September 3, 2011 Hawks at Lions | Peanuts & Crackerjack

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$ピーナッツとクラッカージャック-20110903


今日はクリさんの誕生日、そしてヤスさんの復帰戦と
ゲーム当初から非常に球場全体が素晴らしい昂揚感に包まれたゲームでしたが

結局、終盤に観客がグラウンドへ履物を投げ入れる事件に象徴されるように
ライオンズにとって散々な、屈辱的な敗戦となりました。

 ★Tips 1 : 今日の岸さん、ストライク率は57%、2/3を大きく下回る物足りない成績でした。

         25度の打者との勝負のうち2ボールまでいったのがのべ14度、
         3ボールまでいったのがのべ5度、そして四球4で1ボール以内での勝負が44%、

         制球が思うように定まらず苦しい勝負が続き四球を4つ許すとともに
         相手打者たちに速球とカーヴの2択に簡単に球種を絞られ痛打を数多く浴び

         結局4.2イニングを投げて自責点7という非常に悔しい投球となりました。

         岸さんは、今シーズンもここまで9イニングあたり約8個の三振を奪っているように
         本来、本格派エースの素晴らしい投球をじゅうぶんに魅せてくれる投手です。

         ただ、その投球は速球カーヴ、そしてチェンジアップといった
         3つの素晴らしいout pitch(勝負球)を思い通りに駆使できることが前提。

         その3つの素晴らしい球種があるからこそ
         本来球種の少ない岸さんであっても三振を数多く奪いながら相手攻撃陣を圧倒できる
         
         本格派エースの素晴らしい投球ができていたといってもいいでしょう。
         
         本来本格派エースとはその典型的な例でいえば、ホークスの杉内投手や和田投手の投球のように
         その投球の基本、土台、軸はその数少ない球種ながらもその球種を複数、勝負球レベルまで引き上げ

         それをどれも欠かすことなく、じゅうぶんに制球し駆使することができる投手のことで

         昨日の杉内投手の曲がりすぎるスライダーを見てもわかるように
         その勝負球のうち1つでも思うように駆使することができなければ
         途端に非常に苦しい投球を強いられ、大量失点を喫するものなのですから

         稀にそういった勝負球を思い通りに駆使できないゲームがあったとしても
         それでも自分の勝負球たちを不器用に信じ続け、投げ続け、磨き続けていくことで

         そういった勝負球たちを駆使できないゲームをいかにして減らしていくか
         本格派エースが長年にわたって継続して素晴らしい投球を、成績を残してくため

         決して避けて通ることのできない、唯一無二の“王道”であるといえるでしょう。

         今シーズンの岸さんに戻りますが(※兆候はもう少し前からもありましたが)
         今シーズン初めからの四死球率・本塁打率の高さに如実に現れる苦しい投球は

         1にも2にもチェンジアップの精度、制球が以前のように思うようなものではなく
         勝負球としてじゅうぶんに自信を持ってなかなか駆使できないことにあるでしょう。

         速球カーヴは非常に素晴らしい“勝負球”として駆使できるものの
         球種が少ないだけに、打者の選択肢が3つから2つに減少するということは

         狙い打ちをされやすくなり、本塁打を含めた痛打を浴びやすくなるとともに
         その狙い打ちを恐れ、ゾーンの隅をかすめる針の穴を通すかのような制球を求め
         結果微妙に逸れ、四球を数多く与えることにもつながっていきます。

         そこで、岸さんは相手打者の狙いを分散させるために
         昨シーズン途中あたりからスライダーを本格的に交え始めるとともに

         今シーズンの四死球率・本塁打率の高さが際立って改善点として浮上してくると
         よりその速球の制球をあげるため、本来の速球ではなく抑えた速球
         駆使していくという戦術をとるようになります。

         ただ、スライダーは打者の目先を“かわす”球種として有効なものの
         結局は勝負球として駆使できるレベルのものではなく、

         また本来の速球ではなく抑えた速球を数多く投げることで
         岸さんは自ら自分の持てる勝負球をカーヴ1つだけに減らしてしまうこととなり

         結論から言えば、この戦術は一時的に相手攻撃陣を“かわす”ことはできても
         そうやって逃げてかわすだけでは継続して素晴らしい成績を残すことは難しく

         意図を早々に見抜かれ、相手攻撃陣に優位に立たれ痛打を数多く浴びる
         苦しい投球は変わらないまま、いやむしろ悪化したといっていいものでした。

         そこで、前々回登板のマリーンズ戦でようやく
         制球を重視しすぎるがあまりに抑えた速球に頼るのではなく

         やはり岸さんは“勝負球”として利用できる本来の速球をどんどん駆使し
         緩急を駆使することによってこそ、その本来の投球を取り戻すことにつながること、

