今回の美容医療協会の講習会で、
眼瞼下垂症術後の合併症がとりあげられた。

眼瞼下垂症の治療法が広まりすぎて、
まぶたの治療をあまりされたことのないDrが、
眼瞼下垂症術後の合併症が増えているようだ.

眼瞼下垂症の診断名が一気に広まったのは、
信州大学形成外科の松尾教授
腱膜性眼瞼下垂症という概念が発表されてからだ。

その後新聞やTVなどで、
頭痛や肩こりの原因の一つであることから、
かなり報道され、
加齢などによる眼瞼下垂症が注目を浴び、
形成外科や美容外科以外の医師もこの手術を手がけていることが
合併症が増えた一つの原因ではないかということだった。

雑誌「形成外科」の眼瞼下垂症の治療戦略という特集での、
東大形成外科名誉教授の波利井先生の言葉を引用させていただく。

『眼瞼下垂症の治療は非常に古典的な形成外科的治療の一つであり、
形成外科専門医資格を取得する上でも必須の項目と考えられます。
特に、筋膜を使った吊り上げ術は、
レジデントが習得しておかねばならない手術の一つでしょうが、
実際に筋膜をどの位置で固定するか、
どれくらいの緊張で眼瞼を吊り上げるか、などは熟練した術者でもけっこう難しいものです。
また、最近では新しい概念として腱膜性眼瞼下垂症も登場して、
特に加齢に伴う眼瞼下垂の手術も非常にポピュラーとなり、
患者数も急増しております。
しかし、この疾患概念は比較的新しく、
完全に眼瞼下垂症として手術を行なう人もありますが、
整容的改善も併せて求められていることも多いのが事実です。
一方、眼瞼は左右のバランスなど整容面での満足を得るのはなかなか難しいので、常に一定した結果を得るには手技の習熟が必要です』

と述べておられる。


実際には、
眼瞼下垂でない人にこの手術をされていることが多いのには驚かされます。
ただ上眼瞼の皮膚がたるんでいる方や
若い人の目を大きくしたいという要望によるものなど、
眼瞼下垂症でない人への眼瞼下垂症手術が散見される。

『あなたは眼瞼下垂症です』という診断を、
安易につけてはいけないのではないか!

ギョロ目になったり、目がつり上がったり、
かえって二重の巾が狭くなったり、






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眼形成手術カラーアトラス   エルゼビア・ジャパン刊より





眼球の前面を覆っている眼瞼皮膚は薄く、
薄い皮膚の下に、
瞼板前脂肪・眼輪筋・瞼板・眼窩隔膜・眼瞼挙筋腱膜
上横走靭帯・眼瞼挙筋・ミューラー筋・眼窩脂肪などがある。

それらの変化で、
まぶたの皮膚のゆるみや菲薄化・上まぶたの陥凹
眼輪筋のゆるみと菲薄化
眼瞼挙筋腱膜やミューラー筋の菲薄化や瞼板からのはずれ
眼窩脂肪の下垂や委縮・まぶたのゆるみによる下垂
などがおきてくる。

従って、
眼瞼下垂症に限っていえば、

先天性のものか?
頭痛、肩こりがあるか?
コンタクトレンズを使用しているか?
アトピーでよく目をこすっていないか?
上まぶたの皮膚のゆるみの程度、
瞼裂の左右差があるか?
眼瞼挙筋機能がどの程度か?
眉毛挙上はあるか?眉毛下垂があるか?
などの診断が必要なのだ。







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正常の上眼瞼の状態






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腱膜性眼瞼下垂の状態
上眼瞼皮膚の菲薄化と陥凹及び眼輪筋のゆるみ、
眼窩脂肪の委縮。
眼瞼挙筋腱膜の菲薄化と瞼板との離開及びミューラー筋のゆるみがみられる。
      (PAPARS 眼の整容外科  全日本出版協会刊より)





適正な診断を行ない、適正な手術を行なえば、
眼瞼下垂症の合併症は格段に少なくなるはず。