1ヶ月近く更新なし状態になってしまいました。。。


仕事が忙しかったり、腰痛の具合が悪かったり、その割には宮崎や鹿児島に行ってたり、その旅で呑去屋(旧・琥珀亭 )の店主の話を聞くにつけ、色々思い悩むこともあり、それによって何となく家で珈琲を飲む気にもなれなかったり・・・と、いろいろ言い訳しつつ。


とりあえず、福岡の珈琲店の続きを書いていきます。


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babi-yarの珈琲三昧


須崎公園の近く、傍には交通量の多い県道も通っているが、通りを一本入ってしまうと少し喧騒から離れた雰囲気で、そんな裏通りに店を構える自家焙煎のカフェ。


店に入ると常連客か店のスタッフなのか、3~4名の若い客(?)がテーブル席で打ち合わせをしている。

その様子が何となく、スタッフ同士で集まって打ち合わせをしているような感じだったので、あるいは休業日なのかと思って「やってますか?」と訪ねてみると、普通に営業しているという。


案内されたのは1~2人掛けのソファーのような席で、沈み込みの深い椅子で飲食するのは少々具合が悪い。

何よりテーブルの上には雑誌がうず高く積まれていて、(飲食するスペースは一応あるものの)飲食店としてこれはどうか・・・というのが率直な第一印象。


珈琲はブレンドとストレート、スペシャルティー珈琲の計3種類。

ストレートは複数種類を置いていたのかもしれないが、特に何の豆を置いている、というような表記は見当たらなかった。


ブレンドはペーパー抽出のものとサイフォン抽出のものがあり、スペシャルティー珈琲はプレス抽出とのこと。

カウンター奥の棚にはリキュール類の瓶も並んでいたので、夜にはカクテル類も出しているのではなかろうか。
とりあえず、そのスペシャルティー珈琲を注文してみた。


カウンターのパーティションが高く、私が座った席からはあまり抽出の様子を伺うことはできなかったのだが、プレス抽出なら何処の店でもそれほど違いはないだろう。

しばらくして、ファイヤーキングのカップに入れられて出てきた珈琲、鼻で嗅いでも、あるいは口に含んでも少々茫洋とした甘い味わい。

味わいにメリハリがない嫌いはあるものの、渋味やコゲ味などの悪い味わいの要素がないところは良い。


冷めてくるともう少し酸味やボリューム感が出てきて、飲み応えのある味わいになる。

体感で65~60℃くらいに冷めたときが味わいのピークで、それより冷めてくると甘みが抜けて平坦な味わいになる印象であった。


ただ何となく、ネルやペーパーで抽出すると、もっと香りの特徴感のない退屈な味わいに堕してしまいそうで、それよりはプレスで抽出するのが良さそうな気がした。

焙煎機はラッキーコーヒーマシンの1kg釜で、自家焙煎のようだが豆の販売まで行っているかどうかは不明だが、珈琲の味に関しては、店の雰囲気(雑誌がうず高く積まれたテーブルで飲食することなど)から受ける印象ほどには悪くない。


その珈琲について、今回の訪問では「悪くはない」という程度の印象であったが、この店主を見ていると、珈琲に関してはもう少しいろいろなものを持っているのではなかろうかという気がする。
ただあまりにも雰囲気作りや接客に頓着しなさ過ぎで、そのあたりが金沢の桂珈琲店を少し思い出す。


接客姿勢がイマイチなところを見ても、1kgの小型焙煎機を使っているところを見ても、桂珈琲店と少し通じるものを感じるが、やれ「昔の職人は良かった」などと小うるさい説教を始めない分だけ、こちらの店の方がまだ好感が持てるだろうか。


ところで帰宅後にこの記事を書くためにWebページを参照して、この店主が「自家焙煎の店 伽楽 」に居たことを始めて知った。
7年前に福岡を初訪問したときからリストアップしていた店で、その割には未だに訪問を果たせていないのだが、この伽楽という店は今でもあるのだろうか。



評価・・・☆☆(2)


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◎MANO+MANO


福岡県福岡市中央区天神5-6-13
092-714-7333
12:00~21:30
日曜定休

http://www.manoxmano.com/

babi-yarの珈琲三昧


「復活の道遠し・・・」


今はなき吉祥寺の「もか」で修行したマスター(森光さん)が開いた店で、スペシャルティーコーヒーの潮流に乗る店が多い福岡にあっても、未だに人気・知名度はこの店がNo.1ではなかろうか。


この店に前回訪問したのは2年前の8月。
元々この店は長らく天神駅近く(今泉)に店を構えていたが、2年前の5月に現在の場所に移転したので、その移転からそれほど経っていない頃の訪問であった。
今泉に店があった頃にも何度か訪問して、深く焼かれていても苦味の尖らない味わいだと感じたものだったが、移転の際に焙煎機を変えたということもあってか、前回訪問時点では完全に味が変わってしまった印象であった。


