【クリスマス特別創作】 第三話:ハプニング続出! | BANANAFISH DREAM

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(c) .foto project


 

 会場ではメインイベントの『プレゼント交換』が始まっていた。



 英二が考えた企画で、3大グループの交流をはかるために参加者全員が何かしらプレゼントを用意することになっていた。



 値段や内容は各自の自由で、店で購入する必要もない。パーティー会場に入場する際に全員が数字が書かれたくじを受け取っていた。



 会場内は異常に盛り上がっている。皆、ボスや幹部たちのプレゼントを狙っているのだ。 はじめは「面倒くさい」と言っていたが、始まってみると結構ノリノリで楽しみにしているようだ。



「なぁコング、お前はプレゼント何を買ったんだ?」



「俺か? 俺はドーナツの詰め合わせだ。ボーンズ、お前は?」



「あぁ、12色のチューイングガムだ。ボスのプレゼントが気になるな――」



「ほんとだよな。あ、ショーターだ。始まるみたいだぞ――」



 舞台にマイクを持った黒いサンタ――悪サンタのショーターが現れた。



「お前ら――待たせたな!じゃぁ、そろそろ目玉の『プレゼント交換』するぞ――」



「イエ――ッ!!」



 ショーターの掛け声と共にメインイベントが始まった。



「じゃぁ、まず俺様、ショーター・ウォンのプレゼントを受け取るのは……『15番!』 」



「――あ! 俺だ!――ハイハイ~♪ プレゼントって何だろう?」



 リンクスの子分が嬉しそうにプレゼントを受け取りに行った。どんなプレゼントなのかワクワクしながら箱をあけると、Tシャツが数枚と月餅が入っていた。



「おい、お前……そのTシャツを広げてみろよ」



「そうだな」



 Tシャツには『ヘタレ野郎』『曲者』『あかんたれ』と日本語で書かれていたが、日本語の分からない子分は嬉しそうに、



「これ、早速彼女の前で着るよ」



 と、嬉しそうに笑っている。



「次は……ケイン・ブラッドのプレゼントだ」



「おー!すげぇ、あのケインのプレゼントって何だ?」



「ちょっと興味あるよな。あたったら自慢になるぞ」



 会場内はざわめき、興奮が伝わってきた。



「87番はいるか――? 当たったぞ!」



 すると、シンが 「俺!当たったよ!」 と手を挙げた。シンがプレゼントを受け取り、箱を開けると クラッカー音と共にキラキラ光るラメとピエロのおもちゃが飛び出してきた。



「うわっ! 何だこれ!驚かすなよ――」



 しゃがみこんでシンは叫ぶ。その様子を見たストリートキッズ達は大笑いしている。



「ちぇっ――」



 不満そうにふてくされるシンに、ケインが「これもおまけだ」と言ってもうひとつプレゼントを渡した。



(また変なものか?)



 怖々中身をあけると、女性用の下着が大量に入っていた。



「オンナにプレゼントしてやれよ。クリスマスだし、ホットな夜を過ごせよな」



「……」



 きわどい下着を茫然と見ているシンを置きざりにして、ニヤリと笑いながらケインは去って行った。



(英二、大丈夫かな……)



 アッシュはイライラしながらメインイベントの盛り上がりを見ていた。このイベントが終わるまではこの場にいないといけない。



(早く終われよな――)



 不機嫌そうに酒を飲んでいると、ショーターの声が聞こえてきた。



「次は――アッシュ・リンクスからのプレゼントだ!」



「おぉー!!あのアッシュからのプレゼントだって」



「俺、ほしいな――」



「 『100番』 はいるか? 当たったぞ――」



「あ、俺だ――やった! あのアッシュのプレゼントだ!」



 ブラックの子分――恐らくまだ新人であろう――がプレゼントを受け取る。



(そういえば、英二にまかせたままだったな――アイツ、何にしたんだ?)



 先ほどまで無関心だったが、英二が用意したプレゼントが気になった。



「おぉ――すげぇ! 」



 それはアッシュのスナップ写真をまとめたアルバム集だった。着替え中、寝起きの写真まで入っている。
 

「謎だったアッシュの私生活が写ってるぜ――これは自慢になるな」



 興奮しながら子分は仲間に写真を見せている。



(英二! 自分の写真をプレゼントするなんておかしいだろ? とんでもなく自意識過剰じゃねぇか!)


 アッシュは茫然としていた。




    ***



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 ようやくメインイベントも終わり、アッシュは急いで控室へと向かった。すると先ほどアッシュの写真集を当てたブラックの子分がアッシュを見つけ、興奮して手をふりながら近づいてきた。



「おーいアッシュ! あんたの写真集すげぇイカしてるぜ! ついでにサインしてくれよ」



(ちっ、面倒くせぇ……俺は早く英二の元に行きたいのに!)



