【ハロウィン創作】アッシュと子犬の物語 第一話:出会い | BANANAFISH DREAM

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 NYの雑踏の中を『ボク』はさまよっていた。ネオンに誘われるように表通りへと移動する。



 表通りは大きなオレンジ色のカボチャがあちこちに置いてあり、ガイコツやお化けのオブジェが店頭に飾られている。マントや仮面をかぶり、コスチュームに身を包んだ人間たちが楽しそうに歩いている。


 

 お祭り騒ぎの街とはしゃぐ人間たちを見てボクは通りに出るのを躊躇した。彼らに踏みつぶされてしまうんじゃないかって怖かったけど、ボクは勇気をだして通りに飛び出したが案の定人間にぶつかってしまった。ボクはよろめいてしまった。



「わ、なんだ……この犬は……」



「あぶねぇな、車にひかれちまうぞ」



 ボクは驚いて慌てて路地裏へと逃げ込んだ。



    ***



 ボクは兄弟を探していた。


 ほんの少し前までボクたちは母さんの胸に飛び込んで一心不乱にミルクを飲んでいたのに、今のボクはひとりぼっちだった。



(どこへ行ったんだよ、皆一緒にいたじゃないか。母さんはどこ? 兄弟たちは?)



 覚えているのは皆バラバラになってしまったことだ。

 


「変わった犬だな。こんなの売れるのか?」



「赤のSHIBAだ。最近アメリカでもこの種類は人気があるんだぜ」



 僕たちはブリーダーたちの手によって引き離され、どこかへ連れて行かれた。幸か不幸かボクは彼らの元から逃げ出すことができた。どうやってNYに来たのかは覚えていない。



 人混みを避けるようにボクは路地裏に入った。薄暗くてなんだか埃っぽい。でも人がいない分、ボクにとっては安全だった。何よりも人間が捨てた食べ物の残りや隠れ家がたくさんあった。



 ボクは路地裏に身を潜めて数日間過ごしていた。でもここも安全とは限らない。ボクより何倍も大きな体の獰猛なボス犬や食べ物をうばうカラス、酔っぱらった人間…… いつ危険な目にあうかわからないのでボクはビクビクしていた。



 母さんたちと過ごしていた家に帰りたかった。でもあの家に帰るのは難しいだろう。



(兄さんや弟たちは? みんな、どこにいるんだ?)



 兄弟のことを思い出し、ボクは悲しくなった。




    ***



 ある夜、喉が渇いたので飲み水を探すためにボクは路地裏に出た。ここはダウンタウンという場所らしい。表通りを歩く人間たちよりも少し印象が違う。キョロキョロと周りを見渡し、人がいないことを確認して移動しはじめた。



 飲食店の裏口に食べ物と飲み物があるかもしれない。その時、フラフラと路地裏を千鳥足で歩く男が現れた。



「ウエェ~飲みすぎた!」



 男は雑居ビルの壁に手をつき、げろげろと吐きだした。目はすわり、顔も赤くて嫌なにおいがする。ボクはその男と目があってしまった。



「なんだ、このチビこい犬は? おい、こっちへこいよ」



 男はボクに手を振る。冗談じゃない、こんなヤバそうな男の傍になんかいけるものか。後ろずさると男は苛立って壁を蹴りはじめた。



「なんだよ、このクソ犬!」



 ボクは慌てて後ろに走りだした。男はボクに向かって石を投げつけた。


「――キャン!」(痛い!)



 背中に刺すような痛みを感じ、ボクはよろけた。しかしここで立ち止まると死ぬかもしれない。ボクは一心不乱に走った。



 気がつけばプールバーの裏口に逃げ込んでいた。さっきの男が投げた石がボクの背中に当たったようだ。疲労と痛み、喉の渇きがボクを襲う。



「クウゥン――」(母さん……)



 母さんに会いたい、怖い、逃げたい。うずくまっていると、プールバーの裏口が開いた。中から何人かの少年たちが出てきたが、ボクは逃げる気すらなくしていた。またいじめられるかもしれないが、もうどうでもいいとボクは絶望していた。



「なんだあれ……モグラか?」



 そのうちの一人がボクに気付き、ゆっくりとボクの元に駆け寄ってきた。



「犬? 死んでるのか?」



 ボクをのぞきこんだのは黒人の小さな子どもだ。



「スキップ――そんなの放っておけよ。俺はさきにいくぜ」



「あぁ…やっぱり死んでいるのかな? 動かないし……」



 黒人の子どもは僕が気になるようだが、触るのが怖いようだった。その時、裏口からもう一人の少年が現れた。



「――ボス!」



「どうした、スキップ?」



「あそこ―― 子犬が死んでるみたいだ。酔っ払いにやられたのかも」



「子犬?」



 少年がボクをのぞきこんだ。何かされるんじゃないかって怖くてボクはじっとしていた。少年はそっと僕の喉に触れた。



「――」



 彼はしばらく黙ってボクを見ていた。突然ふわりとボクの体が浮いた。少年は両手でボクを抱えていた。



(温かい……)



 冷たい地面から温かい手のひらに移動したボクは母さんのことを思い出した。



「ボス、どう?」



「……まだ生きている」



 彼はボクを抱えて歩き始めた。



<続>


 ハロウィン創作クロウビー8、今日からはじまりましたよ。第一話はアッシュと子犬(柴犬)犬の出会いです。

アメリカやヨーロッパの一部の人たちにも柴犬は人気……とネットで調べていて見たのですが、本当なのでしょうか?


さぁ、アッシュに拾われた子犬はどうなるのでしょう。このままハロウィンハロウィンベアまで(今月末まで)連載予定ですコウモリ2。どうぞお付き合いくださいませ♪



 今日はこの後二回目の更新(お知らせ)をしますね。


もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM


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