         ここに気づき、以降前回登板・そして今日と
         常時腕を振ってどんどんとゾーンに大胆にその最高のスピードとスピンをもつ
         本来の“勝負球”の速球を投げ込んでいくようになったものの

         やはり、まだまだチェンジアップが思うように駆使できていないことは改善できず
         今シーズン当初からの四死球率・本塁打率の高さがまた目立つようになりましたね。

         ひとつ確かなことは、今シーズン中盤の
         抑えた速球を駆使しつつ針の穴を通すかのような制球で
         なんとか逃げてかわそうという投球、という最悪の時期は脱しており

         岸さんが身をもってそれが失敗だと皮膚感覚として理解しているでしょうから
         同じ轍を踏むことは二度とないだろう、ということ。

         そして、岸さんがその本格派エースとしての素晴らしい投球を取り戻すためには

         第3の勝負球としてのチェンジアップを思い通りに駆使できるようになること

         これ以外に道はないことも確かでしょう。

         例えばフォークやスライダーを勝負球レベルまで磨くことも考えられますが
         スライダーはカーヴと曲がる方向が同じですし、

         フォークなどに関しても時間をかけて1から磨くのであれば
         過去素晴らしい実績を残してきたチェンジアップに徹底的に拘るほうが現実的。

         一時、近道をしようとしてなおのこと深みにはまった岸さんですが
         既にその泥の深みからは脱したことは確かなのですから

         まだまだ苦しい投球が続き、迷いそうになり弱気の虫がうずき
         目の前の結果をどうしても求めもがきそうになろうとも

         今後は徹底的にチェンジアップを修正し、改善することに迷わずに徹し
         以前のようにどんな場面でも3つ目の勝負球として駆使できるように

         少しずつ、少しずつ試行錯誤と工夫とを積み重ねていってほしいと思います。

 ★Tips 2 : 今日のライオンズ攻撃陣は得点圏にランナーを置いての打席は計13度、
         その内訳は 3-11(うち本塁打1、三振1)、四球1・死球1で得点圏に残塁5、得点5。

         今日は10安打・3四球・1死球で出塁は14、失策による出塁3・野手選択による出塁1を加えた
         その全18人のランナーの行方は残塁9、二塁封殺2(うち併殺打によるもの1)で得点7という結果でした。

         今日も先頭打者として9球を費やさせた後出塁したクリさん、そして
         2回にフルカウントからの7球目をとらえ二塁打にするなど
         5打席で計28球を費やさせたナカジさんをはじめ

         ライオンズ攻撃陣は数多く忍耐強く闘う打席を魅せ、
         数多くの出塁を奪い数多くの得点を奪うことに成功したゲームでした。

         大量ビハインドの9回2アウトであろうとも、いかなる状況であろうとも
         まったく変わらずに攻撃の基本はとにかく出塁を1つ1つ積み重ねていくことなのですから

         今後も迷ったり落ち込んだりすることなく
         とにかく出塁することだけに徹底的に集中し続けてほしいですね。

 ★Tips 3 : 今日のゲームの敗戦はもちろん
         先発投手の役割を果たせなかった岸さんの担うべきものですが

         もうひとつ見逃すことのできないのは、両チームの救援陣の成績と

         そしてそこから浮かび上がるブルペン陣の整備に対する
         両チームの首脳陣、そして編成陣の考え方の違いだろうと思います。

         ライオンズ投手陣の編成は一言でいえばある意味伝統的な
         【先発投手-セットアップ・マン-クローザー】という
         いわゆる“勝利の方程式”と呼ばれるスタイルに未だにこだわるもの、

         逆にホークス投手陣の編成は既にその段階から一歩も二歩も進んで
         (※ファイターズも既にそうであり、またイーグルスも現在そこに近づきつつあります)

         【先発投手-クローザーにひけをとらない優秀なリリーフ・エース群-クローザー】

         こういったスタイルで、考え方で投手陣をとらえ、編成していると評価できます。

         ここには6回、いや7回までは最低限先発投手のイニングという
         ライオンズ首脳陣・編成陣の考え方があり、それに応えてきた
         優秀なライオンズ先発投手陣というライオンズのチーム事情があり

