社長の元同僚で元請け会社の部長から、現場監督が出来る若い人材を求めている話がある事を聞いた朋也。祐介ではなく自分を推薦されると言われ、愛着のある光坂電気を離れなければならなくなり悩み始めた。話が終わり現場に向かう途中、祐介は大切な人の存在が苦労を乗り越えていける糧となると踏まえた上で、自らの過去を客観的に話し始めた。



 高校を卒業するまで自由気ままに歌を歌っていた祐介。たった1人認めてくれたのは教師の伊吹公子だった。プロを目指し夢を実現出来たら付き合って欲しいと告白して、上京して行った。直ぐに認められデビューして、ガムシャラに歌を歌い続けるとファンも増えていった。しかし慰問した

施設の男性が犯罪を犯したニュースを知った時から、順調だった歌手人生の歯車が狂い始めた。満足できる歌が作れなくなり、徐々に悩み苦しみ始めた。そして最終的に選んでしまったのが、逃げ道である覚せい剤。ついに逮捕されてしまい、地位も名誉も失い傷心のまま故郷に戻って来た。バスを降り最初に祐介が見たのは、憧れの公子の姿だった。感情を爆発させ涙を流し

公子の為に生きようと決意した。大切な事を見失い、過ちを犯した過去を話す事で、朋也に対して過去の自分のようになるなと言いたかったのだ。



 先輩や同僚に恵まれ新たなチャレンジの機会を与えられた朋也。渚の後押しもあり、元請け外車に転職する事を受け入れた。その矢先突然父直幸が逮捕された事が、元同僚木下から伝えられた。犯罪者の息子というレッテルが貼られ、転職の話がなくなってしまった。更に直幸に面会に行った時、謝罪の言葉1つなく黙っている様子に怒りを爆発させ、絶縁を宣言した朋也。怒りを

壁にぶつけ拳の怪我を気にせず自暴自棄になり殴りつけた。その時冷静さを失った朋也を必死に止めたのは渚だった。自分を気遣う姿を見てプロポーズをすると、それを渚は受け入れた。新たな人生のスタートを結婚という形で、迎えようとした朋也。改めて今までの経緯と結婚の意志を

伝えるべく古河家を訪れた。



 「ごめんなさい、秋生さんちょっと目を放した隙に遊びに行ってしまって。お父さんの事は、大変でしたね。誰も気にしませんよ、渚も私も秋生さんも。」秋生がいなくなった事を謝罪した早苗。直幸の事でチャンスを失いレッテルを貼られた朋也を優しく出迎えた。それは、渚も秋生も同じく向き合う事。渚は朋也を信じ付いて行こうと思っている事も。「てめえ何しに来やがった?一々大げさなんだよ。」朋也は真剣に話をしようとするが、現れた秋生はいつも通り。早苗もまた自分のパンをけなされたと思い、古河家を飛び出して行った。「おっさん大事な話がある。聞いてくれ、真面目な話だ。」いつもなら追いかける秋生と止めて、話を切り出した朋也。「だったら真剣勝負だ!」バットを向けて勝負を挑む秋生。その勝負は勿論野球対決。秋生がピッチャーで、バッターの朋也が、ヒット性の当たりを打てば勝ちというルールだ。(早苗さんは優しいな。それは朋也を認めている証拠ですね。パンは相変わらずですけど、定価といわれて泣くのはけなされ続けているから慣れっこになっている証拠でしょうか?しかし秋生さんが朋也に勝負を挑んだのは、話の内容に気付いていたからじゃないかなって思ったのですが、考えすぎでしょうか?)



 「俺は肩を傷めている事知っているだろ。」構える朋也は納得いかない。「てめえはいつかの試合で、勝負を決めただろ。俺の170kmのストレートを打ってみろ。てめえが勝ったら話を聞いてやる。」肩の怪我で勝負をやめようとせず、全力投球を宣告した秋生。もしヒットを打たれたらちゃんと話を聞くと約束した。「聞くだけじゃない、俺の言う事を無条件で了承しろ。」いつも以上に真剣な眼差しで言い返すと、追いかけた早苗と一緒に公園に来た渚は、声を掛けようとした。しかし早苗に首を横に振られて黙るよう命じられた。「いいだろうお前が勝ったら何でも言う事を聞いてやる。但し俺が勝ったら聞く耳持たねえ。」朋也の条件を飲んだ秋生のストレートが投げ込まれた。ボールが向かい思いっきりバットを振ったが、かすりもせず空振り1ストライク。それでも何としても認めさせる気構えは持ち続け、朋也の目は秋生をにらめつけた。(男と男の真剣勝負!

