「強くなければ生き残れない。優しくなければ生きる価値がない。」
フィリップ・マーロウ
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「ブサイクとコンパをしよう」
すべての始まりは単なる思い付きだった。
某日朝方、ヤマザキはiPhoneで情報収集を開始した。ブサイクとコンパ。その言葉の響きは即座に行動を起こすには十分過ぎる程魅力的だった。ひと通り情報収集を終えた後、グループLINEに日程の候補を投げた。すぐに返信が届き、次の木曜日に数人でナンパをすることになった。この企画に大きな期待を寄せているのはヤマザキだけではないようだった。
ブサイク。その意味はスーザン・ボイルのような女性。日々容姿によって苦労している彼女たちに楽しいコンパを提供し、抱く。やる気は申し分ない状態になっていた。さあ、どこに行けば彼女達に出会えるのだろうか。
ターゲットが明確に決まっていれば、戦う場所を決めることは容易いことだった。目当ての女性が多くいること。自分のポジショニングと適合すること。ライバルに勝てること。それらを満たす場所を探した。いくつか候補が見つかった。それらを簡単にまとめ、優先順位を付けた後、Novさんに照会をかけた。Novさんから返信が届いた。意見に相違はなかった。
戦場を決めた。我々は、日比谷のD箱でクラブナンパをする事を決定した。
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某日 D箱
地下鉄と直結している入り口を一旦素通りし、外でヅラさんと合流。俺もヅラさんもかなりカジュアルな装いである。
ドレスコードに引っかからないか一抹の不安を感じつつも、無事エントランスで入場料を支払い、ロッカーに荷物をしまい込んだ。
ヅラさんと向かい合い、互いの服装、顔、髪をチェックした。ひと通りチェックを終え、我々はフロアに向かう通路へと向かった。クラブ独特の臭いが鼻をくすぐった。音楽が、だんだんと大きくなってきた。「やろう」ヅラさんが自信ありげな笑みを浮かべて、ヤマザキに言った。「もちろん」ヤマザキは答えた。「最高のブサイクからバンゲしよう」互いに頷き合った。2人はがっちりと握手を交わした。
さあ、今夜のゲームの始まりだ。
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＜芋野郎坂2STEP理論（日比谷D特化ver）＞
■STEP1-2 声掛け、和み
■STEP1-2 声掛け、和み
＜step1 声掛け＞［21：00～23：00］
状況に合ったオープナーを使う
例：「おいこら！！」
＜step2 和み＞［21：00～23：00］
理想の男を演じる
例：胸ドリブル、壁ドンからの「これが壁ドンだよ。」
21：50
ヤマザキとヅラさん、ミズハさん、後から合流したNovさん、トンパさんでロッカーを出てすぐ左の通路を歩いた。この通路はクラブ全体の2階部分に当たる（正式な標記はB2フロア）。通路の左側にある手すり越しからは、下の階（B3フロア）のメインフロアが一望できるようになっていた。
ここに来るまでの道程で、エントランス、ロッカーともに人がいなかった。B2フロアからB3のメインフロアを覗いた。が、フロアにはボチボチ人がいた。我々は事前の情報収集でクラブのピークは22：00～23：00であるという情報を仕入れていた。その情報は正しいようだった。六本木のクラブのピークが2時頃であることを考えると、このクラブのピークが訪れる時間は、六本木と比較して3-4時間程早いということになる。
とはいえ、ピークタイムの早さについて問題意識はなかった。我々の基本理論は場所が変わっても変わらない。クラブ全体をサージングし、フロアの全体像を理解すること。継続的にナンパが可能であり、かつ女性たちと短時間和みが出来る場所「ザキヤマゾーン」を見つけること。ゾーン内で繰り返しナンパをし、見込み案件からバンゲする事。これらのプロセスをクラブのピークタイムに実行すること。それだけだ。それが何時であろうと構わなかった。問題は、ピークタイムにどれだけナンパを仕掛けられるかだった。
調べた情報通りであるならば、ピークタイムはあと1時間程だった。時間が十分にある状況とは言えない。「『ザキヤマ砲』（ヤマザキが切り込み、他が場を維持しつつヤマザキが暴れる）を使おう」ミズハがヤマザキに提案をした。提案は受理された。我々は階段を降り、中央にあるダンスフロアを囲む通路からサージングを開始した。10分後、2人はクラブ奥の端で、ミーティングを開始した。そして本日の基本戦術を決めた。
＜基本戦術＞
ターゲット：とにかくブサイク
見込み案件獲得目標：3件
時間：23:30まで
ザキヤマゾーン：どこでも全て
和みゾーン：和みなどその場ですればいい
見込み案件獲得目標：3件
時間：23:30まで
ザキヤマゾーン：どこでも全て
和みゾーン：和みなどその場ですればいい