         逆に5回もしくは6回100球程度でどうしても代えざるを得ない先発投手を複数抱え
         初めはセットアップ・マンやクローザーに過剰な負担を強いていたものの

         その彼らにかかる過度の負担という課題を克服するため、
         少人数の非常に優秀なセットアップ・マンやクローザーだけに頼りすぎ満足することなく

         次々とトレードや補強を繰り返し、また手持ちの若い優秀な才能を
         惜しむことなくどんどんとリリーフ陣につぎ込んでいき整備していった

         ホークスやファイターズ、そしてイーグルスといった球団のチーム事情、
         そして首脳陣・編成陣の考え方の差が如実に表れています。

         確かに、セットアップ・マンクローザー
         ゲームを逆算し、勝利を計算できるため

         先発投手を含めたその前の投手が安心して、信頼して
         今自分が対面している打者との勝負に最大限集中するために必要不可欠ですが

         それと同じように、今日のような先発投手が大量失点を喫しつつ
         それでも僅差の場面でランナーを数多く残して早々にマウンドを降りた時や

         終盤の“勝利の方程式”が使えない僅差の特にビハインドの場面で
         先発投手がランナーを残してマウンドを降りた時などに
         その緊迫の場面を信頼して任すことができ、結果を継続して残すことのできる

         セットアップ・マンやクローザーと同じように優秀な、いや
         どちらかといえば彼らよりも優秀であるリリーフ・エースたち

         チームが1つ1つ勝利をもぎ取り、積み重ねていくためには
         編成上、欠かすことのできない人材ではないでしょうか。

         今日のホークスの藤岡投手-Brazoban投手-吉川投手-森福投手-金澤投手の継投と
         ライオンズの星野さん-長田さん-木村さん-篤志さんの継投とは

         補強やトレードで血の入れ替えを活発にし、数多くのリリーフ・エースたちを台頭させ
         終盤のイニングだけでなく状況に応じて早め早めに
         優秀な彼らをつぎ込んでいき、未然に失点を防ぎ続けたホークス

         かたや手持ちの失敗を繰り返す生え抜き中堅投手たちにこだわり、
         最大の弱点と明らかになってずいぶん長い月日がたつにもかかわらず

         率先してどのチームよりも激しい再編を繰り返すこともなく
         未だに先発投手や、そして“勝利の方程式”として圧倒的な成績を残す
         少数のセットアップ・マンやクローザーにおんぶにだっこ、頼りきりで

         彼らが思うような投球をできなかったり、故障で戦線離脱すると
         とたんに屈辱的な敗戦を数多く喫するようになり、成績も低下するライオンズという

         対照的なチーム編成が明確になったゲームでした。

         もちろん、ライオンズ首脳陣・編成陣の手腕・考え方には数多く高く評価する点があるものの

         それでも、未だに【先発投手-“勝利の方程式”】スタイルにこだわり続け
         いつまでたってもその数人の投手だけに寄りかかってムリをさせ

         結局は基本的な問題解決には至らずに既に長い年月が過ぎているということは
         大きくその考え方自体から変革し、首脳陣のみならずもちろん編成陣も
         大きく反省し、今日からでも改善すべきではないでしょうか。

         ライオンズにも、それが生え抜きの選手であろうがなかろうがこだわることなく
         一日でも早く数多くの“リリーフ・エース”たちが台頭し、活躍することを、

         そしてその前提としての編成陣・首脳陣によるリリーフ陣に対する大きな発想転換と
         そして大胆なリリーフ陣の整備とを切に、切に心から願います。



         最後に、MLBはSabermetricsにおいてのこのようなリリーフ陣の整備は
         従来型のset-up man/closer plan(いわゆる“勝利の方程式”)よりも

         ゲームの勝利をもぎ取るために、そして失点を防いでいくために重要だとして
         "Saber Bullpen"として定義されておりますので、ご紹介します。

         The saber prescription for the bullpen seems clear :

         identify your best relievers based on their component skills
         and use them in the right matchups according to their handedness and arsenal.

         Ignore the inning and instead use your best pitcher in the highest leverage moment.

         Basically, have a relief ace who pitches in the most important moment in the game
         — and then find role players to fill in the blanks.


         --- Ozzie Guillen's Saber Bullpen  by Eno Sarris on FanGraphs ---