その2年前の訪問時にはケニアを店で飲んだのだが、渋みがきつく口内の粘膜を逆撫でするような飲み口で、とてもではないが「美味い」と言えるような代物ではなくなっていた。
宇都宮の「花カフェ・パストラル(旧・カフェ・ド・ブリーズ・パストラル)」も、店主の長岡さんが「移転したことで煙突への日照が変わり、煙の抜けが格段に良くなった」と話していたが、その影響か店を再開してすぐに(パストラルに)訪問したときには、少しスカスカした飲み口になっていたものであった。
要するに、焙煎はそれくらい諸条件に左右されるデリケートなものであるということである。


ただ、これもいろいろな店を見てきた経験則だが、長い目で見れば焙煎機を変えてもそれほど味は大きく変わらない。
結局店の味を作るのは「人」で、目指す味わいがあって、そこに焙煎を合わせていくので、結局機械が変わってもそれほど大きく味は変わらないものである。
もっともこの経験則は、どちらかというと「焙煎機をパワーアップさせたので、味もさらに良くなった」ということを話している店に、むしろ多く当てはまるのだが・・・。


前置きが長くなったが、前回訪問時は移転からそれほど間がなかったので、諸条件に対して焙煎を調整しきれていなかった面もあると思う。
それが2年以上経ったところで元の味わいに戻せているのではないかと、そんなことを期待して訪問した次第である。


店に入って2階の喫茶コーナーに上がると、森光さんはカウンター脇のテーブルに座っている。
ただ注文を聞くでもネル抽出するでもなく、何をするわけでもない、日溜まりの縁側に座っているお爺ちゃんみたいな感じで(眠そう・・・?)、注文聞きや抽出・提供などのオペレーションは若い店員が行っている。


メニューを見てエチオピア・イルガチェフを注文する。
私が抽出するか店員が抽出するかの違いはあるにしても、少し前に東京・国分寺の「どりっぷ 」で深煎りイルガチェフを購入してテースティングしたので、それとの良い比較ができると思って。


抽出はネルドリップで、お湯の温度は目算で92~3℃くらいだろうか。
森光さんが点てても同様なのだが、お湯を挿すと大粒の泡が立つので、少し湯温が高すぎではなかろうかと思う。

その大粒の泡粒にポットの注ぎ口を突っ込むようにして抽出する。

かつての「もか」がどのような抽出をしていたのか、私は喫茶営業をしていた頃に訪問したことがないので不明だが、新潟の「交響楽 」を見ても、鶴岡の「コフィア 」を見ても、同様に大粒の泡粒にポットの口を突っ込むようにして抽出していたので、恐らくはこれが「もか」のスタイルなのだと思う。


それにしても抽出温度が高いので、出来上がる珈琲液も当然熱いわけだが、それをカンカンに温めたカップに注いで出すのは蛇足ではなかろうか。


出てきた珈琲、鼻で嗅ぐと仄かにオレンジピールかマーマレードのような柑橘系の香りがあるものの、煮潰したような重くモッサリした香りの立ち方なので、あまり良い印象を持てない。

口に含むと煎りは深いので苦味は強いのだが、苦味・甘味などの味わいの要素はどこか舌から遠いところで展開するような、そういう味わいの「距離感」を感じ、そのために少し薄味に感じられる。

一方で重い渋みは口に含む時から後味に至るまで一貫して主張する。

特に珈琲液を飲み込んでしまうと、良質な甘味・苦味はすぐに消えてしまうのに対して渋みはしばらく残るので、口内が重く淀んで澱んでしまうのが良くない。


一瞬だけ、体感で50℃くらいの温度帯のときに、渋みが軽くなって甘味・苦味・酸味のバランスが良く、また柑橘系の香りとの親和性が良くなる「飲み頃」のタイミングがあるのだが、それはおそらく温度差にして5℃もないだろう。
それ以外の温度帯では重く濁った渋みが前面に出ていて、飲みにくさが先行したような味わいに終始する。


前回飲んだケニアよりは若干改善しているものの、それでも店が今泉にあったころに比べてしまうと格段に落差がある印象は否めない。

先述の国分寺「どりっぷ」の深煎りイルガチェフに比べても、明らかにこちらの方が下の味わいで、抽出によってもう少し味わいを柔らかくできる余地はあるにせよ、そこまで良い味わいには仕上がらないだろう。

要するに、移転から2年半以上経った現在でも、焙煎を元のレベルにまで戻せていないということである。


岡山の「折り鶴 」にしてもそうだし、和歌山の「珈琲もくれん 」にしてもそうだが、この店を慕う店は全国に数多くあるはず。
そういう店の敬意に応えるためにも、かつての味を取り戻し、その上を目指す努力を続けていただきたい。



