シェイカー通りの人びと
《シェイカー通りの人びと》 A&M・プロベンセン(著) 江國香織(訳)
〝シェイカー通り〟の住人は、決して裕福な人達ではありません。
家の裏庭には拾ってきたガラクタが山と積まれていますし、たくさんのノラ犬が自然に集まってきて自由に出入りするような家もあります。
「エイカー、ベイカー、びんぼうシェイカー」と、スクールバスの子どもに叫ばれたりもします。
でも、住人は気ままな性質の人達らしく、あまり気にしません。
たまにケンカをしたりもするけど、お互いに助け合って暮らしていました。
ところが。
そんな〝シェイカー通り〟に貯水所建設の計画が持ち上がります。
工事のため、1人また1人と住人は住み慣れたこの土地を去っていくのでした・・・・・。
「地味な本だなぁ~」
この絵本を手に取るたび、しみじみと思います(^-^;)
普通、絵本というのは読み手の心をググッとひきつけるようなエピソードだったり、魅力的なキャラクターだったりが散りばめられているものだと思うのだけど、この本は・・・・・
「山場がいつ来るか、いつ来るか」
ドキドキしてページをめくっていると、そのままスーッと終了してしまうのです。
でも、なぜだか何度も手にとってしまうのは―――
シェイカー通りの住人の媚びない姿に、何か清々しいものを感じるからかもしれません。
この本にはたくさんの人物が登場してくるけれど、その表情にはほとんど笑顔はありません。
かといって、不幸そうというのもなく、
「そんな大したことじゃないんだけど・・・」
「生活って、こういうものだよ・・・」とでも言いたげな、のんきな感じです。
それは〝あきらめ〟というのでもなくて、
世の中の流れにすぅっと身を任せているような淡々とした日常は、引き気味のアングルで描かれる街の風景とあいまって、遠いような近いような不思議な感じがします。
静かで、きっぱりしていて、少し悲しくて、でも妙に安心感のある絵本だと思います。