ギターを自分に合わせる | 聞きっぱなし言いっぱなし食べっぱなし

ギターを自分に合わせる

たまにはギターのお話。


昨年あたりから久しぶりにエレキギターなどを演奏し始めた。

バンバンバザールでワタクシをご存じの方には、いつも座ってフルアコを弾いている上、異様に老けているので、珍しがられそうだが当然昔からフルアコを演奏していたわけではない。

そもそも中学2年の時にアリスに飽き始めた時点でモーリスのフォークギターが我慢できなくなり、エレキを購入しようとしたところ、父智久より「お願いだからアームの付いたギターを買わないでほしい」という素人としては渋すぎる意見が入り、悩んでしまうところからワタクシのエレキ人生が始まる。アームとは「トレモロアーム」のことで、トレモロバーを握って動かすと音程がウインウインと上下に揺れる装置なのだが、どうやら父智久は、コレが非行の原因になると考えていたそうだ。

テレビで深夜に放映していたロックの歴史ドキュメンタリーでジミ・ヘンドリックスと遭遇してしまい、「こ、これやわ」と一気に好きになってしまう。彼の「電気を背景に音楽が生まれる」というラリラリなインタビューに感銘を受けて楽器屋でカタログを漁ると、どうやらジミのギターはフェンダー社のストラトキャスターらしいということになり、コピーモデルを購入しようと盛り上がる。

ストラトを弾くジミヘンドリックス
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当時、日本国内ではコピーモデルが隆盛を誇っており、グレコ、フェルナンデス、トーカイ、なんていうメーカーで精密なコピーが行われていた。これらは今でも現役で通用するくらいの素晴らしいギター達。しかし学生はそれらでもなかなか購入できないので、さらに廉価なブランドも存在した。
ハリー、トムソン、サミックなどはその代表的な例で、ハリーとトムソンは通信販売で全国の中高生に発信していた

通販ギター(これは恐らくアフロヘッドフォンで有名な二光通販エレキセットのムスタング)
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今みたいに初心者からいきなりフェンダーやギブソンなどのアメリカ製を買う人などほとんど居なかった時代、ワタクシが選択したのは「ヤマハ」だった。商売人の家庭の子供というのは親の「ヤマっ気」や「根拠の無い自信」にうんざりしているので大体において安全な選択をするが、ワタクシも多分にもれず「ヤマハならバイクも車も船も作っているから間違いないだろう」と、市役所職員的発想でヤマハのカタログから決めることにする。

商売人の父智久は、息子のそんな保守的な選び方に腹を立てることもなく、快諾したが「よし、ほんならヤマハにせい。そやけどヤマハでは買うな。お父さんが話を付けてくるからな。」と、やはり買い方は普通ではなかった。

そして父智久は、半ば強引に黒いレスポールを持って帰ってくる。当然トレモロアームなど付いていないので怒るワタクシ。
「黒いレスポールなんか弾けるかダボ!、ジミヘンはストラトや!」
といいながらジミヘンのビデオを見せて説明したが、ちょうど画面がジミヘン晩年の写真をド・アップで映し出した・・・・

黒いレスポールを演奏する恍惚のジミヘンドリックス
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そう、晩年はギブソンも使っていたのだった。ジミヘンが使っているのだったら仕方が無い、無駄な抵抗を諦めて以後は黒いレスポールをぶらさげてお巡りさんに呼びとめられるほど歩きまわったものだ。最初はアンプが無かったのでステレオやエレクトーンに繋いで弾いていた。当然「ニューウェイブ」みたいなヘボい音しかしないので、この体験以来ずっと「ニューウェイブ」が嫌いになってしまうが、楽器センターという学生ギタリストの巣窟のような元町の楽器屋でアリア製ディストーションを購入してギターとステレオの間に繋いだら、この世のものとは思えないクレイジーなサウンドが出て、「これが音楽だ!」と妙に感動してしまう。今思えば、ステレオに過大入力してしまい歪んで割れまくった音がサイケデリックロックやGSで使う「ファズトーン」に似ていたということだと思うが、この過大入力になりやすい「ハムバッキング・ピックアップ」の装着されているのがレスポールの特徴でもあり、ストラトではこうはならなかったので結果的に父智久の「非行防止策」が功を奏したわけだ。

ハムバッキング・ピックアップの音に馴染んでしまった人のことをギブソン系人間と呼ぶが、ワタクシはエレキギター1台目からギブソン系人間になってしまったので、フェンダー系のギターはどうも苦手になってしまう。
簡単に言うと、ギブソンは太くて丸く、フェンダーはスタイリッシュでシャープな音がする。
その後変遷を経て20代の大半はギブソンES335というギターを愛用していた。
ES335
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このタイプのセミアコギターは、レスポールとフルアコの中間的な存在で、ジャズからロックまで幅広く使えるのでファンが多く、非常に平均点の高い楽器と言えよう。79年のメイプルネックES335を京橋のワルツ堂で買って早く家で弾きたくて急いだあまり尼崎でオービスに記念撮影されていまい、後日機動隊に呼びだされて「これはあなたですね?」と見せられた写真は満面の笑みで爆走する紛れもないワタクシであった。