 気づかないふりをしてアッシュは走って控室に入った。英二は窓ガラスに頬を当てて火照った頬を冷やしていた。表情はぼんやりしている。



「英二、お前何やってるんだ? それにボーンズはどうした?」



「あぁ……ここから街の様子が見えるんだ……クリスマスの景色や空気を感じたくてさ……ボーンズは僕の為に薬を買ってきてくれたんだ。おかげで随分良くなったよ――だから会場へ戻るように言ったんだ。彼、メインイベントを楽しみにしていたからね」



 ボーンズをかばう英二の優しさにアッシュは感心した。



(ボーンズめ、英二に感謝しろよな……)



「英二……。そうだよな、こんなシケた部屋で大人しく寝るだなんて、つまらねぇよな」



「体調は随分よくなったよ。ちょっと疲れただけだって。この後の君とのディナー、楽しみだよ」



 そう言って英二は笑う。その時、控室の外から声がした。



「アッシュはどこだ? 絶対にサインもらいてぇよ―― 」



「控室かな? とりあえず入ってみるか?」



(またかよ……)



 アッシュは呆れてため息をついた。ドアをノックする音が聞こえた。



「アッシュ! この中に入って! 僕がなんとかごまかすから……」
 


 英二がアッシュをかばおうと立ちあがり、更衣室のロッカーの扉をあけた。そこは舞台用ドレスを収納するやや大きめのロッカーだった。 



「え? おいおい……この中かよ?」



 アッシュはロッカーの中を指さした。



「いーから、早く!」



 英二は戸惑うアッシュを無理やりロッカーの中に押し込み、答えた。



「どうぞ――」



 ドアが開き、ブラックのメンバーが顔をだした。



「あれ―? さっきアッシュ・リンクスを見かけたんだけどなぁ――」



「彼ならさっきショーターといるところを見たよ」



「そうか――ありがとさん――」



 そう言って彼らは控室を出て行った。



「ふ――っ」



 アッシュはロッカーから顔だけを出した。



「危ないところだったな」



「僕もやっぱり会場へ行くよ」



 そう言って英二はトナカイの帽子をかぶった。



「おいおい―― 無理するなって。もうメインイベントは終わったから俺がここで着いているって――」



 しかし、また誰かがドアをノックしてドアを開けた。アッシュは慌ててロッカーに身を隠したが、こちらが返事をする前にドアが開いてしまい、ロッカーの扉は開いたままだった。



 英二はアッシュを隠すようにロッカーの扉の前に立った。トナカイの角が生えた帽子でうまくアッシュの頭を隠そうとした。



 部屋に入ってきたのはブラックのメンバーだった。彼はヘッドホンを耳にあてて大音量で音楽を聞いている。手にはブランデーのボトルを手にしていて、随分酔っぱらっているようだった。



「あれれ~? 部屋を間違えたか? ここはアッシュ・リンクスの控室だなぁ―― あん?何だあの動物みたいなのは……」


 酔っぱらっているその男は、英二の方をじっとみて近づいてきた。



(何だよ、こいつ……めちゃくちゃ酔ってんじゃん! )



 彼は茫然と立ち尽くすトナカイ英二を見た。英二は必死に背伸びをして、アッシュを背後にかばいながら曖昧な笑顔を浮かべる。



「や……やぁ」


「何だお前?」



 英二の眼の前にまで来て、男は叫びだした。



「お前……なんだそれ? ツノが生えていやがる……俺は化け物とか尖ったモンが嫌いなんだよ! あっちへ行けっ!」

 

 酔っぱらっている男は英二の胸をドンッと押した。その勢いで英二は後ろ向きにロッカーに押し込まれた。



「――な、何だ?」



 ロッカーに押し込まれてきた英二をアッシュは驚いて受け止めた。



「よし、化け物を退治したぞ!イエーッ♪」



 男はロッカーの扉を閉めた。



「おい、開けろ!」


 

 ヘッドホンからの大音量の音楽で、男にはこちらの声が聞こえない。男は更にロッカーに鍵をかけ、その鍵を控室のテーブルの上に放り投げて、去っていった。



「――おい、どういうことだ……?」



「――僕たち、閉じ込められたみたい……」



<続> 次回最終回です。


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プレゼント交換、楽しそうですよね。子供の時によくやったなぁ。皆さま、プレゼントはどうしましたか?


ロッカーに閉じ込められたアッシュと英二……どうなるのでしょうか?

次回をお楽しみに……。