに平井堅、じゃなくてジョゼフ・ファインズ。
似てない(爆)?
当時の♂同志には、♀には入り込めない深い深い情があって
それをこの2人が演じている。が、バッサーニオは最後には
ポーシャという美女を手に入れ結ばれる。

♂だろうと♀だろうと、人は同時に2人を同じ様には愛せない、
とシェイクスピアは言う。

行き場のない遣る瀬無さ。
敵同士だったシャイロックとアントーニオが、
映画のラストに全く違った場所で同時に抱く面白さ。
上手く書いたな、と思う。

パチーノは特典映像で、「ヴェニスの商人」と
「ゴッドファーザーPARTⅡ」を対比してて、それが面白かった。
こう見えて喜劇っぽい面も沢山あって見やすい工夫がされている。
shakespeareものにこれから入るのはどうかと思うが、一見の価値はある。
映像もキレイだし、CGに頼らずこれだけの建造物がある
ヴェニスという街に感服、ここでロケをさせた事に敬服。