あまりにせがみやがるから一昨日ルフィに自然保護の教科書を貸してやった。
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久しぶりに会うのにも関わらず、ヤツのくだけた態度はいつも通りで、人との距離を詰める事を得意としない俺は逆にその明け透けさに居心地の悪さを感じたりもした。
1コマ目終了後俺の受けていた教室まで迎えに来たルフィは、季節外れのえんじのピーコートを羽織り、手袋をはめた手でバシバシと俺の肩を叩きしきりに「久しぶり!アメリカ行こうぜ」を繰り返した。
脈絡の無い話し方もそっくり変わらず俺が覚えているままだ。
「そうそう行ける場所じゃねーだろ」
「うん。だから今行くんだよ。1年くらい」
カーキ色のミトンの中で指を一本出しているのだろうが、外から見れば手をパーにしているのと変わらない。
「個人でか?」
「いや、大学に支援してもらう。半年間はステイだし」
「後半半年は?」
「アパートでも借りるさ」
驚いた、未だ後半の予定を立てて無ぇときてやがる。
「……ボトルアタッカーで生計立てんなよ…」
「なるかよ。まだブローカーの方が俺向きだろ」
「ちげぇねえ」
二人して声を出して笑った。
お互いに挨拶のような口の悪さを披露しあった後、おもむろに本来の目的を思い出したのか
「で、例のブツは?」
俺の手荷物をのぞき込む。
「さっそく闇ブローカーゴッコかよ。ああ、ちゃんと持って来た。ご丁寧にテスト前に配られたプリント付きだ」
「やった!さーんきゅ」
甘えた口調で俺の鞄から教科書をもぎ取っていった。