それくらい嬉しかったES335だが、10年近く弾いた時点で、楽器の完成度の高さに「ギターを弾いているというより、これはギターに弾かれているのではないか?」とデッドエンドに迷い込んでしまい、当時傾倒していたグラントグリーンが使っていたことで知られる同形でセンターブロックの入っていないES330という薄型フルアコにチェンジするがバンバンバザールのツアー中、忘れもしない浜松ポルカドットスリムというライブハウスで倒してネックを複雑骨折して終了、魅力もわからぬうちに道を断たれて、社長が人から借りている1940年代製のES125というフルアコを又借りしてフルアコの道へと入る。
以後は、北海道でオダシマギターに出会い、手工ギターの魅力に取りつかれて現在に至るのだが、エレクトリックなセッションが増えてきたので昨年衝動買いでテレキャスターを購入した。
その時の記事はこちら

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初心に返って、日本製である。いわゆる「ジャパフェン」というやつだ。対義語として日本に輸入された本物のフェンダーのことを「ジャパゆきさん」と定着させるべくワタクシは敢えて日本製にこだわってみた。しかし久しぶりのエレキギターな上にフェンダー系である、ギブソン系人間のワタクシにはいろいろ不都合が見えてくる上に日本製のしかも廉価モデルである。

テレキャスターをモディファイに精通している札幌の友人「ボスさん」に相談したところ、「俺もジャパンですよ!パーツ変えたらバッチリっしょ」と言うので、早速ボリュームとトーンのポット、スイッチとジャックも良いものに部品交換、ヴィンテージサウンドには欠かせない「オイルコンデンサ」という部品を組み込んだらかなり良くなる。この時点でUSAかジャパンかの差は部品が違うだけではないのか、とますますカスタムショップ嫌いに拍車がかかることになる。

そしてしばらく弾いているとさらにいろいろ分かってくる。ピックアップ(マイクのこと)がやはりフェンダーのシングルコイルでは駄目かも・・・。
長年というかほぼ全てハムバッキング・ピックアップを使用してきたことでワタクシはどうもピッキングが強いようで、シングルコイルを使うと音がパキパキになってしまう。勿論慣れもあるので、優しく弾いてやったりしたが有事の際に「えい!」と振りかざすと「カス」みたいな音になってテンションが下がってしまうのだ。
これを名古屋在住の札幌の友人「フクハラさん」に相談してみたところ、「シングルコイルと同じ形のハムバッキング・ピックアップがありますよ~」とのこと。確かに存在は知っている。アメリカのジョーバーデンさん制作のピックアップがテレキャスター用のシングルサイズハムバッカーで、ワタクシの敬愛するダニーガットンさんが使用していたピックアップだ。しかし、どうやらこれは日本製のようで、更に話を聞いてみる。

「国内有名メーカーのギター用のピックアップを制作している会社がジョーバーデンタイプに似たものも作っているんですよ~」

この会社は啓陽という。渋い名前だ、そして知らなかった。
しかしお話を伺ったりHPを見ていると歴史のある会社で、旧テスコの開発をしていた人の会社で、ESPやシェクターなどなど挙げればキリがないほどの多くの高級メーカーにピックアップを供給しているのだそうだ。何よりテスコの開発出身というのだから音の好みは合いそうである。
コレだ!

テレキャスター ツインブレードタイプフロントピックアップTBL-N
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引き続きフクハラさんと話し合って、ギブソン系人間が弾きやすいテレキャスターに改造計画をしてもらうことに。

ピックアップを啓陽さんのものに交換、フレットを若干太めのものに交換。
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これでかなり改善される模様だが、今回無理言ってさらに大手術をしていただくことに・・・。

指板を削って、R(角度)をつける加工。本来フェンダーとギブソンではRが全然違うのだが、もちろんギブソンで慣れているのでギブソンの角度にしてもらうことに。

ネック(棹)を断面にした図で言うと、
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から、
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へと山をを削りなおして頂いた。

これが2月の頭に出来上がって弾いているが、かなりイイ!。

テレキャスター独特なエッジは残りつつも音は太く、普通のハムバッキング程パワーが強い訳でもないのであくまでシングルに厚みちょ深みが出た印象。フレットと指板の角度変えてもらったのでチョーキングしても音切れないし、指の馴染みも非常に良いではないか。
ここまでやるとUSAより良いに決まっている。
それにしても啓陽さんのピックアップ、楽器業界の方には有名かもしれないが、ギタリスト、ベーシストの間ではほとんど名前は知られていないかも。ワタクシも全く知らなかったが、これだけ素晴らしいピックアップが国内生産されていることはもっと知られるべきだと思いました。

今後の展開はブリッジの駒くらいか、正直昔は改造は興味なかったのだが、今回のこの大改造はやってよかったと言えよう。
中年になるにつれ、自分が合わせるよりも、自分に合わせてもらう方が楽になってくるものなのかもね~、あとはベストなアンプ見つけてバッチリ!と思った段階でまたギター探しの旅が始まるのだろうか・・・・。

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追記

このギターを使ったライブが北海道でありますヨ~

2011年3月18日 北海道 小樽 GOLD STONE
「MITCH ALL STARS LIVE!!」
START 20:00~
MITCH(tp.vo) 富永寛之(g) 板谷大(p) 工藤精(b) 永田充康(ds)
info 0134-33-5610 http://www.goldstone.co.jp/index.html

2011年3月19日 北海道 札幌 FAMOUS DOOR

「MITCH QUARTET LIVE!!」
START 20:00~
MITCH(tp.vo) 富永寛之(g) 工藤精(b) 永田充康(ds)
info 011-736-2002 http://www.sapporolife.com/shopdetail.asp?cate=3&subc=20&id=228