評価・・・☆☆☆(3)


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◎珈琲美美


福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27
092-713-6024
10:00~19:00
月曜定休

http://www.cafebimi.com/

babi-yarの珈琲三昧

babi-yarの珈琲三昧


▼鼻で嗅ぐと・・・


ネットリとした濃度感のある甘い香り。

鼻先で香る時にはキャラメルのような粘性の高い甘味が先立つのだが、それが鼻腔に馴染む頃になるとオレンジのような柑橘系の香りを伴う。


香りのキャラクターや粘性の高い甘味などを勘案すると、オレンジキュラソーやグランマニエのような香り、と評するのが適切だろうか。


▼口に含むと・・・


舌のヘリに沿って硬い苦味が現れ、それが和らいで甘くなっていく。

そのため甘味よりも硬い苦味が前面に出て、少し甘味の広がりが阻害されるような飲み口に感じられるのだが、珈琲液を飲み込んだ後に口内に残る甘みは悪くない。


口内で感じられる香りや鼻腔に抜ける香りは深煎り特有の揮発するような香りが強く、そのため鼻で嗅いだときほどのキャラクター性(柑橘系の香りや粘性の高い甘味)が感じられないところは残念。


▼60℃くらいに冷めてくると・・・


味わいの主張が柔らかく、スッと舌に馴染むような飲み口になる。

60℃くらいの温度帯ではまだ舌の上にザラ付くような苦味が感じられるが、さらに冷めて人肌くらいの温度帯になってくると、完全に飲み口が和らいでザラ付きが霧消して味わいが向上する。


従って人肌くらいの温度帯に冷めてからの方が飲み頃であると感じる。


▼啜って飲むと・・・


温度によらず、啜って飲むと主張の軽い味わいに変容する。

ボリューム感は弱まってしまうものの、舌の上に展開する粉っぽい苦味が霧消するので味としては向上する。


この手の深煎り珈琲はあまり啜って飲まない方が良い場合が多いのだが、この珈琲に関しては下品なくらいに啜って飲む方が良いだろう。



評価・・・☆☆☆★(3.5)


購入店はこちら


babi-yarの珈琲三昧

babi-yarの珈琲三昧


「これが1年経過した結果なのだろうか・・・」


▼挽いたときの香りは・・・


パッケージを開けたときに広がる香りや、豆を挽いたときの香りは、温州みかんの甘味をさらに研ぎ澄ましたような清冽な香りで、ニュークロップとの差をほとんど感じない仕上がりであった。

それがニュークロップに比べて約1/3くらいにまで値崩れしており、お買い得感を感じるとともに、現在の珈琲業界を席巻している「新豆至上主義」はいかがなものなのかと、テースティング前の段階では少なからぬ疑問を感じたものであった。


▼鼻で嗅ぐと・・・


パナマ・エスメラルダ・ゲイシャと言われて思い浮かぶような、シャンパンや柑橘系の香りは確かに出ている。

ただ「ぜにさわ 」さんあたりで購入したパナマ・エスメラルダをイメージしてしまうと、どうにも香りの立ちが弱い印象を受ける。

これは果たして焙煎によるものなのか、それとも生豆を1年寝かせたことによるものなのだろうか・・・。


▼口に含むと・・・


オレンジのような柑橘系の酸味。雑味はほとんどなく、心地良い香りと酸味が長く伸びるように嫋々と続いてゆくのだが、あまり甘味が感じられず、そのため酸味の展開がドライで平坦な印象を受ける。


言葉は悪いが、香りにしても酸味にしても、潰れてしまったような感じである。

あるいはこれが生豆の状態で1年経過したことの影響なのだろうか。


▼60℃くらいに冷めてくると・・・


酸味が強く出る飲み口は相変わらずながら、その酸味の中に甘味が感じられるようになるので、ドライな平坦さが緩和されて味わいとしては向上する。

ただ珈琲液を飲み込んだ後、口内に生豆そのもののような青臭さと、まるで山椒を舐めたように舌がビリビリ痺れるような後味が残り、後味が濁ってしまうのが良くない。


▼人肌くらいに冷めてくると・・・


60℃くらいの頃から、味わいの傾向としてはそれほど変わらない。

ただ酸味の濃厚さや後味に舌の上に残る痺れなど、どこかグレープフルーツの内皮を舐めているような後味に感じる。


いずれにせよ、この痺れるような後味はない方が良いので、この珈琲は熱いうちに飲み切ってしまった方が良いだろう。


▼啜って飲むと・・・


舌先に甘味が強く現れ、その甘味を前面に感じられるようになるので、温度によらず下品なくらいに啜って飲む方が良いような気がする。


▼その他特筆事項・・・


香りや酸味の平坦さというのは、生豆が1年経過したことによる影響が少なからずあるのではないかと思うが、それでも後味の青臭さや舌が痺れる感じというのは、焙煎でクリアすべき部分だろう。

