理容師の悪夢 | ムッチーの禁煙日記3

理容師の悪夢


 床屋の若主人、ヒデさん。

彼が、モヒカン刈りが得意なのには、

ちょっとした訳がある。


 先日、「床屋ヘアーサロン・秀治 」 に行った時のお話。


 ヒデさん 「ムッチーさーん、最近、夜中に見ちゃうんですよ…、あれを…」

 そんな奇天烈な話題を振りながらも、

ヒデさんの操るハサミは、シャキシャキと規則正しいリズムで、

オイラの髪の毛を刈っていくのである。


 ヒデさん 「女房も辟易してるらしいんですよ…、うるさくて眠れないって…」

 ますます要領を得ない話に、戸惑うオイラ。それでも

ヒデさんの操るハサミは、シャキシャキと規則正しいリズムで、

オイラの髪の毛を刈っていくのである。

 

 ヒデさん 「そんな夜は決まって…ベ、ベッドが…、ぐ、ぐぐ……」

 オイラ 「ベッドがどうしたんだい?ヒデさん…」

 ヒデさん 「ぐ、ぐっしょり…、濡れてるんですョ…」

怯えた視線を、鏡越しにオイラに送りながらも、

ヒデさんの操るハサミは、シャキシャキと規則正しいリズムで、

オイラの髪の毛を刈っていくのである。


  (中略)


 つまり、ヒデさんの話を要約するとこうだ。

・ ヒデさんは現在、禁煙2ヶ月目である。

・ しかし最近、ニコチンの誘惑に負けそうで怖い。

・ そんな中、タバコを吸っている夢を見るようになった。

・ その夢を見ると、悔恨と自己嫌悪で、悲鳴を上げて起きてしまう。

・ 奥さんはその悲鳴で眠れず、ベッドはイヤーな汗でぐっしょり。

 とまあ、そういうことらしい。


 その話聞いて、ヒデさんに同情してしまったので、

最後に慰めてやったんだぁ。

オイラ 「ヒデさーん、夢ん中で吸えるから いいじゃねえかよぉ。

      夢の中は煙草も無料、煙出ないから人にも迷惑掛けない。

      割りきって楽しめばいいよ、夢の喫煙ライフを!」

そしたらヒデさんも、やっと笑顔になってくれて…

 「ムッチーさん、ありがとうね!お礼にカット料金安くしとくよ!」

なんて、気前のいい事を言いながらも

ヒデさんの操るハサミは、シャキシャキと軽快なリズムを刻みながら、

オイラの髪の毛を刈っていくのである。


 鏡の中には、笑顔のヒデさんと、

頼んでもいないのに、モヒカン刈りになったオイラ が、映ってたっけ…。


ムッチーとヒデさん(禁煙日記)
[ ムッチー㊧と、ヒデさん ]


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