使えないヤツら。 | 白ヤギさんのアナログめぇ~る。

使えないヤツら。


日曜の昼過ぎ、テレビをボーッと見ていたら

夫が何か叫んでいるのが聞こえた。

てっきり私に話しかけてるのだと思い、

「何?何て?」

と返事をした。しばらくたっても返答がない。



また叫んでいる。

もー、鬱陶しい。用があるならこっちへ来い!と思いながらも、

皆さんお分りのように良妻ですから、こちらから歩み寄っていった。


「何か言った?」


「シーッ!シーッ!(静かにしろの意)」 「デジ オープン!」




夫は私に話しかけていたんじゃない。

コイツにずーっと命令していたのだ。

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去年の夏、夫がネットで一目ぼれして、

はるばる香港からやって来た「モトローラE680」

香港出身ということで、以下(ブルース・)リーと呼ぶ。

リーは高機能、高性能で夫のハートを鷲掴みにしていた。


例えば、

●ゲームができる

●動画が撮れて見ることができる

●タッチパネルで操作できる

●音声認識システムが搭載されている


などなど、日本人の私からしたら別に普通じゃんと思うのだが、

アメリカの携帯は日本より遅れているので、自慢しいの夫は

飛びついてしまったのだ。



リーが無事到着し、焦る気持ちを抑えながらパッケージを開ける夫。

リーを一通り眺め、「カッコイー!カッコイー!」を連発しながら、

付属品や取扱い説明書を取り出す。



説明書をめくる夫。

めくってもめくっても英語が出てこない。

徹頭徹尾、中国語で書かれていたのだ。


「Ohh No....」


夫の顔からは、さっきまでの喜びの笑みが消えていた。

メモリーチップをはめ込み、電源をオンにする。

ゲーム以外は英語表示ができた。

はっきり言うと、夫はゲームがどこでもできるというところに惹かれて

買ったようなものだ。



「これどういう意味?」


日本でも漢字を使うので、私にも中国漢字が分かると思っている。


「さぁ、分からん」


「じゃーこれは?」 「これは分かるでしょ?」 


開始と終了は理解できるが、ゲームの仕方はさっぱり分からない。

ネットの翻訳ソフトで調べてよと言われたが、そんなの読み方が

分からないのに、入力できるわけがない。

それでも、ボタンを押してゲームをしている。カッコだけだとモロ分かる。

せっかくサイトで英語の説明書をダウンロードしてあげたのに、

夫は説明書を読むのがキライ。いじくりながら使うタイプだ。



音声認識もほとんどされない。

何度となく「call dad!(パパに電話)」と繰り返すが、

「see homepage(ホームページを見てくれ)」と返ってくる。

リーは夫を小バカにしてるようだ。
大バカな夫はそれでも絶賛していた。




翌日から、夫はリーを連れ回した。

ショッピングモールの携帯ショップに入る。


「また新しいの買う気か?」


妻は発狂寸前だ!


「見るだけ。買わないよ」


店員さんが接客に来る。

夫は何やら最新商品を指差し、機能について聞いたようだ。

店員さんは懇切丁寧に説明してくれた。


この時点で妻には夫の企みが読めていた。



「うーん、僕の携帯の方が断然いいな。

 ちょっと見て。昨日香港から取り寄せたんだけど...」



そういって、リーを最高のタイミングで披露する。

全てはリーを引き立たすための演出。

タッチパネルだのカメラがついてるだのゲームもできるだの

得意になって説明している。ハタから見たら、夫の方が店員だ。


本物の店員さんは、一見関心を示してるように見えるが、

目が冷めている。変なのにつかまったと目が訴えてる。

リーにベタ惚れの夫は、そんなのお構いなしだ。

リーがいかに優れているかを一方的に語っている。

GOismな態度とリー好きな(だった!?)ところがまるでこの人だ。

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妻は空気がだんだん悪くなるのを感じ、さっさと店内を後にした。



しばらく、夫のリー熱は冷めなかった。

お隣さんにわざわざ見せびらかしに行ったり、レストランで料理を待ってる間

リーでゲームしたりと、妻を無視して至る所でリーと戯れていた。




しかし、去年の暮れ頃だっただろうか?


リーは使いづらいから、元のを使う」


夫が突然、リーとの絶好宣言を言い放した。



「あっそ。あんなに気に入ってたのにね。どこが使いづらいの?」


「横にデカイのがイヤだ。それにほとんど要らない機能ばかりだし」



今更何言うか!それが好きで買ったんじゃないか!

呆れてモノも言えない。ハイハイと適当に流して、放っておいた。



都合よく、元々使用してたT-mobileの携帯に再び乗り換えた夫。

それなのに、突然リー熱が再発したのだ。


「call chama mobile! (ちゃまーの携帯に電話!)」

「call mom(ママに電話)」


さっきからこれをアホほど繰り返している。

夫の口調がだんだん荒くなってきた。

ちゃまーの携帯に電話するのを諦めて、


「call dad mobile! (パパの携帯に電話!)」
に切り替えた。


「call chama mobile(ちゃまーの携帯に電話)」



笑えて笑えてしょうがない。

利口すぎてイカレてるボケ役のリーに、ほとほと手を焼いてるツッコミ役の

まるで漫才の掛け合いだ。


私が楽しむ分にはいいんだけど、これを外でやられると困る。





どなたか、使えない彼らを止めてくれませんかねぇ?