従って同じ材料を使うにしても、もう少し上の味わいを実現することは可能ではないかと思う。


あるいは岡山の折り鶴さんのように、パナマ・ゲイシャを深煎りにするのであれば、1年くらい枯らして豆の水分が熟(な)れたくらいの方が焼きやすいのではないか、という気もするのだが・・・。


▼総評として・・・


店頭でこの豆を見つけたときには相当にお買い得だと思ったものだが、テースティングしてみると価格相当なのかなという気がする。

それも「パナマ・ゲイシャが飲みたい」という欲求があったときに、その欲求を低価格・低次元で叶えるには良い、という使い方くらいしか想像できない。


それでも他の豆に比べれば値は張るので、よほどパナマ・ゲイシャに拘るのでなければ、他の豆を購入した方が得策ではないかと思う。



評価・・・☆☆★(2.5)


購入店はこちら

babi-yarの珈琲三昧


福岡市内では良く知られた老舗珈琲豆店。
現在は警固の本店に加えて平尾にも支店を出しており、その両方の店に焙煎機を構えている模様。


老舗だがスペシャリティー珈琲を積極的に導入していて、先に訪問して好感を持った「cafe MARUGO
」の店主も、この店で焙煎を学んだという話をどこかのサイトで見た覚えがある。(私の記憶違いかもしれないけど・・・。)


客が3人も入れば一杯になってしまうような手狭な店内には、ストレート・ブレンド併せて30種類ほどの豆が所狭しと置かれている。


それでは何を購入しようか・・・と豆を物色していると、見慣れたパナマ・エスメラルダ農園・ゲイシャのマーク(椰子の木のシルエットのようなマーク)を見つける。


そのエスメラルダのお値段が何と・・・100gあたり1380円。


余所では4~5000円くらい取るのにこれは一体・・・?と驚いて見てみると、エスメラルダ2010とあり、要するに1年経ったパストクロップだから安くなったのだろうなと。


(注・後日店の方より連絡があり、2010と会ったのは記載間違いで、豆自体は2011年に収穫されたニュークロップだが、エスメラルダ農園内の標高が低い畑で採れた豆のため、価格が安いということであった。)


それにしても、元の豆が良いので1年くらいエイジングさせても面白いと思うのだが、スペシャリティー珈琲の潮流は新豆至上主義なのだろうか、1年経つとここまで値崩れしてしまうものかと感慨深い。
とりあえず中煎りと深煎りを各1種類ずつ購入していこうと考えていたので、中煎りはこのエスメラルダ2010に決定。


もう1種類は深煎り・・・ということで物色すると、どうもこの店はケニアは深煎りにしていないようなので、ケニアを第一候補に考えていた私としては狙いが外れるが、深煎りのコーナーにコロンビア・サントゥアリオが置いてある。


過去に仙台のOHNUMAさんや秋田のアラジンで購入した豆で、マンゴーのような濃厚な甘味が良く出ており、「ここまで明瞭な特徴を感じさせるコロンビアは初めてお目に掛かった」と思ったものであった。
そこで深煎りの方はそのコロンビア・サントゥアリオを購入する。


訪問時には、弟子の出来が良くて材料も良いのであれば、必然的に良い珈琲が出来上がるのではなかろうかと、そういう期待を持って店を後にする。


ただ帰宅後にテースティングしてみると・・・正直そこまで期待したほどではなかったかな・・・?という程度であった。
特にエスメラルダ2010の方は、香味の鮮烈さや品の良さが丸々抜けたような感じで、完全に選ぶ豆を間違えてしまったように感じたほどであった。


詳細なテースティングレビューについては、追って別稿にて記していきたい。



評価・・・☆☆★(2.5)


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◎焙煎屋


福岡県福岡市中央区警固2-10-11
092-751-0066
10:00~20:00
日曜定休
http://www.fukunet.or.jp/member/baisenya/

babi-yarの珈琲三昧


▼鼻で嗅ぐと・・・


点てているときにも、点て上がった珈琲液を鼻で嗅いだときにも、レーズンや貴腐ワインを思わせるくすんだ甘酸っぱい香り。

まさしく「古典的なモカ・マタリ」という表現がピッタリ似合うような香りで、私自身の珈琲店探訪を思い返してみても、ここ1~2年の間に訪問した店でここまでモカ・マタリらしい香りを湛えたマタリは見かけなかったのではなかろうか。

