[雑誌] COURRiER Japon 2009年11月号 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

[雑誌] COURRiER Japon 2009年11月号

今月のクーリエ・ジャポンも世界中から選りすぐった記事で構成され、非常に読み応えのある内容になっている。

表紙に掲載されているメイン特集は3本。


坂本龍一責任編集「森と地球の未来 サステナブルな文明へ」

海外メディアの期待度「世界が採点する”HATOYAMA”」

世界最強の投資銀行「ゴールドマン・サックスの「闇」」



著名人による責任編集は僕の記憶にある限りでは、堀江さん、勝間さんに続いて3人目。

表紙デザインは坂本龍一さんが全面に押し出されていて、雰囲気は、エグゼクティブ向けファッション雑誌のような印象さえ受け、「こんな格好いい大人になりたいな」と思ってしまう。

格好はいいけれど、回を重ねるごとに訴求ポイントが内容とは違うところに目がいくようなものになってしまっているような・・・?


しかし、内容はどれもこれも興味深い話題であり、この3本の特集からだけでも、本誌の守備範囲の広さなど窺い知れるだろう。

普段の僕であれば、ここから何を取り上げて紹介しようか迷ってしまうところだが、今回は少し違う。


今号は、幸運にも編集長さんから直接全体概要をお話いただく機会を得たのだが、その時から僕の目が釘付けになってしまったページがある。

見開きで2ページ分(頁数で4ページ分?)のその記事に掲載された写真とタイトルが頭から離れない。



食用の密漁が後を絶たない・・・ゴリラを救う最後のチャンス


坂本龍一さんの責任編集企画の中の一記事。

ニュー・サイエンティスト という英国の科学雑誌からの採用だ。

(僕が目を奪われた写真はp.61に掲載されているものなので、是非お手にとって見ていただきたい。)

この記事も、COURRiER Japonがなければ、編集部の方々の感度が高くなければ眼にすることができなかったのかと思うと、つくづくありがたい。


さて、記事中にもあるけれど、今年は国際的にYear of the GOLLIRA とされていることをご存知だろうか。

国連が今年をこの「国際ゴリラ年」とした背景には、商業的な思惑も見え隠れするので賛否両論あるだろうけれど(専門家は志には賛同しているものの、やり方には反対している、というか効果がないとしている)、世の中の人に広く知られるという意味での効果は少なくとも果たしている。

※僕は子どもを連れて行った上野動物園で、その存在を知ったが。

もちろん、世界中には他にも絶滅が危惧されている種族がたくさんあり、それら全てを採り上げられないという問題もあるのだが・・・。



ゴリラの危機は、もちろん人類が招いている。

ヒガシローランドゴリラは、生息域が属する国の戦乱が原因で、保護区などが無法地帯となって食料確保の為に殺害されている。

ニシローランドゴリラも、同じように商業狩猟(それも犯罪カルテルによるもの!)が一つの原因となっている。


人類は他の種も食用に狩猟しているし、他の種だってそれぞれが狩などして食料を確保している。

霊長類だからというだけの理由でゴリラ狩猟に反対するのは感傷的に過ぎると言われてしまうかもしれない。

残念ながら僕にはそれに対して真っ向意見を唱えるだけの論拠を持ち合わせていないが、ただ、僕らの種の生存に関係のない商業狩猟で他の種を滅ぼすことには、直感的に反対なのだ。



ゴリラ繁殖の第一人者であるピーター・ウオルシュ氏によれば、ゴリラ保護の為には地域社会に根ざした保護プログラムが必要で、それは決して開発プログラムやツーリズムなどではないという。

そして、地域社会に根ざしたプログラムに必要な資金は、公園30箇所×27億円/公園=810億円だそうだ。

この金額を大きいと捉えるか小さいと捉えるか・・・。

尺度として頭に入れておきたい数字の一つだ。



責任編集を行った坂本龍一さんが記事に付されたコメントをそのまま引用して結びたい。

聞いた話だが、数十年間ゴリラを研究した学者が、「こんな美しい生物が人類の祖先であるはずはない」と、研究をやめてしまったというのだ。美しくも悲しい話。確かに人類の貪欲さ、強欲さはゴリラから受け継いだものでないことは、確かなように思える。人類はゴリラを救えるほどに倫理的に進化できるのか、あるいは我々のいとこばかりか自分たちの首をもしめることになってしまうのか。(p.58)



こんなに考えさせられる様々なジャンルの記事が満載で、普段の自分にはない情報源からもたらされる雑誌。

自分自身の品性、知性をワンランクもツーランクも上げてくれるような雑誌とは、ずっと付き合っていきたいと思うし、是非多くの人に付き合ってもらいたいと思う。



【関連リンク】

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追伸:

本誌は R+(レビュープラス) 様よりレビュアーとして献本いただいたものであるが(いつも選んでいただきありがとうございます!)、前月号のレビューに関する書評記事コンテストで、当雑誌の編集部様を訪問させていただいた際、恐れ多くも編集長さんより直接いただいたので、もしかすると編集部より献本!?といつも以上に姿勢を正して読んだかも・・・!?


【基礎データ】

雑誌名: COURRiER Japon

発行元: 講談社

種別: 月刊誌(毎月10日発売)