(c) .foto project
「さぁ、みんな。くじを引いてくれ」
英二はニコニコ笑いながら赤い箱をさしだした。箱の上部には英二がカッターナイフであけた丸い穴が開いており、その中には事前に皆から集めた「くじ」が入っている。穴に子分たちはそれぞれ手を突っ込でくじを引き始めた。
「次は俺の番か……こいつにしよう!」
アレックスはくじを引き、自分が誰のシークレットサンタになるのか確認した。
(俺がプレゼントをする相手は……「サミー」? 誰だ、こいつ……?あぁ、新入りだな)
「お、生意気にもにリクエストが書いてある…『クルマ』だぁ!? ふざけんな、てめぇにはオモチャで十分だ。トイザラスでトラックのオモチャを買ってやる、楽しみにしておけ!」
不敵な笑みをうかべながらクシャクシャっと乱暴にくじをジーンズのポケットに入れた。
(他の連中はどうなんだ? ボスや英二のシークレット・サンタになった奴はいるのか?)
ふと目の前のいたボーンズもくじを引き終わったようだ。彼もくじを開いていた。アレックスはボーンズの元へと行き、肩ごしに声をかけた。
「おい、ボーンズ。お前はだれのシークレット・サンタになった?」
突然話しかけられたボーンズは少し驚き、ハッと振り返った。
「内緒だ。言うとおもしろくねぇじゃないか」
ボーンズは舌を出してくじを持った手を背に隠した。
「いいじゃねぇか。別に他の奴に見せちゃダメというわけじゃないだろう?」
「ばーか、俺を驚かせた奴に見せるもんか」
「ちぇ、つまんねぇの。用があるから俺は先に帰るぜ」
興ざめしたアレックスはデニムジャケットのポケットに手をつっこみ、帰っていった。
「あれっ……アレックスのやつ、帰っちまったな」
扉を開けて出て行ったアレックスを見たコングがボーンズに話しかけた。
「俺、実はアレックスのシークレットサンタなんだ」
ボーンズがひらひらと手を振ってくじを見せた。
「なるほど、それで本人に言わなかったんだな」
コングは納得して頷いた。
「アレックスへのプレゼントか……あいつ、リクエスト書いていないし……」
ボーンズは考え込んだ。
「あいつが好きなもんは車だよな。でも俺たちに車を買うカネなんかねぇからな」
「そうだ、アレックスには車のプラモデルでいいんじゃねぇ?トイザラスで買うか」
「いい考えだな、きっと喜ぶぞ。へっへっ!」
品物が決まり、ボーンズはホッとしたようだ。そしてコングが手にしているくじをチラリと見た。
「ところで、コング。お前は誰のシークレットサンタだ?」
「俺か? えーと……ボスだよ」
コングはいつもと同じ調子でうろたえることなくのんびりとしている。
「え? それ、本当か?」
ボーンズは驚いてコングからくじを奪い、そこに書かれている文字をまじまじと見つめた。
(うわ、この字……本当にボスじゃないか! こいつがボスにプレゼントをやるのか?)
「お、おいっ! 大丈夫か、おまえ!ボスに何をプレゼントするんだよ?」
少しとぼけたところのあるコングがボスに気の利いたプレゼントを贈れるとはとても思えず、ボーンズはうろたえながら彼を見つめた。
「どうしようか。ドーナツじゃだめかな? へへっ」
そう言って笑うのんきなコングとは対照的に、ボーンズは冷や汗をかいていた。
(大丈夫かよ、こいつ。心配になってきた)
「――センスねぇな、ボスはドーナツなんてくわねぇよ。何かリクエストは書いていないのか?」
「なにも書いていないぜ」
「きっとボスのことだから俺たちにカネがないことぐらい分かっているんだろうな……さすがだぜ、ボス!」
ボーンズが勝手に想像して頷いているとドアベルが鳴った。英二は他のリンクスたちのくじ引きをしていたが、いったん手をとめてドアへと向かった。
ドアののぞき穴から来訪者を確認した英二は笑顔を浮かべながら急いでドアを開けた。
「――いらっしゃい!」
「よう、英二。買い物ついでにやってきたぜ」
「英二、くじを引きにきたわよ!」
マックスとジェシカ、そして二人の間には男の子がいた。
「みんな! さぁ、こっちへ来て……! マイケル、くじをひいて!」
英二はしゃがんでマイケルと同じ目線で話しかけると、マイケルは嬉しそうに
「うん!ありがとう、エイジ! 今日はすごく楽しみにしていたんだ!」
マイケルはパタパタと足音を立てて、リビングへと走って行った。
<続>