香りの印象は非常に良く、個人的には懐かしささえ感じるほど、久しぶりに出会うマタリらしい香りである。


▼口に含むと・・・


香りの印象から、粘性の高い甘味と豊かな酸味が広がる味わいなのだろうな・・・と思って飲んでみるのだが、口内の粘膜・・・特に口蓋全体にへばりつくように濃厚な渋味が広がり、その渋味の陰から仄かに良質な甘酸味が感じられるという程度。

その渋味のキツさと香りとのギャップの激しさに、思わず眉をひそめてしまうほど。


鼻腔に抜ける香りも、良質なモカ・フレーバーだけでなく、どこか泥臭さが残っているように感じられ、「試す豆を間違えてしまったな・・・」というのが一口飲んだときの率直な感想であった。


▼人肌くらいに冷めてくると・・・


体感で50℃くらいまでは渋味のキツさが前面に出た飲み口なのだが、それよりも冷めて人肌くらいの温度帯になってくると、口に含むときに渋味よりも酸味が強まり、その酸味の中から熟成の進んだレーズンのような、不可思議な甘味と香りが感じられるところが面白い。


良質な甘酸味がすぐに消えるのに対して渋味はしばらく粘膜に張り付いて残るので、珈琲液を飲み込んでしまうと後味が渋まってしまうのだが、それでも良質な甘酸味と渋味のバランス(比率)を考えると、この珈琲は人肌くらいに冷めた後の方が飲み頃だと私は思う。


▼啜って飲むと・・・


温度によらず、濃厚な渋味が粘膜に刺さるように色濃く出てしまうので、啜らず口内に流し込むように飲み進めることをオススメしたい。


▼総評として・・・


店で飲んだウガンダは間違いなく良い味わいであり、また店主の姿勢も好感が持てるものだったので、他の豆を試せばまた別の結果になったであろうことは想像に難くない。

モカ・マタリを浅煎り~中煎りに焙煎して美味しく仕上げられる店は極めて少ないので、最近では敢えてモカ・マタリを敬遠しているのだが、もともと私自身が最も好きな豆はモカ・マタリであり、店主の姿勢に好感が持てたことも含めて試してみた次第であった。


率直に、やはりマタリは浅煎り~中煎りに仕上げるのが難しい豆だということ。

次回訪問時には別の豆を試してみるのが良いのだろうが、そこを敢えてもう一度マタリを試してみることで、その間の進境を見てみたい気もする。



評価・・・☆☆(2)


販売店はこちら

babi-yarの珈琲三昧


表通りから入ったところにある、落ち着いた雰囲気の珈琲店。

店名の「マルゴ」とは、店主の祖父母が営業していた八百屋の屋号に因んで付けたらしい。


店に入るとケーキを陳列するガラスのショーケースがあり、そのショーケースの上には販売用の珈琲豆を入れたガラス瓶が積まれ、その奥に焙煎機(ラッキーコーヒーマシンの4kg釜)が置かれている。


ストレート・ブレンド併せて15種類ほどのラインナップ。

どれもフルシティー~フレンチロースト程度の焙煎度と、深めに焼かれたものが多い。


その中に、前日に三苫のPOPCOFFEES で飲んだウガンダが置かれている。

今まであまり馴染みのない豆で、そのためPOPCOFFEESで飲んだときにも少々コゲ味を感じたものの、それが豆の個性なのか焙煎技術の拙さによるものであったのか判然としなかった豆であった。そこで同じ豆を試してみることで、もう少しこの「ウガンダ」という豆の味わいがわかってくるのではないかと、そんなことを期待して注文してみた。


抽出はネルドリップということだが、円錐形のネルフィルターをコーノ式のドリッパーにセットして抽出するスタイル。

パッと思い付くところでは、豊橋のマインブロスが同様の抽出を行っていた。


出てきた珈琲、鼻で嗅ぐとプラムを思わせる甘酸っぱい果実性の香り。

恐らく味わいとしても、ベリー系の甘酸味が全面に出た味わいなのだろうな・・・と、そんなことを思いながら口に含んでみると、鼻で嗅いだときよりも味わいの粘度が高く、ネットリと甘酸味を主張するようなボリュームのある飲み口。


何より口内で感じられる香りや鼻腔に抜ける香りに、どこかレーズンや貴腐ワインを思わせる香りが感じられ、鼻で嗅いだときとの香りの印象が随分異なる印象。

その香りと言うのは、平たく言うとオールドビーンズの珈琲で感じるような熟成香なのだが、舌に主張する酸の質感などはニュークロップのそれ、という不可思議な飲み口である。


焙煎度はフルシティー程度なので、前日に飲んだPOPCOFFEEよりも少し深めだが、前日に感じたような刺激的なコゲ味はなく、この店の焙煎技術の確かさと、同時に前日感じたコゲ味が決して豆の持ち味ではないことを確認した。


