メッセチキレに完敗いたしました…orz

お返事が滞ってしまってすみません。

53回の時に54回の分の日記も書いていたので日記に時間を取られることはなかったのですが、内容物の都合でちょっと来週までバタバタしています。

スタリナさんを見てたらギャグマンガ日和のうさみちゃんを思い出したとか。
なんかいきなり無理難題をふっ掛けてきそうとか、通報しそうとか、雰囲気的に。

もうなんかパーティバイオレンスが止まる所を知らなくて嬉しさのあまり血の涙が出そうです。
\(^o^)/

唐突ですが、偽島PTが麻雀をやってみた的なノリで偽島PTメンバーが鬼畜TRPG「パラノイア」で遊んでみたとかパロをやったら面白そうなんてふと思いました。妄想で終わりそうですけど。
オース君とリマ君が腹の探り合いの攻防を繰り広げてそうな。
とりは墓穴掘って残機を無駄に減らしたりとか作戦を練っても読まれて逆にはめられるとか多分いつも通り。

以下、今回の日記です。
引っ込みナイフは13日目のパーティメッセでオース君がとりに投げてたものです。

グリザイユちゃんが出てたり、とりがスタリナさんの事を知らないのは51日目あたりの出来事として書いているためです。

51日目から続いてた話は今回で一区切りになります。
焦って一気に進めてしまった感じですががが。
次回からはまた通常通りに戻ります。

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「……お袋…なんで…」


何が起きたのか分からなくて混乱している俺を見て、お袋は肩をすくめた。


「……こんなんじゃ、私じゃなくたって死にゃあしないわよ。アンタ、私が呼びとめる前に走っていっちゃったんだもの。」


お袋は赤くなったナイフを右手に持ち、左手に押し当てた。刃は掌を貫通しない。左手をナイフから放すと柄から刃が出てきた。


「あ……。」


お袋は歩み寄ってきてナイフを手渡した。柄を開いてみると血糊の入ってた小袋が空洞に収まっていた。刃が引っ込むと中の血糊が破けるようにいじったもんだった。…俺が、遊びで。
俺がお袋に向けてたのは、兄ちゃんからもらったおもちゃの引っ込みナイフだった。
でも、これにそっくりな本物のナイフも持ってたはずだった。


「…これ?」


服のポケットを全部ひっくり返していると姉貴が自分の服のポケットから鞘に入ったナイフを取りだして見せた。

血糊の付いた自分の両手を見つめる。

俺は後戻りできない一線を越えずに済んだのか?

ナイフを下ろした時の感覚がまだ手に残っていた。
でも、ナイフを間違ってた方がどうやら本当らしいと受け入れられるようになると、体の力がどっと抜けた。


「男が成長するには母親を殺さなきゃいけない?冗談じゃない。それなりに大きくなったらもう余計な手出しはしないわよ。疲れるもの。子育てだけが私の人生じゃないし。
むやみな意味付けや説明なんか要らない。今ならあの蜘蛛男の言っていたこともなんとなく分かる気がするわ。」


お袋は姉御を小馬鹿にするように鼻で笑うと、俺の方に向き直って隣に座った。


「夕暮…辛い思いをさせてごめんなさい。」


目を伏せ、力の入らない俺の体を抱き寄せた。
お袋の左胸に恐る恐る耳と手を当ててみる。
温かい。


「私がこんな話をする資格はないのかもしれないけれども…生まれた意味や生きる理由が与えられて生まれてくる人なんて誰一人としていないの。親がどんな意図や想いで子どもを産んだとしても、それは親の都合や願望であって、その子の生まれた意味じゃないし、生きる理由でもない。皆、偶然の内に生まれてくるの。」

「…俺はたまたま生まれて生きてるだけって事?」


さっきみたいにどうしようもなく腹が立つことはなかった。ただ、自分が空っぽのような気がして少し悲しい気持ちがした。


「…あなただけじゃないわ。私もそう。
…拠り所がなくて、心細い気持ちがするかもしれないけれども、考えてみて。もし、そういうものがあらかじめ決まっているとしたら、私達はその他の生き方を選びとることは一切出来なくなる。
意味や理由があれば安定はするかもしれないけれども、可能性は死んでしまう。
意味がない、理由がないって私達が思うほど不幸なことなのかしら?」


