■書評■ 学生のうちに知っておきたい会計 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ 学生のうちに知っておきたい会計

昨今の厳しい就職戦線において、大学生諸君は第一志望の企業からの内定を獲得しようと努力されていることと思うが、本書は、タイトルにも掲げられているように、そのような「就職活動を行なう大学生」をターゲットにした本である。

あ、ちょっと待った!
「じゃあ自分には関係ないや」と思ったビジネスパーソンの方でも、特に就職したばかりの20代前半の若手であれば十分に役立つというか、学生のうちに知っておきたい知識なのだから、当然迎える先輩としても知っておきたい。
特に第7章は「社会人に必要な3つの数字力」として、若手ビジネスパーソンの方がメインターゲットだろうと思われる内容になっているので、目を通しておきたいところだ。
※ 本文では「第8章」と書かれた誤植があるのだが、ということは、校正の段階で何か1章分を丸々削ったのかな…などと気になってしまった。

ちなみに、その3つとは以下のとおり。

社会人に必要な3つの数字力:1. ビジネス数字
2. 管理会計
3. 財務会計

個人的には管理会計が財務会計よりも先に言及されている点がミソかと。
世に溢れる「決算書の読み方」的な本は財務会計に分類されるもので、管理会計は理解されていないことが多いのだけれど、とても大切なことだ。

まあ、中堅どころにまでなってしまっている人には今更な内容も多いかもしれないけれど、個人的には「環境会計」など、ちょっと今更聞けない知識を補強できたりもしたので、決して素通りしていい本ではない。
著者の望月さんとお話しした時に盛り上がったのだけれど、CSRという視点を結構意識されておられたので、この点については(あまり多くのものを読んだわけではないけれど)類書に較べて力が入っていると思うし、現役ビジネスパーソンも学ぶべき点がある。


望月さんは前著の『「数字」は語る―3分で読み解く決算書入門―』でもそうだったけれど

情報化時代の価値: 情報化時代に価値があるのは、情報(知識)ではなく、手に入れた情報を使っていかに自分が直面している問題を解決するかという知的生産力です。(p.12)

という考えをベースにされて書かれているので、本書からはまさにそうした「知的生産力」をつけるための基礎が学べるようになっている。


一社会人の先輩として、一応上場会社などで採用活動に携わった経験がある者としても、大学生の方々に向けて思うことは、多少偉そうに聞こえるかもしれないが、単にブランドイメージだけで就職希望先を決めてしまうことのないように、本書をお読みいただき、きちんと情報を集めて咀嚼したうえで考えるようになってもらいたいということ。

本書をお読みいただければ分かるけれど、世の中に公開されている情報からだけでも、驚くほど多くのことを知ることができる。
しかし、それは皆同じ条件。
そこで周りと差をつけるために必要となるのが「知的生産力」なのだ。

この点は転職を視野に入れている若手ビジネスパーソンも同じ。
ビジネスの世界に生きていて同業への転職を考えているのであれば、公開情報だけではないものも手に入れられるかもしれないけれど、まずベースとなるのは公開情報を基にした自分なりの分析なのだから。

本書で紹介されている内容は、実はそれほど難しいことではないけれど、ちょっとだけ時間は必要だし、最初は大変かもしれない。
しかし、自己啓発書や「成功」について書かれた本を読んだことがある人なら知っている通り、その「めんどくさい」を乗り越えることができるかどうか、が大きな差を生むのだということを、最後に蛇足ながら付け加えておきたい。

ちょっと周りと差をつけて、頭一つ分抜きん出たいと思う大学生、若手ビジネスパーソンは是非手にとって読んでいただきたい。


※ 本書は著者の望月実様より献本いただいた。厚く御礼申し上げたい。

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■ 基礎データ

著者: 望月実、花房幸範
出版社: 阪急コミュニケーションズ 2010年4月
ページ数: 285頁
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