秋生はやっぱり朋也の言いたい事に気付いているのでは?だから得意の野球で自分を超えたら認めさせると難題を持ちかけた。あの親バカが簡単に認めるわけ無いですから。)



 2球目・3球目もストレートを打ち返せず、あえなく3球三振という結果で膝から崩れ落ちた朋也。「またやりたくなったら言って来い。アハハハハハ!」意気揚々と高笑いをしながら立ち去った秋生とは対照的な姿だった。「努力をすれば届くかもしれませんよ。渚の為に頑張ったらどうでしょう?」渚に謝罪した朋也を励まし、努力すべきだとアドバイスした早苗。差し伸べた手は優しかったが、認められるには努力も必要だと教えていた。「人生を掛けた勝負なんです。」仕事中

奇異な目で見つめる祐介に対し、人生を掛けた野球対決に向けた素振りをする朋也。「お前も

懲りねえなあ!」呆れ顔の秋生は仕方なく勝負を受けた。その結果は再び三振に終わり、またも

願いを成就出来なかった。次の対決は雨の日に行われた。「真剣勝負に天気は関係ない!」借り出されいらつく秋生に対し、どうしても結婚を切り出したく本気の朋也。2人の身体を心配して風呂を沸かしていると伝えた早苗と渚が見守る中、秋生が最後だと宣言した3度目の勝負が始まった。(面白いですね。台詞の使い方とか、秋生と朋也の心構えの差とかが。雨の日まで勝負を挑む朋也は、本当に渚と結婚したいんだなってちょっと心動かされますそれを見守る渚と早苗の姿もまた良いなあと思いました。)



 結果は頑張りも報われずまたも三振。呆然と三振という結果にショックを受けた朋也。「打てねえよ絶対に。それぐらい力の差があるんだ。てめえと俺様ではな。」力の差が大きいから絶対に打てないと告げ立ち去った秋生。「ってるんじゃないかなあの人?何か今言われた気がしたんです。お前はまだ子供だ。誰かを守るなんて、おこがましい話だって。俺は残ります!力に差があるなら、後は熱意しかない。練習していきます!」力の差があっても熱意を持って練習し続け

認められるように決めた朋也。それは子供の自分が、大人の秋生に認められたいという思いが

あったからだ。「今回は止めません。とても大事な事ですからね!渚男の人が戦う時に、邪魔をしてはいけませんよ。」朋也の強い思いを感じた早苗。決して止めようとせず、渚に躊躇させるような事をしないよう告げた。それでも雨の中バットを振り続ける大切な人の姿を渚は、ずっと見続けていた。(秋生から見たら自分は子供。気付いていようがいまいが、親父の方法で認めさせる事で、相応しい人間になった事を証明したいんですね。早苗さんもそれが分かっているから、止めようとしなかった。祐介が呆れる中、雨カッパを来て練習する姿は朋也の熱意が伝わる言い光景だと思いました。こういう手法が、CLANNADの良い所です。)



 ついに迎えた最後の勝負。1球勝負で決着がつけられる事になり、いつも通り全力でストレート投げ込んだ秋生。向かってくるボールに対し全力でバットを振った朋也。勝負は、朋也の努力と

執念がホームランという形で実を結んだ。「渚を俺に下さい!」ボールを見上げた後、全速力で

秋生に近づき土下座して結婚したい事を伝えた朋也。「こいつは似てるぜ俺によ!大人になりたくて、気がはやっていたんだ。顔上げろよ、渚がつらい思いをしたら、直ぐに連れて帰るぞ。」自分に似ている姿を見て気持ちを理解していた秋生はついに結婚を許した。「朋也さん、渚は私達の夢です。そして今日からは、朋也さんも私達の夢です。だから幸せになって下さいね。」自分達の夢の結晶である渚が、幸せになろうとしている。そして今度は朋也も自分達の夢を一翼を担う事になる。早苗は幸せを祈り若い2人にエールを送った。(秋生はやっぱり気付いていたと思います。朋也の事を簡単に許す事は、そっくりな自分の過去と同じだと思えるから、あえて簡単に認めようとしなかったのでは?こういう2人だから早苗も優しく送り出したと感じました。)



 季節は過ぎクリスマス、友人達と過ごした1年前とは異なり、今年は渚と2人っきりで過ごした朋也。二十歳の誕生日を迎え、ついにお酒が飲めるようになると秋生が待ち望んでいた、娘と

杯を交わすお正月がやって来た。「お父さんの為に飲みます。いきます!」日本酒の匂いに慣れないながらも、秋生の為に杯を飲み干した。「おい大丈夫か?」ふらつく渚を見て急に不安になり始めた朋也。案の定渚の表情と口調が変わり、完全に酔っ払ってしまった。「朋也君、そんなにお母さんが気になりますか?」普段言わない事を突っ込まれ、困惑する朋也。更には早苗まで