冷めると酸味がもう少し重く粘るように残り、また香りも少々くたびれたような香りになってくるので、ある程度熱いうちに飲み切ってしまったほうが良いのかな・・・という気はする。

それでも熱いときはなかなか良い味わいだったので、豆を購入していくことにした。


店の入り口に置いてあった豆の瓶を物色していると・・・その中にシティーローストくらいに仕上げられたモカ・マタリがあるので、それを購入してみる。


そもそも私は色々な産地の豆の中でもイエメンのモカが特に好きで、珈琲を飲むようになった最初の頃に出会った赤坂・コヒアアラビカ のアラビアンモカNo.1(中煎り)は、今でも訪問するたびに注文するほどである。

ただイエメン・モカは焙煎が難しいのか、浅煎り~中煎りに焙煎する店で、なかなか美味しいイエメン・モカに出会うことがない。


それでもウガンダがこの仕上がりなら、焙煎の難しいマタリも美味しく仕上がっているのではないかと、そして中煎りマタリが美味く仕上がっていれば、この店は今回の福岡遠征でも大きな収穫になるのではないかと、そんなことを期待してマタリを購入してみた次第である。


帰宅後のテースティング結果は稿を改めるが・・・正直今ひとつな味わいになってしまった。

他の豆を試せばまた、別の結果になったのだろうけど・・・。


それでも店で飲んだウガンダは確かに美味しく、また店主の珈琲に対する姿勢も好感が持てたので、次回の福岡訪問時の再訪リストに入れておきたいと感じさせてくれる店であった。


ところで、どこで知った情報だったか忘れてしまったが、この店主はご近所の「焙煎屋 」で焙煎を勉強した後に開業したのだという。(違うかもしれないけど・・・)

焙煎屋にはこの直後に訪問する予定であったのだが、この店については訪問時に非常に良い印象が持てたので、そういう店を排出するロースターなら大いに期待ができると、そんな心持ちで次の焙煎屋を目指したのだった。



評価・・・☆☆☆★(3.5)


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◎cafe MARUGO


福岡県福岡市中央区薬院2-10-23
092-713-6554
10:00~21:00
不定休
http://cafemarugo.web.fc2.com/

babi-yarの珈琲三昧


福岡市内中心部に3店舗を構える珈琲店。喫茶も豆売りもしていない焙煎所(オオカミコーヒー)を含めれば4箇所か。
その中で私が訪問したのは春吉店で、ハーフっぽいイケメンのバリスタが珈琲を提供している。


珈琲はエスプレッソやアレンジ珈琲が多く、ホットはプレス抽出が基本。
ただしサイフォンを使って抽出するものもあり、それは珈琲の味だけでなく、フラスコからロートにお湯が上がって珈琲ができる・・・という過程も楽しんで欲しいということらしい。


珈琲の銘柄は、ブレンド(オオカミブレンド)以外は随時メニューが変わるようで、今回はニカラグア・ブエノスアイレス農園、ケニア・カンゴチョ農協を置いている。
それに今だけスペシャルということでグァテマラ・エルインヘルト農園・パカマラを提供していた。


ただしグァテマラ・エルインヘルトはデフォルトがサイフォン抽出で、レギュラーメニューであるプレスの物は400円、グァテマラ・エルインヘルトは500円という価格であった。
サイフォンよりはプレスの方が「豆の個性が強く出る」という点で面白いと思い、そこでケニア・カンゴチョ農協を注文してみる。


5分ほど経って出てきた珈琲、プレス抽出なので提供温度は相当に熱いわけだが、それを更に温めたカップに入れて出すのは良くない。
鼻で嗅ぐと紅玉やアプリコットを思わせる果実性の甘酸味。香りの線が太く、明瞭なキャラクターが出ているところは良い。


口に含むと最初は熱くてあまり味がわからないのだが、甘酸味が軽く、仄かに含まれる渋みが舌に粉のように付く。
そのためどこか飲み口に粉っぽさを感じるのが良くない。
(微粉が含まれるために粉っぽいと感じるのではなく、渋みの展開が粉っぽさを感じさせる。)


ただ冷めてくると渋みが抜けてフルーツジュースのような飲み口。
繊細な甘味だが華なりとした品の良さがあり、メニューの中でケニア・カンゴチョの味を紹介するところに「ブルーベリーのような味わい」とあったのは、実に味わいを上手く表現していると思ったものであった。


珈琲を飲んでいる間、そのイケメンのバリスタが「珈琲業界の方ですか?」とか、「味はどうですか?」と聞いてくる。
(香りを嗅ぎこんだり、水を浸した紙ナプキンでカップを拭って温度を下げたりしているところを見て、同業者が視察に来たと思ったのかな?)

