東京大学にやってきました。農学部

 

入ってすぐ右にある弥生講堂です

 

入ってすぐのシンボルツリーは何の木でしょう

 

3/30 東京大学弥生講堂にて、
農学会シンポジウム~変わりゆく海の環境と海の恵みがあるのだ
 
(公財)農学会・日本農学アカデミー 共同主催公開シンポジウム 
後援:東京大学大学院農学生命科学研究科、ワールドウォッチジャパン 
変わりゆく 海の環境と海の恵み
 
5人の専門家の発表のあとの総合討論、ディスカッションの司会進行で参加させて頂きました。
海の環境は水産がテーマのシンポジウムになぜベジアナが・・・

 

「変わりゆく海の環境と海の恵み」
総合司会: 古谷研先生

 

 

丹下健会長が開会のご挨拶です
 
気候変動下における海の環境と生物生産 水産研究・教育機構 水産資源研究所 
小埜恒夫さんの報告
 

【話の中で1つわたしがわかったこと】
南でとれていた魚が、今は同じ場所でとれなくなった。
前は地元でとれていた魚が今とれなくなったという話は全国で聞きます。
単に温暖化のために北上するというだけではなく、
海水温というのは、お風呂のお湯と同じで、上は温かく下は冷たいそうです。太陽光が差し込む深さはある一定までなので、(深海は暗闇)そう簡単に混ざらないのだそうです。

「成層構造」といって、上層と下層にわかれるのだけど、その差、境目が強くなってきている。
いま温暖化で起きているのは、
表層部が異常に高温になることで→塩をたくさん含むことになる→やがて重さで塩は深海に沈む→よって、表層の塩分濃度は薄くなり、深海の塩分濃度は濃すぎるようになる。
つまりプランクトンも同じように上層では不足状態になり、
下層では過剰になる。というようなことらしいです。
わたし達の食べる、認識できる魚は、その生態系の頂点に近いところにいるので、
結果、エサを求めて北上したり、いなくなったりするわけですが、
海の環境は地形によって違うので、単純に北へ生息域が平行移動するわけではなく、その地域ごとに見ていかないといけない。
 

(おいしい魚は脂が乗って、太って、身がしまって、子持ち、子持ちの前とか、いろいろ条件がそろうから成立するわけですが、それには地理、気候、採る時期、いろんなタイミングがパーフェクトに合致してこその旬のおいしさだったのだーー)
まだまだ解明しないといけない。
というような話を初めて聞いて、なるほどーーー。
科学ってそういうことなのかと思いました。
解明も大事、そして今できる改善策や行動変容も大事。
でも言えることは、このままの生活行動やエネルギー消費を続けていては、海の資源の貧困化は加速するばかり。という事実でした。深刻なのです。

 

地球温暖化で魚の大きさは変わるの? 日本周辺の魚に注目して 東京大学大気海洋研究所
伊藤進一さんの報告

 

わが国のサケに及ぼす地球温暖化の影響
北海道大学北極域研究センター 帰山 雅秀さんの報告

 

「温暖化がおこした藻場の変化」
長崎大学海洋未来イノベーション機構 グレゴリー 西原さん
西原先生は、「藻場」から見えてくる変化について
藻場は海の生態系の基盤となる種なので、この変化がほかの生き物の変化の始まり。
温暖化になる、と時々いう人がいますが、そうじゃありません、
温暖化の真っ只中なのですよ。と話されたのが印象に残った。

あと、へーーっと思ったのは、
先生は沖縄出身ですが「子どもの頃、沖縄でもずくなんて食べたことなかった!」という衝撃の発言!!
えええーーー@@ 沖縄と言えば居酒屋の付き出しでもまずはもずくでしょー、と思うのはわたし達、沖縄居酒屋で沖縄料理を覚えた世代の考え。
グレゴリー先生いわく、「もずくが採れた海岸ももちろんあっただろうが沖縄=もずく、というほどメジャーには出回っていなかった。沖縄もずくは「養殖産業」が始まってから、スーパーにも並ぶようになった。つまり、産業ベースに乗ったから今ほどメジャーになったここ30~40年の”特産”ということでした。

先生のフィールドである五島列島の島民は、昔は200種類の海藻を食べる習慣があったけれど、今は100種類ぐらいに減っている。その辺の岩場にあるのを「採取して食べる習慣・文化が廃れたから」ということを意味しているのでした。
(これは能登や佐渡の世界農業遺産の漁民の話でも聞いたことがある。また主要な穀物の種類が激減し、ほぼ地球はトウモロコシに駆逐された~という話とも同様の、食文化のモノカルチャー化、とみてよさそう)
温暖化とは直接的な関係はないかもしれませんが、「里海」的な、海と人とのつながりが遠ざかった事例として印象に残った~

 

水産物生産流通販売における新課題:ネイチャーポジティブとカーボンニュートラルにどう取組めばよいのか
 東京大学大学院農学生命科学研究科八木 信行先生の報告
八木先生は

実は世界農業遺産でお世話になっています。

FAOの科学アドバイザリーグループの委員でもあります。

 

北海道でブリがとれてもあまり喜べない!?