その気になって自分をどう思っているか問い詰めた。「おいおいこりゃ修羅場だぞ。」第三者の秋生は面白半分に茶化した。どちらかを否定すると、どちらかが悲しむ。男にはつらい状況で困惑しながら、今度は秋生が真面目に早苗にそっぽを向かれると思い慌てる姿があった。結局酔いつぶれて眠ってしまった渚。「渚は幸せそうですね。朋也さんはどうですか?」娘の幸せそうな寝顔を見て、今の心境を尋ねた早苗。「それは勿論!ずっと一緒に居られたら俺それだけで良いです。」朋也にとって渚といられる事だけで、幸せを感じるほど大切な存在になっていた。



 こうして楽しい正月が終わり、3学期になると、再び渚が体調を崩し寝込んでしまった。付き添いながら出席日数が気になり、卒業出来ないと危惧した朋也。「大丈夫です。出席日数は足りてますし。全部休んでも大丈夫です。」療養しても卒業は可能だと教えた朋也を安心させた。しかし智代・有紀寧・りえ達合唱部員達も卒業を迎えた。渚は卒業式に出席出来ず光坂高校を窓の外からずっと眺めたままだった。そこで5年間通った渚の為に、たった1人の卒業式を行おうと計画した朋也。早速仲間達に連絡を取り始めた。陽平の実家に電話を掛けると、代わりに出た芽衣から陽平の勤める会社の寮の電話番号を聞いた。「えっ岡崎?マジかよ。元気だけどさ、個の会社理不尽な事が多くて。」久し振りの親友からの電話に驚く陽平。しかし企業という組織に入り

奇麗事では通用しない理不尽さも感じていた。「まあ俺の話を聞けよ。日時はそっちの都合に合わせるよ。」渚の卒業式に参加して欲しいと旨を伝えた朋也。しかし研修期間中で簡単に抜けられず、勝手な事をしたらクビになる事を陽平は恐れていた。それでもたった1日だけ融通を利かせる事を朋也約束した。「だからお前に電話してるんだよ。」親友の彼女の為に、無理を聞き入れた陽平を認めて、朋也も参加を喜んだ。(陽平は成長したと思いました。今までは自分勝手で

バカな事ばっかりしていたけど、自分の状況を理解して話をしています。ちゃんと周りの状況を把握して話をしている所が、企業に勤める社会人だと思いました。)



 既に桜が満開になった頃、2年前一緒に学校に通っていた2人を思い出す渚。学校に近づいていくと、光坂高校の制服に着替えた杏・椋・ことみ・黒く染めた陽平と妹の芽衣・智代・有紀寧

合唱部の3人・祐介・美佐枝・公子・幸村の姿が待ち構えていた。実は幸村が最後の教え子の為に、学校と交渉して特別に場所を開放してもらったたった1人の卒業式。しかし仲間達に囲まれた子供から大人への入学式が始まった。卒業証書が幸村から渡され、拍手を送る仲間達や

恩師向けて感謝した渚。身体が弱く留年した2度目の高校3年生を迎えた時、たった1人で孤立していた。自分だけが時計の針が進んでいない状況を理解して、ただ坂の下でたたずむだけだった時背中を押してくれたのが朋也。夢だった演劇部設立に奮闘して、仲間達とも出会い充実した1年間を送り卒業するはずだった。しかし再び体調を崩してからは、登校出来なくなり2度目の

留年してしまった。



 智代達と離れ離れになりまた孤立した学園生活を送る事になったが、今度は自分が強くなりたい一心から立ち向かおうと決意した。その勇気を与えてくれたのは、渚を支えてくれた仲間達。5年掛かった高校生活だが、渚にとっては充実したかけがえの無い時間だった。「大好きな学校です。頑張れた私が過ごした場所だからです。どうもありがとうございました。」大好きな学校に感謝して卒業の思いを告白した。こうして渚の長い長い高校生活は幕を閉じた。卒業後すっかり養子が大人らしくなり、拘置所にいる直幸に結婚報告を行った2人。「渚さんと言ったか?朋也君を

よろしくお幸せに。」何も言わなかった時とは違い、ちゃんと結婚の祝福をした直幸。それは朋也の親として今出来る精一杯の事だった。そして婚姻届を出し、正式に夫婦になった2人。渚は

「岡崎渚」となり、新たな2人の物語の時計が動き始めた。(中原麻衣ちゃんの長台詞とても印象に残る素晴らしい台詞でした。渚の気持ちが凝縮していると実感しました。また私は泣いてしまった。本当にどこまで涙を誘うのでしょうか?しかし人生だなっと思わせる、様々なシーンがありやっぱり沢山の人に観て欲しい、素晴らしい作品です。)