■書評■ ハカる考動学 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ ハカる考動学


自分はどうだろう?: 皆が当たり前のことをやれなくなってきている。自分で考え、既存の情報をハカり直し、そこから新しい意味を見い出すことが出来なくなってきている。(p.3)

よく言われることではあるけれど、例えばマスメディアによって大量に流される情報の洪水の中で、情報に対して受け身になってしまい、自分が必要とする情報を必要な形に加工することを忘れてしまい、流れてくる情報だけを受け取って、それを前提として物事を考えてしまうケースが多くなっている。

本書ではそうした事態を解消するために「ハカる」ことを推奨し、具体的な事例をふんだんに用いながら「ハカる」力を身につけるための解説を行なってくれている。
著者の三谷さんはこれを「考動学」と命名しているのだが、本書を読むとこの考え方は当たり前のようでありながら、実は自分では気づいていなかった点が非常に多いことに思い至らせてくれるだろう。

「考動学」発足!: 必要なのは、考え、動き、また考える姿勢と技だ。それを「考動学(こうどうがく)」と呼ぼう。まずは「ハカる」ことを中心とした考動学を、ご自身で身につけ、そして職場や家庭で活用いただきたい。(p.5)


ここで、三谷さんが推奨する「ハカる」力とは何なのかということを確認しておきたい。

「ハカる」力とは: これまでとは違ったものを対象に、これまでとは違った方法で、測定し組み合わせて、インサイトを絞り出すための力(p.23)

インサイトというのは「隠れた本質や意味合い」を意味する言葉であり、例えば自分の考えた企画がどこか面白くない…というときには、元もとのネタにインサイトがないことが多い。
いや、実は僕らはネタを見てもインサイトを絞りだせていない、という方が正解なのかもしれない。
特に、情報の洪水をうまく泳ぎ、自らコントロールできていると思っているとしても、それらの情報を「活用」できていたかどうかと言われれば、多少なりとも不安になるはず。

既存の一次情報を活用しよう!: ヒトは往々にしてテレビ、雑誌・本、インターネットなどの「既存の一般情報」をムダにしている。あのCIAですら情報の95%を一般情報から抽出しているというのに。
 発見のネタは驚くほど近くにある。あとはうまく「枠組み」を与えて、意味あることを引き出せるかどうかだけが問題だ。(p.51)

特に僕を含め、当ブログなどの書評ブログをお読みになられる方は少なからず読書をされる方が多いのではないだろうか。
本当は読書から自分に有益なネタを発見し、意味あることを引き出すことを目的にしているはずなんだけれど、こうして改めて問われると…(汗)
ちなみに、少なくとも僕が書評を書くときのスタンスとして「自分にとっては有益ではなかったかもしれないけれど、こういう人には有益なのではないか」という視点を入れて、その点で完全に自分の為に感想を書き残しているものとは言えないものに意識的にしようとしているので、あしからず。

ハカり方の詳細については是非本書に当たってもらいたいのだが、自分の意識を変革するというか、グサッと刺さった言葉、そして「ハカる」ということを意識しなければと思わされた言葉を並べておきたい。

価値ある「主張」をしなくては!: ある「主張」に価値があるとすれば、これまでの世の常識のどれかを覆しているはずだ。であれば、必ず――、
 1. 常識が否定されるための「事実」(一時情報)
 2. 「事実」から読み取れる「インサイト」
 3. その「インサイト」と「主張」との「つながり」
――の三つが必要になる。(p.118)

またまた登場した「インサイト」。
僕の主張に価値があるかは、この3つの要素で、これまでの世の常識のどれかを覆していないといけない。
とすると、価値ある「書評」を書くのは相当に難しいことが分かる。

本書もそうだが、僕が紹介する大抵の本は、既に僕よりも多くの人に影響を与えている書評ブロガーの方々が紹介されていることが多い。
※本書の場合は、有名書評家の土井英司さんが「最近読んでよかった本ベスト5」に挙げて紹介しているくらいだし。
だから、単に「良かったから是非読んで!」などという「主張」をしたところで何の価値もない。
書評もそういう点を意識すると、少し変わってくるかなと思ったり。

自らを厳しく律しよ!: ハカる姿勢とは、重要な事柄(ここでは売上増の分析)に当たって、曖昧な表現を許さず、重要な要因を選び出し、それらがちゃんと因果関係にあることを示すことだ。(p.186)

ついつい曖昧な表現で逃げてしまうことってあるよなあ…と(汗)
本書で挙げられているけれど、「売上が増えるためには景気の好転と人口がもっと増えることが大事だ」という主張は一見正しいし間違ってはいないけれど、何の意味も持っていない。
冷静に考えれば突っ込みどころが明確だけれど、自分が報告文書などを作る時についつい逃げこんでしまいがちな罠でもあったり。
こういう部分を日頃から自らを厳しく律していないと、「ハカる」ことで価値ある主張をしたり、新たな物事を創造したりすることなんてほど遠い。

ただ、この点さえ意識できれば、「ハカる」力を磨くための好例や材料は、身の回りにあきれるほど多く存在しているのだから、学びに事欠くことはない。
そして三谷さんが書かれているように、仕事だけではなく人生においても「ハカる」を応用していける場面はあきれるほど多く存在する。

そのための「考動学」の門は、自分の意識を変えるだけで入門が許される、幅広き門。
是非、本書を読んで「考動学」の道に入ってみよう!


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■ 第50回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー

本レビューは 本魂!(ホンダマ)が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガー独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。

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■ 基礎データ

著者: 三谷宏治
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010年4月
ページ数: 216頁
紹介文:
革新のためには、まずハカれ!
トップコンサルタントが教える、一次情報から本質を見抜く技術。BCG、アクセンチュアで磨いた実戦のワザ・公開!

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