あまりにも「引き」が強くて、自分が読者だったらと思い、今日は予定より早いですがアップします。
今日も明日も厳しい締め切り~
それでもぱーりは 今日もかーく…古いねどうも。
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小野凛の手紙。
恐懼したとは、何事だろう。
「外池さんのお友達の殿方から好意を告白され、またお断りした時はずいぶんとなじられたものでしたが、私に何の罪があったのでしょう。もしかしたら生まれてきたことがそうなのかもしれません。そのような思いを抱いてこんにちまで生きております」
そんな因縁があったのか。しかし、罪とは。おだやかでない。
「外池さんから千里さんに伝えられたらどうしようと思うある事情があり、気が気でなく、あまりの大きな不安からこの数日を悶々と過ごしました。一番の不安はやはり千里さんに嫌われてしまうのではないかということです。しかし露見するのではないかと煩悶しているよりは秘密を秘密でなくするのが一番良いと結論いたしました」
最近俺も同じようなことを考えたので、身につまされる。
しかし、事実はそんなことより大きかった。
「私の実の父は正妻とご家庭をお持ちです。私は妾の子なのです」
彼女の告げてきた『事情』は、ゆっくりと衝撃を運んできた。
「めったにゆっくりお会いできない父に対して私は含むところはありません。むしろお慕いしております。物心ついた時からずっと」
「この世のいろいろな事象とは父を通して触れ合って参りました。父と会えますときは本当に楽しくまた安らぎます。父だけが私を肯定してくれる大樹なのです。けれどどんなに幸せでも父は『帰って』しまわれます。そのことに、私が罪深い生まれであるということに心を揺すぶられ、私の存在の危うさを感じます」
「いろいろなお稽古事を勧めてくれますし何でも援助してくださいますから、私も甘えていろいろとさせていただいています。活動しているときは自分の体だけでこの世に存在している気になれます。しかし私がこの世に求められているという実感は父を想うときにだけ得られるので、誰に告白されても信じることはできません。どなたからの求愛にも応えることができなかったのです」
ご両親以外の誰ともつながることができないという、想像を絶する孤独感が伝わってきた。
想いの届かなかった男たちの競争相手は大人の男だったか。軽い告白じゃ敵うまい。
「湖畔の夜、千里さんに薦められてうたを披露いたしました。詩吟の会以外の、うたを知らない方々の前で披露したのは初めてです。なぜあの時私がうたう気になったのかと不思議なのです。千里さんが励ましてくれましたことが鍵です。そうとしか思えません。あなたの何が私を動かしたのかしれません。それを聞いてみたい。見つけたい。そう思って初めてのお手紙を差し上げたという次第です。
しかしながら私が今から一歩を踏み出すのに、どうしてもこの告白が必要なようです。でなければあなた様に手紙を書くことができなさそうだからです。書いて嫌われるかもしれないという不安、今最高潮に達しております。あなたの寛大にすがるのみです。
鶴のように首長くお返事お待ちしております」
手紙を置いた。この手はしばらく動かなかった。
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この物語はフィクションです。