たくさんのブログが毎日生み出されていくけど、その中でなくてはならない言葉がどれくらいあると思う?
ほとんどはそんなことない。
でも、人はつぶやかずにいられない。
そして人は孤独には耐えられないから。
聞いてもらう手前の、読んでもらえるかもしれない画面に。
たくさんの人が、思いを、主張を、物語を託す。
私の紡ぐ物語、シリーズ第13話。
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ちょっと異変かもしれない。
凛から返事が来ない。正確には、想定より遅れている。気付いてしまうと気になって仕方がない。
先に送った便では、「自治委員の同級の外池と、小野凛が同じ高校であることを知ったと、すごい偶然だね」ということを書いたのだ。
情報過疎に時を持て余して、外池にインタビューしてみた。
「ねえ。凛…小野さんはモテたんだろ?」
外池貴子はじとっと俺を見てやや投げ出すように、ええ、そうね、と答えた。
「それはもういろんな人から、手紙を渡されたり、デートのお誘いを受けたりね。どれもお断りしていたわ。二けたに達した時、ついたあだ名が『撃墜王』」
「へ~。こういっちゃなんだが、女の子の恨みも買うだろうな」
「…私も被害者だったの」
「えっ? あっ」
外池の片思いの相手も、凛への告白をしたのだという。
「私からもいい?」
「あ、ああ」
「大澤君、小野さん好きなの?」
「え? ?」
「付き合いたいの?」
なんだそりゃ。そんなこと思いつく?
何を心配してるのか?
危険信号だ。YESともNOとも、まっすぐ答えてはいけないようだ。
「彼女、想い人がいるって聞いたぜ?」
「は?」
「もしかしてずいぶん前からそうなんじゃないのかな。誰も相手にしないのは」
「それ、本人が?」
「ん。だから安心して手紙をやり取りできるんだ。本当、興味深いよ。いろんな経験をしてるようだから」
また眉にシワが寄る。急いで「詩吟とかお花とか合気道とか」と付け加える。
「恋愛関係とかそういうのは、ないんだよ。俺もだめだから。恋愛モード無期休止中」
肩をすくめてみせる。
「だからちょうどいい相手なんじゃないかな」
外池の肩からふっと力が抜けた。
「…彼女は母子家庭なのよ」
するっとそう言ってから、はっと口をつぐむ。
「…そうなのか」
その話はそこで終わった。しかし、不審は残った。
あれだけ多趣味なのは裕福なのだろう。
母子家庭がすべてそうでないとはいわないが、普通ちょっと難しいんじゃないかと思う。
なにか事情がありそうだ。けど、外池は話を打ち切って、それ以上の情報は出さないようだ。
それとは別に、俺が凛と仲良くすることに、外池は思うところがあるらしい。
少し、この文通に気が重くなった。
その気持ちを見透かしたようなタイミングで、凛からの手紙が届いた。
「外池貴子さんとお友達だとお聞きし、世間は狭いものだと恐懼しております」
そう書き出されていた。
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この物語はフィクションです。