シンの戸惑いと憧れ   第二話:戸惑い | BANANAFISH DREAM

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 英二のことを知るにつれ、気がつけば――シンは目で彼を追っていた。



「……」



 これまではアッシュの冷酷と思えるほどの強さ、賢さ、リーダーシップとカリスマ性に関心を抱き、何とかアッシュに追い付きたい――そしていつかは追い越したいと思っていた。それなのに今はそのアッシュの横にいる英二が気になってしかたない。



(単に……英二に興味をもっただけ、なんだよな?)



 自分の気持ちがよく分からなかった。


 

  ***



 まだ体調が万全ではないシンの為に、英二がおかゆを作ってくれた。
 


 味のしっかりついた中華粥とは異なり、日本風お粥はとろりとして消化によく、弱ったシンの身体にはちょうど良かった。



「熱いからよく冷まして食べろよ。体調の悪い時は『おかゆ』が一番だよ」


 

「――うん、日本風のおかゆもなかなかいけるじゃんか」



 そう言うと嬉しそうに英二は「そうだろう?」と笑い、リンクス達にもおかゆをふるまった。だが繊細な味を理解できない “味音痴” な彼らはみな微妙な表情だった。



「まぁ……珍しいっていうか……はじめて食べる味だなぁ――」



「あぁ――変わってるなぁ……でも不味いってわけじゃないぜ」



 英二に気をつかっている彼らの様子を見てシンは内心思う。



(こいつら……一応、英二に気をつかっているんだな。もし英二以外の奴がこのおかゆを作っていたら即座に『不味い!』って文句を言ってるだろうな)



「……気にすんなよ。君たちには何か他のものを持ってくるよ――」



 下手くそなフォローに少々ムッとする英二を見たシンは、胸が少し痛むと同時に英二のことを励ましたくなった。



(せっかく英二が作ったのに……食わせた連中が悪かったんだな)



「英二、気にすんなよ。こいつらは味音痴なんだから、何食わしても一緒だぜ。ケチャップとビタミンでも食わしときな」



 皮肉たっぷりに嫌みを言いながら シンはニヤッと笑う。



「悪かったなぁ、味音痴でよぉ――」



「どうせ俺らには分からねぇよ――」



 文句をたれるリンクス達を無視してシンはおかゆをかきこんだ。



「……英二、おかわりをくれ!」



 勢いよく皿を英二に渡した。



「あ、あぁ……いれてくるよ。そうだ、フライドポテトがまだ残ってたな――君たち、食べるかい?」



 場の雰囲気が悪くならないよう、英二はシンにもリンクス達にも気をつかう。



「食う、食う!たのむぜ、英二」



「ケチャップも持ってきてくれ!」



 おかゆの入った器を置いて、満面の笑顔でポテトを求めるリンクス達を見て、シンは呆れて言う。



「何だよ、お前らやっぱりケチャップで十分じゃねぇか」



 その言葉に気を悪くしたリンクス達は、



「……チッ」



「何だよ、偉そうに――」


 

 と、ぶつぶつ言っている。


 
 シンは全く気にせず無視しているが、英二は内心ハラハラしていた。



(おーい、喧嘩しないでくれよ……)



「は、ははは…… 君たち、落ち着いて……」



 冷や汗を流れるのを英二は感じる。



 その時、ずっとパソコンに向かって調べ物をしていたアッシュが口を開いた。



「――オカユはうまいぜ」



 ボスの一声でリンクス達はハッと冷静になった。



「――アッシュ?」



 英二が振り向いた。



「俺はネギとカツオブシが入ったのが好きだな」



 ボスであるアッシュの言葉は絶対だ。彼が 『オカユはうまい』 と言った時点でリンクス達はオカユを否定できなくなった。



 アッシュの言葉に英二は嬉しそうに、



「やっぱりそう? 」


 と言ってニコニコ笑っている。



 シンは今日のおかゆにはネギとカツオブシは入っていないことを思い出していた。



(アッシュは英二に色々な種類のお粥を作ってもらっているのか……)



 二人は一緒に生活をしていたのだから当然料理を作ってもらうことは多々あっただろうが、こうして実際に話を聞くと少し複雑だった。それと同時にアッシュへの対抗意識も芽生えてくる。



「英二、お前が作ったオカユ――もしまだ残っていたら、俺にもくれよ」



 アッシュはパソコンに向かったまま英二に言った。



「わかった。今すぐ持ってくるよ」



 とびきりの笑顔を見せながら英二は走って部屋を出て行った。



<続>



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原作の 「オカユ」を食べるシーンも入れちゃいました(笑)。