Carbon Monoxide Poisoning | ーとんとん機音日記ー

ーとんとん機音日記ー

山間部の限界集落に移り住んで、
“養蚕・糸とり・機織り”

手織りの草木染め紬を織っている・・・。
染織作家の"機織り工房"の日記

Carbon Monoxide Poisoning
【一酸化炭素は、炭素含有物の不完全燃焼によって生じる無色・無味・無臭の気体であり、発生に気づきにくいという特徴を持つ。】


 「アベノミクスの光と影を考える」という、:ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏のレポートで、簡潔に整理されているように、“アベノミクス”という経済政策には、光=功と影=罪がつきまとうが、影=罪の方は、あまり、マスコミでも深刻に取り上げられなかったように思う。

 安倍政権に関しては、集団的自衛権の憲法解釈のことなどで、随分話題になった。
憲法の精神とか、定められた範囲とか、またその解釈とか。・・・そういう議論の重要性も一面ではあるものの、けれども、現実的な問題として、中国や韓国が我が国の領土領海を侵している有事の危機が現実的なものである今日に於いて、「憲法九条の条文が、国土や国民の生命や財産や権利を守ってくれるものではない。」という事実も考慮しないと、何のための議論かと空疎なものになる。
 また、有事の自衛権を言う以前に小笠原近海域という日本の領海の懐まで、中国の漁船団が進入して密漁を恒常的に重ねても対処を躊躇していたのか、あるいは、実効的な排除措置が取れなかったのかと云う問題は大きな問題で、平時の海洋資源の自衛が機能していないということは、・・・強引に押し切れば、日本は譲歩するというサインを出しているに等しく、こういうことが、余計に有事を誘発するリスクをつくっていると気づくべきである。

 こういう問題では、自民党安倍政権は、従来からあった韓国や中国の密漁による海洋資源略奪に光を当てて、また、有事を想定した現実的な安全保障について国民が考えるきっかけをつくったのだが、・・・。

 けれども、“アベノミクス”という経済政策には、疑問点が多い。
「アベノミクスの光と影を考える」では、・・・

●アベノミクスの光:
・金融市場の劇的な変化(株高、円安),企業収益の拡大,名目賃金の上昇,
 雇用の改善などがあげられる。
・特に雇用は雇用者数が100万人増え、
 経団連集計による大手企業春闘の賃上げ上昇率も、
 16年ぶりに2.62%増となっている。
 4.1%だった失業率は「完全雇用」に近い3.6%まで低下し、
 有効求人倍率は22年ぶりの水準に達し人手不足が叫ばれる程である。

●アベノミクスの影:
・賃金上昇を上回る物価上昇。
・格差の拡大。
・見えなくなった財政悪化と市場規律の喪失などがあげられる。。

(アベノミクスの影への対応を急ぐべき)
・今後アベノミクスでは影の部分にどう対応するのかをきちんと議論してほしい。
・アベノミクスで大きな誤算は、「円安でも輸出が伸びない」ということがあったはずだ。
・日本の企業は20年、円高と戦ってきた。多くのメーカーは海外生産を大規模に実施し、
 また輸入業者は円高のメリットを享受してきた。
 日本の企業は円高に対応しきっている。
 急激に円安に振れたことで輸入業者の方などからは、悲鳴の声をお聞きする。
・為替が20-30%も円安に振れ原材料コストが上昇している。
消費税の引き上げもあり価格転嫁を消費者にはすべてできない、採算割れだとの話だ。
・日本経済全体でみれば円安はプラスに寄与する。
 しかし、これだけ多くの人が円安による物価上昇への懸念を声高に叫ぶのは、
 円安ピッチが速いことや、円安メリットが従来に比して少なくデメリットが大きいからだ。

・・・と整理して指摘されている。

参考の為に挙げた、生活の党の小沢氏が定例記者会見のなかで指摘しているように、「大企業の利益をつくるために、庶民が円高で得ていた利益を、企業の円安メリットに付替えた。」のだ。

 庶民生活の利益を一時捨てて、「日本経済の再建を優先する。」ということを目的としてデフレ脱却を目指して円安にシフトすることがアベノミクスという経済政策であった。
 つまり、「円安にシフトする。→輸出ができ易い条件が整う→企業の収益が増える→給料・ボーナスが増える→消費が拡大して国内経済が活性化する→負のスパイラルから成長のスパイラルヘ転換」というようなシナリオを提示されて説得された。

 しかし、そのシナリオは信頼できるものであったのだろうか。?

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングのシンクタンクレポート
「アベノミクス2年目を迎える2014年の日本経済 ~デフレを脱却したらどうなるのか~」では、そのあたりについて的確に迫っている。

 同レポートでは、アベノミクスによって輸出が回復したのではなく、底打ちした世界経済の緩やかな回復力によるものと分析している。
 もし、同レポートの分析の通りであれば、「庶民生活の利益であった円高メリットは、何のために失われたのであろうか。?」

 そしてまた、このようにも指摘している。
「輸出の持ち直しが今回あまり強くなかった。外需の回復力の弱さを補ったのが内需、特に個人消費の拡大であった。2013年前半の個人消費は高い伸びを示した。・・・(中略)・・・アベノミクスが登場するずっと前から消費が堅調であったという事実を忘れてはならない。」
 ・・・つまり、アベノミクスが何らかの効果を果たした可能性は否定できないものの、2013年の個人消費が堅調である理由をアベノミクスにだけ求めてしまうのは適当ではないと指摘している。

 さらには、2010年の後半には、デフレが終了していて2013年度に入って、物価が上昇に転じている、(同レポート図6)・・・と指摘しいているが、問題は、この国内経済に於けるインフレ傾向の進展が個人収入(賃金)の増加を上回るようなイメージで展開したときに、アベノミクスの作為的な円安シフト操作の、それ以前までは堅調であった消費の力をも殺いでしまうのではないか。?
また、給与上昇分では到底追いつかないインフレへと反転すれば、回復の難しい局面に至るのではないかという懸念がある。
加えて、国債格付けの下方修正などによって、円安が定着したときには、インフレ+増税によるシワ寄せが、長期間にわたって一般の国民の生活への、負担となって圧し掛かる。

 確かに、アベノミクスによって日本からの輸出品の競争力が改善されたことが否定できないが、『アベノミクスが華々しく登場しなくとも景気回復は始まっていたハズだ。』という識者の指摘を国民は、どのようにとらえるのだろうか。?

●国にとって、健全な経済の状況とは、どういうことだろう。
●国民にとって、暮らしやすい経済の状況とは、どういうことだろう。
●年金・社会保障・緩やかな成長・少子高齢化/地方の人口減少/自治体消滅・産業構造の転換・・・さまざまな問題は、どうしたらいいのだろうか。未来はあるのか。?

『アベノミクス・・・とは、一体なんだったのか。?』
「わたしが、円高の時期に比べると、約二倍の価格で灯油を買いつつける冬はいつまでつづく。?」