そこに食文化(食習慣)がないことには資源は「恵み」とならないということだ。

また、コンスタントに荷がさばけない、産業ベースに乗らないと、

とれても意味がない?価値がない?と、解釈できます。

 

海洋環境の変化が今回のテーマだが、それ以前に日本の一次産業は
課題を抱えている。
 

4つ目に注目。「4定条件」

いつも日時、いつもの見た目、いつもの味や品質で、いつもの値段で、

提供することが条件となってしまっている。

工業製品ではないのだから、食べ物(生き物)には動き(旬)があることが

追いやられている。

そして小売価格のところ。

生産者の手取りが少ないことも問題で、

漁業では、25~35%。

農業は45%だそう。

(しかし小売価格とは店頭価格のことだろうか?

例えば198円のハクサイの農家の手取りが90円あるとは思えない気がしたけれど・・・)また今度聞いてみます。

 

いま国でも自然共生サイトを作成し、
温暖化に対して、消費者の行動をどう変えていくよう促すか、
考えている。
 

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総合討論のあとは、

日本農学アカデミー副会長 大杉立さんによる閉会の挨拶 でしめくくられました。

 

みなさんのお話から感じたのは、

海の中で何が起きているか、

海水温、それによる魚の大きさの変化、藻場の変化、またその影響を受けて、

流通や食生活はどうなっていくのか

それぞれ専門に分かれて研究する科学者たちは、

IPCC政府間パネルという国際的な科学者のグループの報告で、

温暖化により、海の環境や水産物の変化は深刻な危機であるのに、

一般市民にはまったく伝わっていないことへのギャップでした。

 

ある先生は、最近あった高校の同窓会で環境危機の話をしたら、

「知らなかった、もっと早く言ってよ」という反応だったそうだ。

研究者の先生の高校の同級生だから、きっと進学校のエリートで一般市民よりは知識人だろうに、

それでもそういう意識、見解だと言うのが、現実だということを今さら知った。

「こんなにも科学者の言葉は世間には伝わっていないのか、と感じた」と語っておられた。

 

かくいう私も、環境問題について、

気候変動という言葉は、変動なんて生易しいものではなく、もはや

気候危機なのだ。

地球温暖化どころか、地球沸騰なのだ、という表現をニュースで聞きかじっているぐらいで

生活をどれぐらい変えていかないといけないのか、具体的にはわかっていない。

 

IPCCの第6次の報告が発表されたときは一般のニュースにもなったけれど、

その後、日本の社会、市民生活はどれぐらい気候危機への対策として、

暮らし方の見直しが行われただろうか。

 

確かにプラスチックを使わないことが多少増えた。

ストローはなくなった。

レジ袋をはじめ、過剰包装もなくなった。

今度の、パリでの五輪会場ではペットボトルの持ち込みは禁止なのだそうだ。

 

あと、さんまがとれなくなったのは、わたしたち生活者でもよく感じている。

ここ数年を振り返ると、あらためて日本という国、日本人は、

秋にさんまを食べることはなくなったということか。

 

昔は食べたのにね、懐かしいー、で済む話ではないだろう。

1つの魚の文化が廃れるということは、その1つの魚種の問題だけでは済まされない。

事件は、同時多発で起きているんだ。

気付かないだけで・・・。

 

あと、サンマ漁に関して、アジアの隣国が海域を犯して獲るようになったから、

やせ細ったさんましか日本近海では見かけなくなったというような、話が聞かれるが、

昨日のお話では、他国による競争というような獲り方のインパクトはむしろ小さくて、

海水温の上昇を含む温暖化が原因としては大きいと言うことでした。

(これも、間違ったうわさが1人歩きしていると改めて知りました)

週刊誌的なメディアは、隣国が悪い、あの国が侵入してきたと、

敵を作って誰かのせいにするのが好きらしい。

 

そんなことにだまされない正確な情報を、真実をこの目で、この手でつかみたいものだ。

 

という意味において今回のシンポジウムはわたしがいちばん勉強になりました。

 

IPCCの報告は、文科省や気象庁など政府のHPで公開されています。

参考までにーー。

 

 

 

農×ジャーナリスト

ベジアナあゆみ