【書評】すごい本屋!
Amazonや楽天で本を買うことが当たり前のようになって随分と時間が経った。
オンライン書店の台頭によってリアル書店の経営が圧迫されるということも言われ、ブックオフなどの新古書店の登場も合わさって、町の零細書店は廃業に追い込まれたところも少なくないだろうし、現在まで頑張っているところも苦しい経営を強いられている書店が多いことが想像される。
しかし、本書の「イハラ・ハートショップ」のように、失礼ながら、とんでもない田舎にありながらも、地域に根ざして特色ある経営で元気な書店もあるのだ。
そもそも住人約100人ほどの村で書店経営が成り立つこと自体不思議ではある。
(注文販売形式であれば成り立つが、それは書店ではなく取次店であり、もちろんイハラ・ハートショップは紛れもない書店なのだ。)
こんな導入の仕方をしているけれど、別に、本書は書店経営の為の指南書ではない。
「支払いのことを思うと、三日、いえ一日で仕入れができない状態になるかもしれません。ですから、この場所に開店したときから、「新刊配本」を受けていません。(p.30)」と書かれているくらいだから、書店としては楽な状況ではないようだ。
しかし、イハラ・ハートショップには店長であり著者である井原さんの「想い」がある。
その他にも井原さんの想いは本書の至る所に散りばめられていて、痛いほどに読者に伝わってくる。
その中から僕に引っかかってくるのは、「子どもたちに対する可能性の提供」と「地域社会に対する優しさ」である。
その想いが原動力となって、住人約100人の村の書店単独で、絵本の原画展や、著者サイン会の開催の実現につながっている。
井原さんに対する惜しみない協力を出版社などの関係者がしたことには、商売上の打算を超えた部分が大きかったはずで、それも、この気高い想いに共感したからこそだ。
井原さんの例は、僕らが何かを成し遂げようと思ったときの心のお手本になると思う。
小さいということや、無名であるということなど、さまざまな制約要因があるけれど、どれもこれも言い訳に過ぎない。
「心にダム(想い)はあるのかい」と言ってもみたくなる。(古くて分からないか…!?)
僕らは「書店」にこだわるわけではないが、「書店」を他の要素に置き換えても成り立つ考え方である。
本魂!に参加しているのもそうなのだが、僕にとっては「本」と「コミュニティ」「つながり」というのがキーワード。
たとえば18世紀のロンドンでは、コーヒー・ハウスが、様々な意見の人たちが政治について論じ、権力を批判する場所として成り立っていたそうだ。(『コーヒー・ハウス―18世紀ロンドン、都市の生活史』)
現代のスターバックスやドトールコーヒーにその機能を望むことはできないし、僕は政治について論じたいわけでもないけれど、書物について論じ合えるような、そんなコミュニティが一つくらいあってもよくないか?と思っていたりする。
それは「読書会」などのような企画ではなく、ただ、そこに行けばいいというような場所が。
「想い」というキーワードに反応するアンテナをお持ちの人は、是非手にとっていただきたい一冊。
追伸:
【関連リンク】
イハラ・ハートショップ
【第二十七回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー】
本レビューは 本魂!(ホンダマ)が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガーの独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき、感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。
ビジネス書で「知」のトレーニングを! ~ 知磨き倶楽部
元気サラリーマンになるブログ!
わたしの本だな My Book Shlef.
【営業のコトバ屋】本の抜粋書評使えるコトバをあなたに!
僕の問題は誰かが解決している
人が好き!本が好き!運動が好き!
本魂!~1冊の本から始まる想いの連鎖~
【基礎データ】
著者: 井原万見子
出版社: 朝日新聞出版 2008年12月
ページ数: 220頁
紹介文:
「うちの村にも、本屋があったらええんやけど…」そんな村の人たちの声に応えてできた山奥の本屋さん。まわりにはほかにお店がないので、お味噌や洗剤も売っています。村の子どもたちに本の世界を知ってほしいと、今日も絵本をかついで読み聞かせに走り、楽しいイベントを企画します。
「かいけつゾロリ」の原ゆたかさんをイノシシと出迎え、昆虫少年と今森光彦さんをお宮の森で対面させる…。
子どもたちの目が輝きだしたら、大人も動き出す。本屋さんほど素敵な商売はない!!