2人はクラブの特徴と感想を共有した。フロアの大きさはVANITYより一回り大きい程度。フロアの構造は、ナンパがしやすい仕様になっていた。踊りメインのダンスフロアの四方には、和みが出来るスペースがある。上階のB2フロアの通路はより静かで、さらにゆっくりと和めるスペースがある。B3Fのダンスフロア左奥の小部屋は、キノコ出しや多少のギラつき（キス等）も互いに人目を気にせず出来るような場所であった。
女性について感想を共有した。年齢層が本当に高かった。六本木のクラブであるVANITY、SIX、MUSEでは、まず出会わない年齢の女性がいた。30代はまだしも、40代、50代なのではないかという女性も見受けられた。一方で、普通の20代の若い女性もちらほらと存在していた。男性については同じくらいの高年齢層がいるものの、若いサラリーマンといった層も若干数存在した。問題はダンスフロアには出てこない、いかにもお金を持っていそうなおじさま達だった。明らかに自分達の財力を顕示していた。そしてそれを嗅ぎつけた女性たちが、彼らに興味を寄せていた。
しかし、それも問題はなかった。我々は、女性を驚かすために財力は全く必要が無いことを知っていた。財力はそのためのひとつの武器になり得るが、それが全てではない。彼女たちを驚かせ、驚かせ、驚かせる演出をすればいい。その点について我々は誰にも負けない自信があった。ターゲットを見つけた。早速仕掛けることにした。
「はい！はい！はい！」
バーカウンターの端で体を揺らしている若い女性2人に声を掛けた「なになに！？なんなの！？」OL風の彼女が答えた「うるせー！おい！おい！おいこら！」
全く和んでいないが、バンゲ打診をした。打診は失敗した。と言うか、逃げられた。
2組目。トイレ端に陣取っていた我々の前を、少し派手目な女性が通り過ぎた。プロジェクト・ウォールローゼ。体を使い、彼女たちの動きを止めた。すぐさま和みを仕掛ける。よくわからん2人組。逃げられた。
3組目。壁際の2人組。ルーティン、「ハンド・テレスコープ」。手で作った望遠鏡で彼女達を見る。オープン。彼女達の話を遮りながら「おいこら！」を連呼しナンバークロージング。バンゲ。
バーカウンターの前を歩いていたら
「ネクタイ可愛いね！」
逆ナンだ。
「ネックレスも可愛い！お洒落だね！」
IoIだ。冷静にネグを入れる。
「POW！！！！」
頭と股間を押さえ、盛大にマイケルジャクソンのモノマネをする。
逃げられた。
22:50
終電の時間が迫っていながら未だ1バンゲ。しかもそれ程ブサイクではない案件。
焦りを隠せないヤマザキ。落ち着け。なぜバンゲを出来ないのかを冷静に分析するんだ。
基本戦術を見直し多少強引なスタイルに方向転換をする。
何度か絡んでる案件を発見し、ハンド・テレスコープ。
彼女は笑っている。地味だがまぁまぁ可愛い。さっきから何度も声を掛けているが、彼女の相方がヤマザキを大変嫌っているようですぐに邪魔が入っていてバンゲできずにいた。
ルーティン「ウォーリアー・オブ・マサイ」で跳ねながら近付き、彼女と相方の間でルーティン「プロジェクト・ウォールローゼ」で2人を分断する。
「黙ってラインを教えろ。」
バンゲ。
バーカウンター付近で相方が男に絡まれている案件にルーティン「サイクロプス・オブ・ジ・エックスメン」でピースサインで自分の目を指差し、その後相手の目を指差す。
彼女は笑っている。まあまあのブサイクだ。
手を引くと彼女は
「なんでそんなネクタイをしてるの？」
IoIだ。
「これは変声機なんだ。そんな事よりラインを教えろ。コンパするぞ。」
バンゲ。
階段でエロギャルとすれ違う。ルーティン「サイクロプス・オブ・ジ・エックスメン」からルーティン「ハンド・テレスコープ」。オープン。
彼女は「チャラい」と言った。俺は彼女を壁際に追いやり「お前が言うか？」すぐさま壁ドンし、「壁ドンって知ってる？」彼女は笑いながら「チャラい」バンゲ打診を始めたところでセキュリティに注意され逃げられる。
23:15
一同がそろそろ出ようとなり、最後に一周サージング。
酔っ払っているOLに絡まれる。
「友達が酔いすぎていてヤバい。」
確かにかなり酔っ払っていた。友達を椅子に座らせ、「とりあえず番号教えろ。」
バンゲ。
23:30
箱を出た一同の表情は様々だ。この箱では戦えないと嘆く者、地蔵を恥じ悔しがる者、ヤマザキがBBAから逃げたと非難する者。
一つだけ言えるのは、この日の一番の勇者は120kg級のデブからバンゲをしたトンパさんだという事、そして、ヤマザキにとってこの箱は戦いやすい環境である事だ。ヤマザキは箱の入り口に輝くネオンに再戦を誓い、街を後にした。
【結果（定量面）】
・稼働
21:00 – 23:00 4時間
・番ゲ
・稼働
21:00 – 23:00 4時間
・番ゲ
4件
内ブサイク
3件
って調子乗って犬のT行ったらひよりまくってクソ坊主でしたけどね！
冬に向けてクラナン、修行します。