目線を俺にまっすぐ合わせて問いかける。でも、自分の考えを俺に教え込もうとしたり、認めさせようとしているようではなかった。


「…でも、それでいいとは割り切れない。」

「そう。実際にはそう簡単に飲み込める話じゃない。私達は意味や理由がすぐに欲しくなってしまうから。…でもね、これだけははっきり言っておくけど、私はジャンと嫌々一緒に居るんじゃないの。あなたが生まれるずっと前から、私は彼を愛している。
けれども、あの写真に映っている女性と異世界の学園で出会って、指輪を交わして契りを結ぶほど彼女を愛して、強制的に元の世界に戻されて別れてしまった後も彼女を忘れられないでいるのも確か。どっちの気持ちも嘘じゃない。
ジャンは全てを知った上で、一緒に居てくれると言った。そして、あなたが生まれた。
…嬉しかった。お腹の中で大きくなっていくあなたと早く会いたいって。
その時も、今も、私は不幸だなんて思っていないし、後悔だってしていない。」


俺の知らない長い時間にあったことを思い出して懐かしむように、柔らかな眼差しを向けて語りかけた。


「…俺が勝手に悪い方に思い込みしてたっていうのは分かった。」

「…私にはどちらか一方を無かったことには出来ないだけ。…彼に対しても、彼女に対しても許されることではないでしょうけれど。」


そう言って微笑む。けれども、その穏やかな笑顔にはうっすらと憂いが滲んだように見えた。


「……なかなかすっきり行かないんだな。」


お袋は少し驚いたような顔をした。顔にしっかり出てるのに分かんねぇとでも思ったのか。


「…そうね。白黒はっきり分けられることの方が珍しいわ。……夕暮。あなたに色々教えないでいたのは騙そうとしたんじゃないの。知らせる必要がなかったから。あなたは確かに私とジャンの子だけれども、そんなことはあなたの生き方には関係ない。
私達だって自分が本当は何者なのか分からない。でも、体は獣人ではないかもしれないけれども、一緒に研究所を抜け出してジャンの故郷に戻って来てからは、普通の獣人と何ら変わりない生活を送ることが出来てる。グリーズだって、私は血の繋がりが無くたって大事な家族だと思ってるもの。あなたにとってもそうでしょう?
必要のない事実は時に選択肢を狭めてしまう。灰色の中で黒か白しか見えなくなってしまう。知らなくてもいい事実に縛られてほしくなかったの。」

「……でも、あんまりいっぱい選べたら一つ物を考えるのにもややこしくて難しそうだ。」


ぽろっと本音を漏らすと、白い手でそっと俺の頬を撫でた。


「…今言ったことに矛盾するようだけど、あなたの名前は意味なく適当に付けたんじゃないの。
夕暮時は昼と夜の間。光と闇が混ざり合っていて物がぼんやりとしか見えない時間。それは白と黒が混ざり合う灰色に似ている。
その中に留まろうとするのは簡単じゃない。
とても、とても難しい。
曖昧なものは人を不安にさせる。分からないと気が済まなくて決めつけたくなる。
けれども、私達は完全な光の側にも完全な闇の側にも居られない。白黒つけたつもりでも、やっぱり私達の立っている場所は灰色で、光と闇が混じり合う夕暮時なのよ。
でも、その混沌とした場所にこそ、白も黒も、光も闇もすくいとれるものがある。
…あなたと、グリーズにはそれを忘れずにいてほしい。」