オンライン書店の台頭によってリアル書店の経営が圧迫されるということも言われ、ブックオフなどの新古書店の登場も合わさって、町の零細書店は廃業に追い込まれたところも少なくないだろうし、現在まで頑張っているところも苦しい経営を強いられている書店が多いことが想像される。
しかし、本書の「イハラ・ハートショップ」のように、失礼ながら、とんでもない田舎にありながらも、地域に根ざして特色ある経営で元気な書店もあるのだ。
そもそも住人約100人ほどの村で書店経営が成り立つこと自体不思議ではある。
(注文販売形式であれば成り立つが、それは書店ではなく取次店であり、もちろんイハラ・ハートショップは紛れもない書店なのだ。)
こんな導入の仕方をしているけれど、別に、本書は書店経営の為の指南書ではない。
「支払いのことを思うと、三日、いえ一日で仕入れができない状態になるかもしれません。ですから、この場所に開店したときから、「新刊配本」を受けていません。(p.30)」と書かれているくらいだから、書店としては楽な状況ではないようだ。
しかし、イハラ・ハートショップには店長であり著者である井原さんの「想い」がある。
その他にも井原さんの想いは本書の至る所に散りばめられていて、痛いほどに読者に伝わってくる。
その中から僕に引っかかってくるのは、「子どもたちに対する可能性の提供」と「地域社会に対する優しさ」である。
その想いが原動力となって、住人約100人の村の書店単独で、絵本の原画展や、著者サイン会の開催の実現につながっている。
井原さんに対する惜しみない協力を出版社などの関係者がしたことには、商売上の打算を超えた部分が大きかったはずで、それも、この気高い想いに共感したからこそだ。
井原さんの例は、僕らが何かを成し遂げようと思ったときの心のお手本になると思う。
小さいということや、無名であるということなど、さまざまな制約要因があるけれど、どれもこれも言い訳に過ぎない。
「心にダム(想い)はあるのかい」と言ってもみたくなる。(古くて分からないか…!?)
僕らは「書店」にこだわるわけではないが、「書店」を他の要素に置き換えても成り立つ考え方である。
本魂!に参加しているのもそうなのだが、僕にとっては「本」と「コミュニティ」「つながり」というのがキーワード。
たとえば18世紀のロンドンでは、コーヒー・ハウスが、様々な意見の人たちが政治について論じ、権力を批判する場所として成り立っていたそうだ。(『コーヒー・ハウス―18世紀ロンドン、都市の生活史』)
現代のスターバックスやドトールコーヒーにその機能を望むことはできないし、僕は政治について論じたいわけでもないけれど、書物について論じ合えるような、そんなコミュニティが一つくらいあってもよくないか?と思っていたりする。
それは「読書会」などのような企画ではなく、ただ、そこに行けばいいというような場所が。
「想い」というキーワードに反応するアンテナをお持ちの人は、是非手にとっていただきたい一冊。
追伸:
【関連リンク】
イハラ・ハートショップ
【第二十七回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー】
本レビューは 本魂!(ホンダマ)が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガーの独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき、感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。
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本魂!~1冊の本から始まる想いの連鎖~
【基礎データ】
著者: 井原万見子
出版社: 朝日新聞出版 2008年12月
ページ数: 220頁
紹介文:
「うちの村にも、本屋があったらええんやけど…」そんな村の人たちの声に応えてできた山奥の本屋さん。まわりにはほかにお店がないので、お味噌や洗剤も売っています。村の子どもたちに本の世界を知ってほしいと、今日も絵本をかついで読み聞かせに走り、楽しいイベントを企画します。
「かいけつゾロリ」の原ゆたかさんをイノシシと出迎え、昆虫少年と今森光彦さんをお宮の森で対面させる…。
子どもたちの目が輝きだしたら、大人も動き出す。本屋さんほど素敵な商売はない!!