[記事] 単なる美談ではなかった「派遣千人の正社員化」
「理念」の大切さ、「理念」に基づく経営や行動とはこういうことなんだ、ということがよく表れている記事を紹介したい。
記事にて取り上げられているのは、段ボール製造最大手のレンゴー株式会社。
東証一部に上場し、直近決算期の連結売上高は4,466億円、連結経常利益は130億円、従業員数も9,000名を超える大きな会社だ。
同社は、今年の1月、まさに「年越し派遣村」などが話題となり、トヨタやキャノンといった有名企業でも「派遣切り」に踏み切っていた時期に、「派遣社員千人を今年の4月から正社員として採用する」ことを発表したという。
この判断自体が経営上正しいか否かそういったことではなく、この判断が経営者の「理念」に基づいて行われたという点が素晴らしいと思う。
(ちなみに、同じように従業員の雇用を重視する理念を持って経営に当たられている方に渡邉美樹氏が挙げられる。こちらの書評 で紹介した書籍でも、その旨はっきりと公言されている。)
社長の大坪氏は、「従業員の格差解消」をご自身の「理念」とされている。
会社自身の経営理念をウェブサイトで確認すると、
一、活力あるビジネスを通して、繁栄と夢を実現すること
一、誠実公正な姿勢で、個人を尊重し大事にする経営を行うこと
一、常に活気あふれ、革新を生み出す企業風土を醸成すること
一、広く分かりやすい情報公開を通じて企業価値を高めること
一、地球環境の保護を重視すること
一、良き企業市民として社会に貢献すること
とある。
このうち、2番目の理念が大坪氏個人の「理念」と整合的であると思われ、会社としても「理念」に則った取り組みを行ったのであろう。
「理念」を重視するというのは、こうした一つ一つの判断/行為の積み重ねなのである。
同社の掲げる「理念」は、失礼を承知で申し上げれば、それほど特徴的なものであるとは思えない。
むしろ、全てを含んでいるかどうかは別として、個々の内容は、様々な会社の経営理念にも見受けられるような考え方ではないだろうか。
しかし、これをきちんと実践しているかどうか。
企業が永きにわたって成長し、繁栄するために大切なことだと思う。
【関連リンク】
【掲載雑誌】
Foresight 2009年8月号 P.38-P.39
記者: 杜耕次
サマリー:
景気が冷え込む中、「派遣社員千人を正社員化」した段ボール最大手のレンゴー。
一見「世間の逆を行く」美談に思えるがそうではない。「従業員の格差解消」を理念とする、経営者の合理的な戦略なのだ。