英二は子供たちの元へと駆け寄り、しゃがんで目線を合わせた。
「Happy Halloween! 君たち、これをどうぞ」
そう言って英二は先ほど街で買い物を済ませて紙袋に詰めたお菓子をいくつかとりだし、数ドル紙幣と共に子供達にプレゼントをした。
「「「ありがと~」」」
子供たちの中で、英二のことを知っている女の子がいた。
「エイジ!」
フワフワのカールヘアにピンクの小さなリボンをつけたその少女はご近所の主婦の子供だ。時々スーパーで会うこともあり、英二に懐いていた。
「あれ、クレアじゃないか。可愛い魔女に変装しているから誰か気づかなかったよ」
「わたし、、、可愛いの?」
恥ずかしそうにクレアは笑った。
「うん、すごく可愛いよ!」
にっこりと笑って英二はクレアの頭を撫でてあげた。
「わぁい、エイジに褒められた、嬉しいよ」
クルクルっとその場で踊りながらクレアは一周回った。
アッシュは英二とクレアの様子をじっと見ていた。
先に戻っていろと言われたが、そうすることはできなかった。
(あいつ、ガキにまで名前を覚えられているのか。。。)
英二は不思議なヤツだとアッシュは思っていた。
あっという間に人の心をつかむ彼は、このアパートに引っ越してからも色々な人と仲良くなっていた。
そんな彼が羨ましいような気がしたし、自分とは別世界の人間だなと改めて感じてしまう気もした。
「エイジ、、、クレアのお願いを聞いてくれる?」
「なんだい?」
「あのね、大きくなったら私と結婚してくれる?」
「え。。。。」
英二は目を丸くして驚いている。
アッシュは黙って見ていたが、若干イライラしている自分に気がついた。
「。。。。。」
(はぁ??何言ってんだよ。。。)
「えーっと、、、ありがとう。クレア。君が大きくなったらとびきりの美人になるだろうな。その時にまだ僕を好きでいてくれたらもう一度告白しておくれよ。でも僕なんて相手にされないだろうなぁ」
「どうして、そんなことを言うの?」
「だって、、、おじさんになっているから」
「。。。。。」
(ぷっ!)
アッシュは吹き出しそうになったが我慢した。
(続)