「面倒徹の事件簿 ガーゴイル」
「隣の屋敷の彫刻がうちに飛んできそうなんです。」
屋敷の女主人が憂いた表情で言った。
「彫刻が飛んできそう?落ちてきそうってことですか。」
女主人がいれてくれたブランデー入りの紅茶をすすりながら面倒が尋ねた。
「いや。落ちてきそうなのではなくて、信じられないでしょうけど、飛んできそうなんです。彫刻なのに。」
声を震わせる女主人。
「いや、信じますよ。」
即座に面倒は答えた。
「え?こんな非常識な話を信じて下さるんですか!」
今まで、誰にも話を信じてもらえなかったのだろうか。
面倒の返事に少し戸惑う女主人。
面倒だって、こんな話信じたくない。
しかし
今面倒は
見てしまったのだ
窓の外で
石の羽を広げて
面倒を威嚇しているガーゴイルを
厄介な仕事になりそうだな
面倒は
窓の外の怪物に
ニコリと
微笑んだ。
さて、面倒はどうやってガーゴイルを退治するのか気になるところだが、それはさておき、隣家の屋根の上のガーゴイルのような彫刻が屋根から外れて自分の家の庭に落下してきそうな場合、隣家の人にどのような法的主張をすることができるのであろうか?
<解説>
物の所有者はその物に対して所有権という権利をもっています。
そして、この所有権が他人によって侵害された場合(されそうな場合も含む)、侵害者に対して「侵害をやめろ」と請求できます。
これを物権的請求権といいます。
物権的請求権には、奪われた物の返還を求める返還請求権、自己の庭に邪魔な物を放置された場合にその障害物の撤去を求める妨害排除請求権、隣家の塀が崩れてきそうな場合に塀が崩れてこないよう求める妨害予防請求権があります。
本件は隣家の屋根の彫刻が落ちてきそうというのですから、隣家の人に対して屋根の彫刻が落ちてこないような措置をとるべきことの請求、つまり、妨害予防請求権を行使することができます。
「Let's go」