恋しき人~天門の先~第三十三話 | シンイ~信義に夢中

シンイ~信義に夢中

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先生? 具合が悪いんじゃあ…
ウンスは顔を上げミノを見た

確かに昼間から顔色が悪かったわね
手術中も集中していなかったし…ウンスはミノの腕を掴んだ

な…な何です
慌てて、引っ込めようとした手をウンスは、じっと見つめた

震えてる
先生、確か今日初めて人を殺めたって言ってたわね

はい 医者として人の命を奪う事は…
ミノは伏し目がちに答える

ごめんなさい
先生だけなら逃げられたのに、私達を助けに来てくれたから
ウンスはミノの震える手を握り締めると何度も何度も謝った

やめて下さい
ウンス殿の所為ではありません
村が襲われ何人もの罪もない人々の命が奪われました
某の命も危うかったのです
正当防衛だと…

えっ?
ウンスは聞いたことのある言葉に反応した

和尚に言われたのです
己の命を守る為の行い故に正当な防衛だと

あ あ~ そういう事
昔からある言葉なんだとウンスは妙に納得する

でも先生は傷ついてる

えっ?
ミノは驚いてウンスを見た

ある人がね
初めて人を斬ったとき、夏なのに寒くて震えて眠れなかったんだって
優しい人なの
でも武士をしているから、国を守る為に人を殺めなくてはいけなくて
命の重さに悩んで悩んで…そしたら、手が震えるようになって……
だから先生もきっと傷ついてると思って
ウンスの話を聞いて父の事だと直ぐに分かった

それで、その方の悩みは解決したのですか?
若い頃の父の話に興味があった

それがね… 分からないの
ウンスは俯いたまま答える

分からない? 何故ですか?

私がその後、直ぐに拐われたから
凄い話でしょ? 平気で人を拐ってしまうんだから
ウンスが苦笑いを浮かべながら話すがミノは笑えなかった

あの父が…高麗の鬼神と呼ばれ恐れられている父が、まだ婚姻もしておらぬこの方に弱味を見せておられたのか
父は大丈夫だと直ぐに会えるとこの方に教えたい…だが、今は言えぬ
寂しそうに微笑むウンスを見てミノは俯いた
黙りこんだミノを見てウンスは咳払いをする

でもね、その人が助けに来てくれたのよ
その時は剣を持っていたから大丈夫かなって
私と居たときは剣が重いって言ってたのに不思議でしょ?

ウンス殿を慕う気持ちが悩みよりも勝ったのでしょう
それほどウンス殿を恋慕っていたということですね

えっ? またまた~ 先生ったら、ロマンチストなんだから~
真っ赤になったウンスは、ばしばしとミノの背を叩いた

ろまんちすととは何です?

え~っと あのね ん~説明が難しいわ
でも、褒め言葉よ
ウンスが片目を瞑り微笑むとミノの心は温かくなり、震えていた手も落ち着いてきた


一方ウンスは、剣が重いと手を震わせていたヨンの事が気掛かりであった
助けに来てくれた時は、ちゃんと鬼剣を持っていたわ
だから、私が居なくても大丈夫よね
遠く離れたヨンが気掛かりで震えの止まったミノにヨンの姿を重ね祈るウンスであった





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