小説始めました。しかし、今回見切り発車もいいとこです。

シノプシスとエピソードと登場人物くらいしか決まってません。

タイトルすらしっくりこなくて変えました(笑)。また変えるかもしれません。

「起こしたい事件」や「書きたい場面」がいくつかあって、それに向かってストーリーができていくのですが、人物造形を作りこめば勝手に動き出すと信じてアップし始めました。

手書きのタイムマシン 1.合同研修より。

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俺、大澤千里は、今は旧都大学の1回生だ。

2学期に入り、専門科目に実習が多くなる。

1学科に40人しか同級生がいないので、授業はいつも同じ顔触れだ。テストももちろん同じだ。

 

「大澤君、解剖実習の練習付き合ってよ」

昨年末までサラリーマンだった俺は、(数人の例外を除いて)皆から見たら歳上だから『さん付け』で呼ばれることが多いのだが、自治会同期の外池貴子(とのいけ・たかこ)は『君付け』で呼んでくれる。そんな調子に、周囲は初め驚いていたが、すぐに慣れたようだ。

「何人いるの?」

「3人」

「行くよ」

複数いるのを確認して返事する。

 

何かと構ってくる外池さんは、ちょっと苦手だ。

ちゃきちゃきした仕切り好きの人で、そういえば俺もなぜか「子」ではなく「人」と呼んでしまいたくなる。

俺をクラスの話の輪の中に混ぜよう混ぜようとしている。思い込みではなく、ぽろっと本人がそんなようなことを言ったことがあるから本当だ。

気遣いはありがたく受け取る。

だが、何かの集まりのあとみんなでご飯を食べに行くような話の流れからは、全力で離脱するようにしている。

人間関係で間違いたくはない。

できるだけクラスメートの、特に女子とは等距離にいたいのだ。

 

まだ残暑は厳しく、少しぼおっとしていたので、視線が固定されていたようだ。

「何に見とれてんの?」

含み笑いの声に我に返る。

改めてまじまじと視線の先を見てしまう。あっと思った。

女子の薄手のカーディガンもすぐ汗がにじむ。腕を上げていた女子の脇をじっと見ていたことになっているのだ。

「いやっっ、なにも…」

「そう?」

二人だけの応酬ならよかった…

しかし、見られていたと思った本人が気づいた。その声に周囲もあわてた。

「え… きゃ! いや……!」

「あーっ」

「あ、そんな、見つめてないよ、ちょっとぼおっとしていただけ…」

 

そこへ、有無を言わさぬ強い声で、外池さんが切り込んだ。

「みとれるんならっ!」

みんながはっとして、彼女を見る。

「わ・た・し・はどう?」

ポーズをとって見せる。みんなちょっとあっけにとられた。笑い出した。

緊張感が流れれば、日頃の信用がものをいうだろう。

密かに胸をなでおろした。

彼女はとどめに俺にウインクして見せた。

借りができた…ように感じた。やっぱり苦手だ。

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この物語はフィクションです。