社交ダンスファンの中には「ダンスはスポーツだ。」と断定的に言う人がいます。
私は以前から「変なことを言うなあ~」と思っていました。

確かにスポーツとしても楽しめる面もありますが、それはあくまで一面に過ぎません。
人と優劣を競うことがあるからと言って、
「カルタはスポーツだ。」「釣りはスポーツだ。」「歩くことはスポーツだ」
「射撃はスポーツだ。」「そろばんはスポーツだ。」「会社での出世競争はスポーツだ。」・・・
などと断定する人は少ないんじゃないでしょうか。


たぶん、ダンスはスポーツである、と思う人は、社交ダンスの一面、つまりダンス・スポーツだけを見てそう思っているのでしょう。
木を見て森を見ず、ってこういうことかもしれません。


では、ダンスとは何でしょうか。
私はダンスは歌唱や楽器演奏と並ぶ音楽の表現方法の一つだと思っています。
インド舞踊の指導者が「ダンスとは見るリズムである。」と言っていましたが、言いえて妙です。


日本のバレエの草分けである、牧阿佐美さんも、その著書のなかで、このように言っています。

「ダンスの90%以上は音楽なのです。舞踏は音楽以上の音楽。
 踊るということは、音楽が身体の中を通って新たに生まれてくる瞬間に立ち会うことです。
 音楽が身体のなかを通って新たに生まれてくる、ということは、身体が音楽と戯れる、ということなのです。
 戯れることによって音楽が新しく生まれてくるのです。
 それでは、戯れるとはどういうことでしょうか。
 まず、身体の中に正確なテンポを示すメトロノームをしっかりと保持することが絶対に必要です。
 次に身体の実際の動きをそれよりも速くしたり、遅くしたりすることによって
 動きの全体にアクセントをつけることです。」


音楽は人の心に安らぎを与え、人間関係を円滑にします。
時々、ダンス会場でけんかしているカップルや他人に対して闘争心むき出しの人を見ることがありますが、
ダンスとケンカや闘争心はあまりそぐわないような気がします。