リビングでアッシュは新聞を読んでいた。
「アッシュ、コーヒーでも飲むかい?」
トレイにマグカップを二つのせ、英二がリビングに入ってきた。
「ナイスタイミングだーーサンクス」
英二からカップを受け取り、アッシュはコーヒーを口に運ぶ。
時々自分でもコーヒーを入れるが、英二に作ってもらったコーヒーの方が数倍美味い。
どうしてかは分からないけども。
「ーー今日のハロウィンパーティー楽しみだね」
英二の言葉ですっかりパーティーの事など忘れていたことにアッシュは気がついた。
「そうかな?」
「うん、だって皆と思い切り騒げるじゃないか。なんだかワクワクするよ」
「大げさだなぁ。。。いつものメンバーじゃないか」
「でもハロウィンだよ?しかもバーを貸し切ってするんだからコーフンするよ!」
子供のように瞳をキラキラさせている英二を見て、先ほどの子供たちとあまり変わらないように感じてしまう。
ただ、本人に言うと怒るので言わない事にした。
「ーー日本でもハロウィンにパーティーはするのか?」
「うーん、正直言って僕の故郷は田舎だからあまりする人はいないと思う。。。だからこそ本場のハロウィンを体験できて僕はすごく嬉しいよ」
「じゃぁ、オニイチャン、仮想でもするか?」
「いいねぇ!やりたい!僕、仮想をやってみたかったんだ!」
「俺がピッタリの仮想衣装を選んでやろうか?」
「。。。。嫌な予感がするからいい。この間はナース服を僕に着せようとしたし。。。」
英二は首を左右に振ると、アッシュは残念そうにため息をついた。
「ちぇ、まだ言うのかよ。今回はせっかく魔女のコスチュームを選んでやろうと思ったのに」
「やっぱり、、、、スカートは遠慮しておくよ。なぁ、昼飯食ったら街へ出て、一緒に衣装を買いに行こうよ」
「え? 朝も外出したばかりだろう? また出かけるのかよ。。。」
「あ、、、迷惑かな、、、君、疲れているよね、、、、」
突然シュンとしてしまった英二をみて、アッシュは胸がチクリとしてしまう。
(どうしてこいつの一挙一動に反応してしまうのだろう?)
英二が悲しんでいる顔は見たくなかった。アッシュは咳払いをしてから言った。
「誰が疲れているって? おれは年寄りじゃねぇぞ。。。。仕方ないな、付いて行ってやるよ。。。世話のやけるオニイチャンだぜ」
アッシュの言葉に気をよくした英二は思わずハグをした。
「サンキュー。お礼に君のコスチュームは僕が選んであげるよ」
深い意味ない、単純に嬉しくてハグしただけなのだが、アッシュは驚いた。
「そっちの方がやばそうだ」
「そんなことないよ。カボチャのお面をかぶってもらおうかなって」
「絶対に嫌だ!」
「ははは、、、やっぱり?」
「勘弁してくれよ」
「よし。じゃぁさっさと昼飯食おうぜ。今日はインスタントラーメンでいいだろ?」
「おまえ、手抜きしたいだけじゃないのか?」
「。。。。じゃぁ、手のこんだ納豆ランチでも作ろうか?」
「あぁ、なんだか無償にインスタントラーメンが食べたいなぁ!!英二のつくるラーメンは最高だ!」
「「。。。。はははっ!」」
クスクス笑いながら二人はアパートへと戻っていった。
(続)