さらにグァテマラ・エルインヘルトをプレス抽出したものを出してきて、試飲用に振舞ってくれる。


そのグァテマラ・エルインヘルト、口に含むとアーモンドのような香りが口内に広がり、チェリーのような軽やかな甘味と相まって、(固形分はないが)チェリータルトのような味わい、という印象。
先のケニア・カンゴチョに比べて、熱いときの味わいはこちらのエルインヘルトの方が格段に良い。


ただ冷めてくると、カンゴチョが冷めるごとにクリアな飲み口になっていったのとは対照的に、少し渋みが硬口蓋に引っかかるようになる。
従って冷めた時にはカンゴチョの方が良いなと、そういう印象であった。


豆は100gから販売しており、オオカミブレンドとニカラグアが600円、カンゴチョが900円、エルインヘルトが1200円という価格。
決して安くはないが、カップクォリティーを考えれば十分にペイする金額だろう。

もっとも今回の福岡遠征では既に1kg近く豆を買い込んでおり、この後の旅程でもさらに1kgほど買い込む予定であったため、今回の訪問では豆の購入は見送ったのだが・・・。


エルインヘルトの試飲サービスは度外視するにしても、焙煎技術や客への目配りなど、総合的になかなか良い店だと感じた。
今回は豆を買う余裕がなかったので、テースティングは次回のお楽しみに取っておくことにしよう。



評価・・・☆☆☆★(3.5)


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◎Manu Coffee(春吉店)


福岡県福岡市中央区渡辺通3-11-2
ボーダータワービル1F
092-736-6011
10:00~27:00
不定休

http://www.manucoffee.com/

福岡遠征記の途中ですが、コメント書くために調べ物をしていて驚いた(呆れた)ことがあったので、脱線した記事を一つ書いておきます。

2008年のコロンビアCOE11位の農園名を調べるために、カップ・オブ・エクセレンスのサイトを見てみたのですが・・・


http://www.cupofexcellence.org/CountryPrograms/Colombia/2008Program/AuctionResults/tabid/592/Default.aspx


落札先を上から追っていくと、


1位:Kyokuto Fadie Corporation (極東ファディ)
2位:Maruyama Coffee for Mikatajuku group (丸山珈琲)
3位:Marubeni Corporation (丸紅)
4位:UCC Ueshima Coffee Co., Ltd. (UCC)
5位:Saza Coffee Co. Ltd. (サザ)
6位:Times Club for C-COOP (C-COOP)
7位:Wataru for Ogawa Coffee (ワタル)
(一つ飛ばして)
9位:Nippon Coffee Trading Co.,Ltd for Doi Coffee (土居珈琲)


他にも、TOA coffee(東亜珈琲)、Carandai Co., Ltd.(キャランダイ珈琲)など、大半を日本の商社やグループが占めているという事実。

他の国や年度を見ても、やはり日本の輸入商社やロースターグループが落札するケースが大半を占めているようです。


これを単純に「世界トップクラスの豆が日本に数多く入ってきている」と捉えて良いものでしょうか。

各国のカッピングジャッジ(審査員)には、国内のロースター(それもCOEの豆を数多く扱う、味方塾やC-COOPの加盟店)が多く参加していると聞きます。


何となくですが、ほとんどが日本向けに生産された豆だけを対象に、現地でコンテストを開催して「COE●位」という箔をつけ、ブランドに弱い日本の消費者を釣ろうとしているのではなかろうかと。

国際的なコンテストと謳っていながら、その実はほとんどが日本国内だけのドメスティックなコンテストなのではないのかと。


実際のところはどうなのか、あるいはこの結果をどのように見るかは各人にお任せしますが、私はこの結果を見て、そういう胡散臭さを感じずにはいられません。


話の脱線はここまでにして、次回からは福岡遠征の続きを書いていくことにしますが、私のCOEに対する見解については、各方面からのご意見をお待ちしております。

babi-yarの珈琲三昧


<ネル抽出時>


▼鼻で嗅ぐと・・・


トップノートはサクランボのよう。

それもアメリカンチェリーのように濃厚な香り方をするのではなく、サトウニシキのように繊細な甘味を仄かに漂わせている。


それが鼻先を液面に近付けて嗅ぎ込むと、硬質な酸味が主張してアセロラのような香りに感じられる。

まさしく「ケニアだな・・・」と感じさせてくれる、芳醇な果実性の香りである。


▼口に含むと・・・


透明感のある良質な甘酸味が口内一杯に広がる。

特に舌先に広がる甘みはどこかミルキーなニュアンスを感じさせるので、果実性の酸味と相俟ってフルーツケーキのような飲み口を感じる。


ただしその甘酸味が消えるのが早く、そのため後味に物寂しさを感じるのが玉に瑕。


それでも先に飲んだホンジュラス・ラス・マノスのように渋味が残るということもなく、味としてのクリアさ、クリアで良質な甘酸味を楽しむことができる。


▼60℃くらいに冷めてくると・・・


酸味がボリューム感を増して、酸味が主張した後に柔らかな甘味が広がるような飲み口になっていく。

味わい全体に占める甘味の比率は熱いときの方が強いが、冷めることで後味が長く嫋々と伸びるようになるので、トータルで見れば少し冷めてからの方が飲み頃ではないかと思う。


