グラフィックデザイナーのTさんは子育て中ですが、
子供に負けちゃいけないとデザインの勉強を始めたそうです。


G:コンテストでグランプリを受賞されたポスターは、
  円と三角と四角を組み合わせたシンプルなデザインの作品ですね。

T:課題が芸術祭のPRということだったので、
  デザインの基本である3つのカタチを使ってみようと思ったんです。

G:そのアイディアはどんな時に浮かんだんですか?

T:これとは別に、他の部門への応募作品を先に仕上げたんです。
  それで少し肩の力が抜けたのか、ふっと思いついたんです。
  それがよかったのかなあと、後になって思っています。

G:僕も高校生のころ、けっこうポスターとかで入選していたんですよ。
  ポスターはシンプルなのがいいのかな?

T:ええ、でもシンプルなのって、
  一つ間違えると「なんでもないもの」になってしまう。
  いろいろ足したり引いたりして、
  ちょうどいいと思える「シンプル」ができた時は嬉しいですね。

G:僕はシンプルなデザインの絵や照明、家具などが好きなので、
  診察室や待合室は僕の好みで演出しています。
  患者さんに落ち着いていただけるように・・・・

T:先生のお仕事は、
  たとえば手術など、表面的な作業じゃないというか・・
  人間の体の中のことですよね。
  いったいどうなさっているのですか?

G:そうですね。
  人間の体は皮膚という皮袋の中に、
  海水のようなリンパ液とか血液で満たされているんです。
  だからちゃんと考えて切らないと、バランスが崩れるんです。
  皮膚の厚さも場所によって違いますし、シワの方向も異なっているので、
  切る方向やデザインが大切なんです。
  ケロイドなで傷が収縮したり、盛り上がっている場合は、
  デザイン通りに切れない場合がありますね。

T:すごく緊張されることの連続ですか?

G:いや、先ほどのお話のように、肩の力を抜くようにしていますよ。
  ただ、その部位だけを診てるだけではダメで、
  全体のバランスを診なきゃいけないんです。
  きれいに仕上げるというのが美容外科医の仕事ですから。

T:仕上げを美しくとうのはデザインの仕事と同じですね。

G:ところで、若くしてお母さんになられたそうですが、
  出産前と後では作品に変化がありますか?

T:実は、出産したことが、
  本格的にデザインを学ぶきっかけになったんです。
  子育てで自分の時間が全く無くなったことで、
  「このまま年を取ってしまったら!」とあせって。
  子供が1歳になったときデザインスクールに通い始めました。

G:1歳の頃はまだまだ手がかかるでしょう?

T:ええだから主人や義母の協力がなかったらできなかったことです。
  いまになって思うと、
  自分でもよく決断したなあ、と。
  でも、自分がストレスを貯めてたら、
  子供に優しくなれない気がして、それがイヤだったんです。

G:逆に、子供さんがおられるから、
  発想上のヒントになることもあるんでしょうね。

T:そうなんです。
  私が家で制作していると
  6歳の息子も一緒になって絵を描くんですが、
  「うーんこの線は私には出せないなあ!」と。
  参考にして実際に作品に使ったこともあります。
  十分な母親業ができていないから、
  そんなカタチで記録を残せてやれたらと思って・・
  本人もすごく喜んでいました。

G:どんなに仕事で疲れていても、
  子供の寝顔をみると疲れが吹っ飛びますからね。
  その点、早く結婚してよかったんじゃないですか?

T:まだまだ未熟ですが、
  自分で「これだ!」といえる仕事が早くできるよう頑張りたいです。

G:今後も肩の力が抜けたいい作品を期待しています。