[482] 伊勢神宮の絹 | ひつじの手帖

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皇大神宮(伊勢神宮 内宮)へ奉納する絹、和妙(にぎたえ)の織りたてが松阪市にある伊勢神宮の摂社 神服織機殿神社(かんはとりはたどのじんじゃ)で行われています。
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天照大御神へ奉る織物は、和妙と称される絹と、荒妙(あらたえ)の麻の二種類。

和妙の原料となる生糸は「赤引きの糸」とよばれる白い生糸。

赤は糸の色ではなく、アカ←アクア。

サンスクリット語の「水(アクア)」の音写で仏教では「閼伽水(あかみず)」のアカ。

「清浄な」糸の意味だと解釈します。

その赤引きの糸は、地元三河(愛知県)の新城市(しんしろし)の海野(うみの)さんが育てた蚕から引きだされた糸。

海野さんは毎年、春の田植えの頃、桑の葉を蚕に与え養蚕と稲作を老夫婦で営まれている農家。

新城市には赤引き温泉がありますが、現在 赤引きの糸の養蚕がされているのは赤引き温泉から、さらに山に入った出沢(すざわ)地区。

三河と伊勢の繋がりに興味を抱き、三河の赤引きの糸 ゆかりの地を訪ね、松阪市の機殿へ通い始めて10年。

今年も5月に続き10月に訪れることができました。
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入口の鳥居が新しくなっています。

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檜の素木、すべすべな肌触りで光ってすらいます。


10年前は田んぼに囲まれていた神社でしたが、今年は大豆畑が増えました。


周囲の田畑は、10年後にはビニルハウス、もしくは住宅に変わってしまうかもしれません。


田んぼの中に佇んでいた かつての機殿の杜は、日本の原風景そのものでしたが、毎年少しずつ周囲の景色が変化しているのを感じます。

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神社の杜は周囲の変化とは対照的に変わりなく、コオロギが鳴き、セミ、トンボ、揚羽蝶が舞う中、トン、カラ、トン、カラと機織りの音が響きます。


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白装束の織り子さん
松阪市東黒部町に住む女性4名が毎年5月と10月に奉織されます。


杼(シャトル)につける緯糸を糸巻き機で管に巻いたり、高機で織ったりを、交代しながら、技術をベテランから若手へ伝えつつ、和妙を織り上げます。


織殿である八尋殿(やひろでん)の茅葺き屋根には草花がさく程に。
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お社にはテントがかかり修復されている様子。
ご祭神は天御鉾命(あめのみほこのみこと)と天八千々姫(あめのやちぢひめ)

東西に小さなお社の末社もご鎮座
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10/1 神御衣奉織始祭
10/2 織りたて開始
10/6,7頃に織り上がり
10/13 神御衣奉織鎮謝祭
10/14 内宮にて神御衣祭


何度拝見しても見飽きない機織り。

トン、カラ、トン、カラ。
リズムを刻む手仕事。

伊勢神宮で継承されている物作り。

そこには、かつての人々の暮らし、なりわいと自然への感謝、神さまへの崇拝の強い結びつきを感じずにはいられません。

粛々と、連綿と。