野球は“筋書きのないドラマ”と言われます。
もちろん野球に限ったことではなくどんなスポーツでも
そしてもちろん私たちの日常においても
ひとが何とか自分のいまと未来を
自分が願い、期待する通りにコントロールしようし
多くの人が長年かけて様々な経験論と分析を積み重ね
そのシステムが高度化していけばいくほど
その願いに反して、またある時は予想もしない所へと
自分の、自分たちのいまと未来が進んでしまうことも
決して稀ではありません。
野球でいえばそれを多くの人が“流れ”と表現します。
私はこの“流れ”という概念は
これまで何度も考察してきたとおり
ゲームの勝敗において大きな影響を及ぼす
自分たちひとりひとりの力の及ばない
言うならば“運”の要素を何とかせめて
自分たちの理解・対応できうる範囲にしたい、
そんなひとの願いや恐れから産まれた
すばらしく“現実的な”お題目なのだと思います。
しかし、そのお題目はすばらしく“現実的”、
つまりは言いかえると“その場しのぎ”の精神安定剤で
今や現代における“神話”と同じく
それが真実をきっちりとらえていて
他のどんなセオリーよりもいまと未来の結果に
直結するものだとは到底言い難いことは確か。
ひとは自分たちのまだまだ到達できていない
絶望的にはるか遠くにある真実に向け
その置かれた現状に即してありえそうな、
つまりその時代に生きる人々に説得力を持つ
“セオリー”を紡ぎだすと共に
そのセオリーがどんなに自分たちの目から見て
長年の努力の結果高度に完成されているものだとしても
“真実”の小さな一面をとらえているものに過ぎず
まだまだ長く遠い道の一歩にすぎないことを忘れず
そんな巨大な“運”の要素に身をゆだねながらも
その一方でその奥知れない深さを持つ“運”の要素を
様々な角度・視点から観察し分析し続けることで
例えその前進が大山の頂上を目指す
小さなアリの一歩にしか過ぎないものだとしても
少しでもうまく自分のいまと未来をコントロールできるよう
常によりよいセオリーへのヒントを探し続けることが
とても重要でしょう。
今日のゲームは特に終盤、まさに
“ありえない”できごとが多く起こった、
ひとが自分たちの手に負えない“流れ”に
右へ左へと流され翻弄されたゲームでした。
6回のライオンズの2点目、7回のファイターズの1点、
そして8回のライオンズの2点、
この終盤のすべての得点である5つの得点は
どれも守備の乱れによる自滅によってもたらされました。
これほどまでに最後まで何が起こるか分からない
追いつ追われつのシーソー・ゲームになったのは
当然、押し寄せてくる“流れ”(=運)に対し
チームの防波堤として機能すべき軸・骨格となる選手たちが
そのしごとをうまく成し遂げられなかったことが
大きく影響しているからだと言えるでしょう。
今日のワクさん、
61/3回を投げて打者29人に対し投球数105、
被安打10、与四球2、奪三振5で失点・自責点ともに4。
“もう1点”の追加点を与えたのは
4回2アウト・ランナー3塁から二岡選手に打たれた二塁打だけで
三振や併殺打などでうまく最少失点にまとめたのは流石ですが
7回途中自責点4(失点4)でランナーを残し降板、
QSをクリアできなかったことはやはり残念。
そして対するファイターズ先発八木投手ですが
40/3回を投げて打者21人に対し投球数85、
被安打7、与四球2、奪三振2で失点・自責点ともに2。
こちらもQSをクリアできず早期降板となり
リリーフ陣に後を託さざるを得ない状況になったことは
つまり今後押し寄せてくるかもしれない、しかも
それがいつかはわかりようのない“流れ”の大波を防ぐ
防波堤となるべき選手がゲームから去ったということですね。
昨日の長田投手のように
そもそも“中継ぎ”投手とはもちろん1軍選手ですから
素晴らしい投球をするときはホント素晴らしいのですが
長い間マウンドにい続けて
運悪く“流れ”の大波が襲ってきたときには
比較的もろく自滅しやすいからこそそのポジションなので
典型的だったのは今日のファイターズ松家投手の
5回と6回の対照的なピッチングですよね。
そして、最後にライオンズの防波堤となる
素晴らしいしごとをしてくれたのはやっぱりチームの軸、
クローザーのシコースキー投手。
かたやファイターズはいまクローザーという
最後にどっしりと控える重要なチームの軸、
防波堤を失ったまま戦っているようですね。
去年のライオンズのように徐々にその影響は
チームの他の選手たちにも負担を負わせていくこととなり
思うように勝利を積み重ねていくことが難しくなるでしょう。
対してライオンズはクローザーという軸が
今シーズンこれまで安定してしごとをこなしているからこそ
昨年と顔触れの変わらない中継ぎ投手陣も
余計なものを背負うことなく自分の得意分野で
自分のしごとに専念することができ
総じてよい結果を残してこられているのだと思います。
これからもケガなどなくシーズン通して働けるよう
入念に準備をしてゲームに臨んでほしいと思うと同時に
数年後を見越して、できるだけ早く
次世代のクローザー候補を発掘し
そしてうまく育成していってほしいと思います。
さて、明日はダルビッシュ投手と許投手。
許投手がまずは最少失点にまとめながら
できるだけ長いイニングを消化してくれることと
ライオンズ攻撃陣がダルビッシュ投手から
効果的な攻撃で得点を奪うことを願っております。