▼人肌くらいに冷めてくると・・・


酸味がさらにボリューム感を増して、口に含むときから舌に強く主張するような飲み口になる。

味わいの展開として、少しベッタリと潰れたような感じになってしまうところは否めないのだが、口内で感じられる香りに最も「ケニアらしさ」を感じるのが、この人肌くらいに冷めてからの温度帯である。


従ってこの珈琲は熱いうちに飲み切ってしまわず、冷めるまでの味わい・香りの変容を辿りながら飲み進めるのが良いだろう。


▼啜って飲むと・・・


温度によらず、啜って飲むと味わいや余韻が強まるが、少し品の無い甘酸味になってしまう傾向にある。

従って熱いときに啜って飲むと、甘酸味が少々安っぽくなってしまうものの、飲み口の軽さや余韻の短さを解消することができる。


ただし60℃くらいに冷めて、口内に流し込むように飲んでも余韻の短さを感じずに済む温度帯になってからは、逆に啜って飲むと味としての安っぽさばかりが出てしまうので、啜らず口内に流し込むように飲み進めた方が良い。


▼後味は・・・


珈琲を飲み進めているときにはあまり気にならないのだが、珈琲を飲み終わって2~3分ほど経つと、口内に大豆の茹で汁を思わせる青臭さが仄かに残るのが残念。



ネル抽出での評価・・・☆☆☆☆(4)


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<金属フィルター抽出時>


▼鼻で嗅ぐと・・・

遠めに嗅いでも、鼻先を液面に近付けて嗅ぎ込んでも、硬質な酸味が強く出ている。

ネル抽出よりも香りの主張は強く、またケニアらしさを強く感じさせるのだが、香りの品の良さ・上質さはネル抽出した珈琲の方が格段に上という印象である。


▼口に含むと・・・


濃厚な酸味の中に、渋いようなしょっぱいような、舌の味蕾を収斂させる重い飲み口に、思わず口がすぼまってしまう。

それが鼻腔に抜ける硬質な酸味の香りと相俟って、どこか鉄臭いような金属質の味わいに感じる。


ネル抽出で感じたような余韻の短さはないが、一つ一つの味わいの構成要素の質が格段に異なり、その結果出来上がる珈琲の味わいとしても格段の落差を感じる。


▼60℃くらいに冷めてくると・・・


一口目で感じられたような渋しょっぱさが和らいで、飲みやすさが増してくる。

ネル抽出時よりも味の主張が露骨なまでに強く、アセロラの果汁そのもののような酸味が立ち、それが和らいで甘味が感じられるような飲み口である。


熱いときの飲みにくさを考えると相当に持ち直す印象で、むしろ熱いときには一切手を付けずに香りを嗅ぐだけにとどめ、ある程度冷めてから飲み始めるくらいの方が良いのだろう。

それでも珈琲液を飲み込んだ後に、タンポポの汁を舐めたような渋味が後味に残るのが良くない。


▼人肌くらいに冷めてくると・・・


熱いときのように渋味やしょっぱさが先行するということはないが、重い酸味が立って再び飲みにくい味になってくる。

60℃くらいの味わいは悪くなかったのだが、その飲み頃を外した温度帯になると飲みにくさばかりが先行した味わいになってしまい、スイートスポットの狭さを感じる。


従ってこの珈琲は60℃くらいの温度帯で一気に飲みきり、それ以外の温度帯では一切手を付けないくらいの方が良いだろう。


▼啜って飲むと・・・


温度によらず、啜って飲むと入りの酸味が軽くなり、甘味が感じられるようになる。

従ってこの珈琲はどちらかというと、下品なくらいに啜って飲むことで酸味を軽くして飲むのが良いのではなかろうか。



金属フィルター抽出での評価・・・☆☆★(2.5)


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▼オススメの抽出方法・・・


金属フィルター抽出をした場合に、60℃くらいの温度帯でネル抽出の珈琲の味わいに近付くが、甘酸味の品のよさは最後まで及ばず、何より後味に渋味が残る。

それ以外の温度帯では味としての完成度がまるで異なり、どの温度帯を見ても金属フィルターの方がネル抽出よりも良い要素が見当たらない。


ともあれ、この珈琲はネルで抽出するのが良いだろう。



総合・・・☆☆☆★(3.5)


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