babi-yarの珈琲三昧-カワン・ルマー

別荘が多く立ち並ぶ林間にある店で、店名はインドネシアの言葉で「友達の家」という意味らしい。
ベルメゾンなどの大手通販会社でも豆を販売しているが、焙煎豆の販売だけでなく改造した焙煎機や生豆の卸、あるいは開業希望者への焙煎指導のようなことも行っている。


この店には前年(2007年)の3月に訪問したのだが、その日は定休日ということで通常営業は行っておらず、それでも豆だけは購入することができた。


その際に抽出について話が及び、「私は普段ネルで抽出しているが、ペーパードリップだと綺麗な味に仕上がらないので、むしろネルよりもペーパー抽出の方が難しい」ということを話すと、店主は「以前はこの店でもネル抽出していたが、ペーパーでもあまり味が変わらないので今ではペーパーで抽出している」と言う。


そしておもむろにポットを取り出して水を注いで見せ、「ドリッパーにはできるだけ静かにお湯を注ぐの。これを"お湯を乗せる"と言うんだけど・・・」とか、「これが1杯分、これが2杯分・・・」と言いながら水の太さ(注ぐ水の量)を変えて注いで見せ、随分初歩的なことを自信たっぷりに言う店主だなという印象を持った。

私が「ペーパーのほうがネルよりも抽出が難しい」と言ったのは、かつての札幌・バニティービーンズ のように、私がネルで抽出した珈琲よりも美味しい珈琲をペーパー抽出で仕上げた店があったからなんだけど・・・。


少なくともこの店主の話を聞いていると、焙煎はともかく抽出に関しては私の足元にも及ばないんだろうなという印象を持った。


それともう一つ、豆を購入する際に100g単位での購入を申し出たところ、「この店では200g売りが基本なので、100g単位で購入する場合には200gの販売価格の半分と、袋代として10円追加でいただきます」という。
100gと200gとで豆のグラム当たりの単価が異なる店も多いので、別にそれについてとやかく言うつもりはないのだが、「袋代として10円」という名目および金額が妙にショボイなと。


その時に購入した豆(アビシニアン・モカとマンデリン)は、どちらも悪くない味であった。
ただ「長野県内ではそこそこ上位かな?」という程度で、少なくとも全国というレベルで順位をつけていくと何百番目だろう・・・?という印象であった。


長くなりましたが、ここまでが前置き。


今回この店に訪問したのは、それでは喫茶ではどの程度の珈琲を出しているのかを確認したかったからである。
あの抽出に関しての初歩的な講釈を聞いた限りでは、少なくとも抽出に関して私よりも上手(うわて)とはとても思えないのだが、それでも私の抽出技量の拙さによって味を上手く引き出せていない、その可能性も否定はできないので。


店に入ると自信満々で講釈を垂れていた店主は不在で、若い店員一人(アルバイト?)が店を切り盛りしている。


注文したのはアビシニアン・モカ。
前回訪問時に購入した豆であり、またその際に店主が「アビシニアン・モカは珈琲の原種で、当店ではまずこの豆を試してみて欲しい」と語っていたからである。


抽出はペーパードリップのようだが、客席に背を向ける格好で抽出するので詳細は不明。
まあ「お湯を乗せるように」「1杯分の湯量を」注湯してるんだろうけど。


出てきた珈琲を鼻で嗅いでみると、アビシニアン・モカ特有のミルクのような甘い香りが感じられる。
焦げた香りがしないところは良い。

口に含むと入りは甘み。煎りは深め(フルシティー程度)だがあまり苦味は強くなく、鼻腔に抜ける香りと相俟って、硬口蓋のあたりに甘みが残るような味わいである。


ただ味わいにも香りにも一本芯が通らないというか、珈琲液としての濃度感はあるものの旨味が薄く、そのために味わいがピンボケしたような印象を受ける。
変な比喩かもしれないが、例えば出汁の薄いお吸い物を飲むと、塩味は濃くても出汁の旨味が薄いために塩味だけが突出した味わいになる。
それと同様に、ベースになる旨味が薄いために甘みがどこか浮いたような感じになり、ミルクのような香りと相俟ってどこか茫洋とした芯の通らない味わいに感じられるのである。


冷めてくると・・・あるいは鼻腔に香りが馴れてくるからなのか、味わいの薄っぺらさがさらに顕著になり、舌のヘリあたりに沿って仄かな青臭さと、珈琲液を飲み込むときに微かに喉をチリチリ灼くようないがらっぽさが感じられる。
昨年の訪問時とは季節も生豆の状態も違うだろうが、それにしても私が家で点てた時とは比べ物にならない、珈琲としての完成度が数ランク落ちる印象であった。


前回訪問時に豆を買っているので今回は購入せず。それ以上に「店で出しているのがこの程度、上手く点ててもこの程度」というのがわかっているので、敢えて買うこともないかなと。


今回の訪問で、「豆を買うなら長野県内ではそこそこ上位かもしれないが、それでも全国というレベルで見たときには凡百のレベル」という確信を強くする。

そういえば前回訪問時に、他店(特に丸山珈琲 などの味方塾系列と、堀口珈琲 などのLCF系列店)について随分批判的なことを言ってたものだが、客観的に見てそれらの店とさほど大きな差を感じない。
東京・西荻の"珈琲職人 "も、そんな感じの店だったな・・・。


「意識は低いがプライドだけは高い」 ― そういう店を、今までどれだけ見てきただろう。

抽出一つでこれだけ味が変わるのだし、焙煎についてもまだまだ目指すべき上があるのだが、それでは自身が井の中の蛙に過ぎないことを素直に反省して、真摯に味作りに邁進するだけの器量がこの店主にあるのかどうか・・・。



◎カワン・ルマー


 長野県北佐久郡軽井沢町追分1541-57
 0267-45-2070
 10:00~19:00
 第4日曜定休
 http://www.kawanrumor.com/