ブログ連載小説の先輩たちにほんと頭が下がります。
一回の分量の問題って難しいですね…
半端なところで切れないし。
結果、思わぬ密度の差になる。
あとでまとめ読みしたら楽しいかも。
~~~~~~~~~~~~
もうスリルはたくさんだ。
…といいたい。
どっちでもよくなるには、秘密が秘密の意味を持たなくなればいい。
今なら。話してもいい気がする。話しておこう。
「そうだよ。俺、恋なんてしないもん、当分」
「…あっそう。当てにならないわよ、男心は」
「俺さ」
「んー?」
大分話しやすい雰囲気になったと思ったが、声色はわずかに緊張してしまったようだ。
彼女の返答も敏感に硬くなる。
「サラリーマンやめるとき彼女を捨てたんだ」
外池は黙ってみている。
「当たり前だけど初めは会社を辞める気なんかなくて。
社内サークルで付き合いたいって俺から声を掛けた。
おっとりした人でね。そのまま会社で勤め続けるんなら何も不満はない彼女だった」
切り出してしまえば、もう止まらない。
「初めておんぼろ車で彼女を家まで送ったらさ、閑静な高級住宅街でびっくりしたんだ。
俺の人生にそんな風景が実在するんだって。人生初の”お嬢様”だったんだよ」
「なにそれ…田舎の子で悪かったわね?」にやっと彼女は笑う。
「知らないよ!
…でも辞めなきゃって思い始めてから。この人を道連れにするのかなって考え始めて。
どう考えても再受験が必要だったんだよ。ねえ、受からなかったら浪人生だよ?」
「てか無職よね」
「しかもそのころ、同期が何人も彼女を狙ってたって話を聞いちゃってさ。
そいつはやっかみ半分応援気分でいったんだろうけど、とんだプレッシャーだった。
あんないいとこのお嬢様なのに、いい子なのに、俺についてきたら苦難の道じゃないかって」
「なにより、俺のバカな選択を受け入れてもらって、それでも付き合ってほしいなんて、言えなかった。
ぎりぎりまで言えなかった。辞める決心をしたから、彼女に別れを切り出したんだ」
「なんて?」
さすがにちょっと言葉が止まる。
思い切って声にする。
「あなたはどんな素晴らしい奴を選ぶこともできて、光の当たる道を歩いていける。それに、あなたが俺と一緒にいくのを耐えられると思えない。だから今、別れようって」
外池の目が一瞬細くなった。
「でも、彼女は言ったんだ。
『どうして今まで言ってくれなかったの?』
『わたしはあなたのなんだったの?』」
相談もせず、勝手に決めて、サヨナラまで俺に決められて。
そりゃ腹が立つよね。パートナーと思ってくれていたんなら
でも俺は、彼女を人生のアクセサリーのように見ていたんだ。
自分が会社から離れるって気づいて初めて、人間扱いして」
結論のつもりでため息とともに言った。
「彼女を傷つけた罰がこの胸の痛み…痛みが消えるまで恋はしないって決めたんだ」
しかし、そこへ外池は意外な言葉をかぶせてきた。
「違うよね」
~~~~~~~~~~~~
この物語はフィクションです。