お袋が後ろを振り返る。視線の先には姉貴が立っていた。
いつも通り、何も言わず、俺達をただじっと見つめていた。



『ふん、まさに文字通りの茶番劇じゃな。』


姉貴の側を通って姉御が歩み寄って来た。


「それは残念でしたね。私達は役者ではありませんから。で、まだ何か?」


笑顔で答えるお袋の目は笑ってない。
立ち上がって今にも飛びかかりそうだ。


「お袋、落ちつけよ!」

「この悪魔がちょっかいを出さなければこんな事にならなかったのよ…もう二度とふざけた悪戯が出来ないようにしないと…。」

「止めてくれ!もうあんなの見たくない!」


お袋は前に立ち塞がる俺の目を見つめると溜息をついて渋々身構えを解いた。姉御は俺が冷や冷やしてるのを知ってるのか知らないのか、薄っすらと挑発するような笑みを浮かべている。
このままお袋と姉御が一緒に居たらいつ喧嘩するか分からない。


「…お袋、俺、自分でもこの島の謎を突きとめてみたいんだ。過去を変えるって言ってる連中も気になるし。だから、もうちょっとだけここにいさせてくれよ。」


俺の言葉が意外だったのか、目をぱちくりさせた。


「……誰と行くの?一人じゃないでしょ?」

「ここに来て会った人間とダークエルフの兄ちゃんと、一緒にいる狼と、姉貴と………。」


ちらっと姉御の方を振り返るとお袋は眉を吊り上げた。


「なんで悪魔も一緒なの!私も行きます!」

「いや、その、お袋は遺跡の外で待っt」

「悪魔に子どもを預ける親が何処に居るんですか!!」


ぴしゃりと怒鳴られ声を遮られる。腕を組み、仁王立ちして俺を見下ろしてる。


「えと…精神…力?が鍛えられると思うんだ。悪魔と一緒に行動してても大丈夫なぐらい肝が据わってるって認めてくれたら俺の音楽修業旅行の件をちょっと考えてもらえないかn」

「はぁ!?アンタどさくさに紛れて何言ってんの!!」


上目遣いで恐る恐る話してみるとまた怒鳴り声が降ってきた。


「それだけじゃなくて!ほら、一緒にいたら頼っちゃって俺のためになんねーから!それに、なんつーの…やっぱ兄ちゃん達の前じゃ親と一緒って…その、恥ずかしいしさ…向こうも落ち着かないと思うし!今までも大丈夫だったからさ……な!」

「な!じゃないでしょ!」


お袋が拳を振りあげた。拳骨されると思って目をつぶった。


「…………ああ、もう。」


拳骨は降ってこなかった。目を開けるとお袋は額に手を当て溜息をついている。


「遺跡の外にはちょくちょく戻ってくるのね?」

「だ、大体4、5日おきには…食料とか補充しに。」

「そ。……じゃあ、私はここに居るから。戻ってきたらちゃんと報告しに来ること。必ず。
お友達にはくれぐれもよろしくね。ご迷惑をお掛けしないように。…気をつけていってらっしゃい。」


お袋はポケットからくしゃくしゃになった宿の名刺を取り出して俺に渡し、一瞬微笑むと背を向けた。


『分かたれた可能性の交差点はすぐ其処に。』


無言で横を通っていくお袋に姉御が呟くように言った。
何を言いたいのか分からなくて俺が首を傾げると姉御はただ口元にうっすらと笑顔を浮かべるだけだ。
お袋は少しの間、探るように睨みつけていたけれども、問いただすことはしなかった。視線を外し、前に向き直って朝霧の中を歩いて行った。


『…これで良いのかえ、小僧?』


お袋の背を見送ってると姉御が肩に手を置いた。


「………分かんねぇ。でも…とりあえず、今はもういい。」


凛とした冷たい空気の中を蒼い蝶が弧を描いて飛んでいる。


『然らば見届けよう。
愛憎も、苦痛すらも貪って、どこまでも肥え太るがいい。異形の子、人の子よ。』

ふ、と息を洩らして姉御が笑う。

「……早く兄ちゃん達のとこ戻んねぇと。置いてかれちまう。」


肩に置かれた手を振りほどき、明け方の空、蝶の後をついてまた歩き始めた。


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